夜深くにゲームに没頭しているとき、ふと静寂を破る「ブォーッ」という音に現実に引き戻された経験はないでしょうか。 高画質なゲームを楽しむ代償として、私たちはこれまでゲーム機の排熱ファンの音を「仕方がないもの」として受け入れてきました。特にPS5のようなハイパワーマシンにおいて、熱処理と静音性の両立は永遠の課題とも言えます。
しかし、欧州で密かに流通し始めた新型PS5 Slim(モデル番号:CFI-2116)が、その常識を覆そうとしています。「小型化=熱がこもってうるさくなる」という私たちの直感的な予測を裏切り、どうやらこの新型は「驚くほど静か」らしいのです。
今回は、海外のハードウェア改造者によって明らかになった騒音テストの結果をもとに、サイレント修正が施された新型PS5 Slimの実力と、なぜ静音化に成功したのか、そのメカニズムについて深掘りしていきます。

38デシベルの衝撃:数値が証明する静けさ
「静かになった」と言葉で言うのは簡単ですが、具体的にどれくらい変わったのか。ポーランドのハードウェアモッダーであるmodyfikator89氏が行った検証データが、非常に興味深い事実を物語っています。
彼が欧州版の新型PS5 Slim(CFI-2116)を5時間にわたり稼働させ、本体からわずか30cmという至近距離で騒音を測定したところ、以下のような結果が出ました。
- 最低騒音レベル:34.7dB
- 最大負荷時:38.2dB
日常生活において、40dBは「図書館の静けさ」や「静かな住宅地の昼」に例えられます。最大負荷をかけてもその基準を下回るということは、ゲームのBGMや効果音が流れている状態では、ファンの回転音を耳で捉えることすら難しいレベルと言えるでしょう。
特に注目すべきは、これが「防音室」でのテスト結果ではなく、実環境に近い形で行われたテストである点です。1メートルも離れれば、ファンの音はほぼ無音に近い状態になるという報告は、没入感を何よりも大切にするゲーマーにとって朗報です。
SONY DID IT: The PS5 Slim (CFI-2116) is a SILENT MACHINE. 🤯
— modyfikatorcasper (@Modyfikator89) December 3, 2025
I tested the noise level in a sound-isolated service room for 5 hours straight (Vertical & Horizontal).
The Key Data (30cm):
📉 QUIETEST State: 34.7dB
📈 MAX Noise Under Load: 38.2 dB
This sustained performance after 5… pic.twitter.com/pEVl23FaOa
なぜ静かになったのか?PS5 Proから継承された技術
通常、筐体が小さくなればなるほどエアフロー(空気の通り道)は制限され、冷却ファンを高速で回す必要が出てくるため、騒音は増す傾向にあります。では、なぜ新型Slimは逆の結果を出せたのでしょうか。
その秘密は、内部構造の目に見えない「変化」にあります。 分解調査によると、新型モデルにはPS5 Proの開発で培われたノウハウが投入されているようです。
- ファンの形状変更 採用されているファン自体が変更され、より少ない回転数で効率的に風を送れるようになっています。
- ヒートシンクと冷却構成の刷新 熱を逃がすための金属パーツ(ヒートシンク)の形状が見直され、放熱効率が向上しています。これにより、ファンが必死になって回る頻度が減りました。
- 液体金属のリスク低減 冷却効率の向上は、PS5シリーズで懸念されていた液体金属の漏れリスクを減らす副次的な効果も期待されています。
「Pro」という上位機種を作る過程で得た技術を、普及機である「Slim」に惜しみなくフィードバックする。このメーカーの戦略が、静音化という形で結実しているのです。

縦置き派に朗報?設置方法と「コイル鳴き」の謎
今回の検証で個人的に最も面白いと感じたのは、「本体を縦置きにすると、騒音レベルがさらに低くなる」という発見です。 一般的に回転体を持つ機器は、横置きの方が安定して静かになることが多いのですが、新型Slimに関してはエアフローの設計上、縦置きの方が効率よく熱を逃がせるのかもしれません。これは設置スペースに悩む日本の住宅事情には嬉しい誤算です。
一方で、懸念点も残ります。いわゆる「コイル鳴き(高周波ノイズ)」についてです。 ファンが静かになると、今度は逆に電子部品が発する「キーン」という微細な音が気になり始めることがあります。
今回のテストではそこまでの詳細な検証はされていませんが、電源ユニット周りの振動周波数は人によって聞こえ方が異なるため、ここは実機で確認するしかない「未知の領域」として残されています。
また、この欧州モデルはストレージ容量が若干縮小されているという情報もあり、静音性とのトレードオフが発生している可能性も頭に入れておく必要があります。

