ソニーのフルサイズミラーレスカメラ、α7シリーズは、常に「真のオールラウンダー」として市場を牽引してきました。前モデルのα7 IVが多方面で評価されたことは記憶に新しいですが、その後継機となるα7 Vが正式発表され、そのスペックが公開された今、私たちは再び驚きに包まれています。
正直なところ、外観がほとんど変わっていないことから、「マイナーチェンジか?」と予測した人もいるかもしれません。
しかし、その中身は完全に別物。まるで、見た目は普通のセダンなのに、エンジンはF1級に載せ替えられたかのような、予測を裏切る性能向上を遂げています。特に注目すべきは、AI統合型プロセッサーによる劇的なバッテリー効率とAF進化です。
今回は、市場推定価格約42万円というα7 Vが、単なる買い替え需要を超えて、写真・動画クリエイターのワークフローをどう変えるのか、その進化のポイントと、α7 IVとの明確な違いを深掘りしていきます。
Source:ソニー公式
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外観の「キープコンセプト」に隠された中身の「大改革」
α7 Vは、α7 IVとほとんど変わらないデザインを踏襲しています。それは、ソニーがこれまでのボディデザインを既に「完成形」と見なしていることの表れかもしれません。しかし、その内部構造は別次元です。


1. AIと新センサーが実現した驚異のスタミナ
ボディは同じ「お馴染みの」NP-FZ100バッテリーを搭載していますが、撮影可能枚数は前モデルの520枚から630枚へと大幅に向上しています。これは、Bionz XR 2プロセッサーに統合されたAI処理によるところが大きいと言われています。
電力効率が向上しただけでなく、このAIプロセッサーと新たに搭載された33MPフルサイズセンサー(部分的に積層)の組み合わせが、カメラのレスポンス全体を引き上げています。
2. 進化したファインダー体験と電子シャッターの進化
電子ビューファインダー(EVF)のドット数(368万ドット)は同じですが、リフレッシュレートは120Hzに向上しました。高速連写時や動きの速い被写体を追う際、より残像感の少ない滑らかな視界が得られるようになります。
さらに、電子シャッターの読み出し速度が4.5倍に高速化したことで、電子シャッターがより実用的になりました。これは、ローリングシャッター現象(動く被写体が歪む現象)が大幅に軽減されることを意味し、メカシャッターに頼らなくても高速な動体を歪みなく捉えられるようになります。

決定的な差を生む「AF性能」と「瞬間捕捉能力」
α7 Vが真のオールラウンダーたる所以は、その捕捉能力にあります。
1. AI搭載による超高精度AFと高速連写
オートフォーカストラッキングが有効な状態で、14ビットRAWで最大30枚/秒という驚異的な連写速度を実現しています。これは、一瞬を逃さないスポーツ撮影や野鳥撮影において、大きな武器になります。
そして、シャッターチャンスのわずか1秒前から記録を開始するプリキャプチャー機能が搭載されました。この機能は、これまで連写に不慣れだったユーザーや、予測不可能な被写体を追うクリエイターにとって、劇的な「失敗の解決策」をもたらします。
2. センサーと手ブレ補正の相乗効果
公式仕様によれば、ダイナミックレンジは16ストップ。これは、極端な明暗差があるシーンでも、白飛びや黒つぶれを抑えた表現力豊かな写真が撮れることを意味します。
また、改良された手ブレ補正機能は、単体で7.5段分もの補正効果を発揮します。三脚なしで低速シャッターを切れる時間が大幅に伸びたため、暗い場所でのスナップ撮影や、三脚を持ち運べない環境での動画撮影の自由度が格段に上がります。

4K/120fpsの対応と「接続性の改善」
動画機能と接続性にも、ワークフローを劇的に改善する進化が見られます。
α7 Vは、フルサイズセンサーの全幅を使用した場合、4K/60fpsでの動画撮影が可能です。さらに、APS-Cサイズにセンサーをクロップすることで、4K/120fpsという超スローモーション撮影にも対応しました。これは、シネマティックな映像表現の可能性を大きく広げます。
また、前モデルから接続性が大幅に向上しており、USB-Cポートを2つ搭載。これにより、充電しながらデータの高速転送を行うなど、プロの現場での取り回しが格段に良くなります。加えて、Wi-Fi 6Eのサポートにより、テザー撮影やデータのワイヤレス転送速度も向上しています。

