「あれ、もうやるコトなくない?」
発売から数週間。SNSやディスコードで、そんな呟きを何度目にしたことでしょうか。 正直に言えば、私自身もコントローラーを置く手が少し重くなっていました。『モンスターハンターワイルズ』。初月1000万本という信じられないロケットスタートを切った裏で、実は多くのベテランハンターたちが「静かなる引退」をしていた事実をご存知でしょうか?
「ヌルゲー化」なんて言葉が界隈で飛び交っていましたが、どうやらその声は開発陣にも痛いほど届いていたようです。
PlayStation Partner Awards 2025の檀上で、徳田ディレクターが語ったのは、成功の自慢話ではなく、まさかの「懺悔」と、離れていった私たちへの「復帰要請」でした。
今回は、なぜワイルドはあんなにも「親切」すぎたのか、そしてこれから始まる「死にゲー」への回帰について、一人のハンターとして、そして書き手として深掘りしていきます。
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なぜモンスターハンターワイルズは「簡単」になってしまったのか
まず、数字の話を少しだけさせてください。 10月末時点で1070万本。これ、とんでもない数字です。 しかし、前作『ワールド』が約2900万本、『ライズ』が1700万本売れていることを考えると、実は「伸び悩み」が見え隠れしています。
徳田Dが語った内容は、私たち古参ファンにとっては「やっぱりそうだったのか」という答え合わせのようなものでした。
開発チームは、徹底的に「初心者がどこで挫折するか」を分析したそうです。 モンスターに近づけない、装備が作れない、操作が難しい…。それら全ての「ストレス」を、「フォーカスモード」などの新機能で極限まで取り除きました。
その結果どうなったか? 新規プレイヤーにとっては「最高のデビュー作」になりました。 しかし、私たちのような、理不尽な動きをするモンスターに泥まみれにされながら、3オチギリギリで討伐することに快感を覚える「戦闘狂」にとっては、「手応えのない接待プレイ」に感じられてしまったのです。

「親切」がアダとなった皮肉な現実
人間というのは勝手な生き物です。 「快適にしてくれ」と願いながら、いざ全てが快適になると「張り合いがない」と文句を言う。
徳田氏の言葉で印象的だったのは、この「難易度カーブの物足りなさ」を明確に認めた点です。 1000万本売れたということは、それだけ多くの人が手に取ったということ。しかし、ベテラン勢にとっては、基本コンテンツがあまりにもスムーズに消化できすぎてしまい、噛みごたえのある「ガム」の味がすぐになくなってしまった。
結果、発売直後の熱狂が嘘のように、急速な「早期離脱」を招いてしまったのです。 売上の鈍化は、単なる数字の問題ではなく、コミュニティの熱量が冷めてしまったことの証明でもありました。
徳田Dの「お願い」と今後の展開
「もう一度、プレイしていただければ幸いです」
あの大企業のディレクターが、公の場でここまで素直に「戻ってきてほしい」と懇願するのは、かなり異例のことです。 プライドを捨ててでも、プレイヤーを取り戻したいという執念すら感じます。
では、具体的にどうするのか? 答えはシンプル。「高難易度エンドコンテンツ」へのシフトです。
カプコンは、2026年までサポートを継続すると明言しました。 これは単にイベントクエストを配信するというレベルの話ではないでしょう。辻本プロデューサーも「アップデートを止めない」と断言しています。
つまり、これまで「接待」されていた私たちが、これからは「絶望」させられる番が回ってきたということです。 開発チームは今、離れていったベテランたちを満足させるための、骨太な、あるいは理不尽とも言える難易度の調整に全力を注いでいるはずです。

2026年まで続く「狩り」の再開
もしあなたが、「モンハンワイルズは簡単すぎてつまらない」と思ってソフトを棚にしまってしまったのなら、今はまだ「待ち」の時期かもしれません。 ですが、そう遠くない未来、SNSが阿鼻叫喚の地獄絵図になる日が来るでしょう。
「こんなの勝てるわけがない」
「開発は頭がおかしい(褒め言葉)」
そんな悲鳴が上がり始めた時こそ、私たちの出番です。 一度は離れてしまったけれど、開発トップがここまで頭を下げて「挑戦状」を叩きつけてきたのです。受けて立たない手はありませんよね?でも、まぁ…時すでに遅し、、ですかね。

