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日本のゲーマーにとって、悪夢のような事態が現実となった。ASUSの高性能ハンドヘルド機「ROG Xbox Ally X」が、突如として3万円もの値上げを断行。発売当初の139,800円から169,800円へ、一気に20%以上も価格が跳ね上がったのだ。
これは単なる為替の影響や局所的な需給バランスの崩れではない。AIデータセンターの爆発的な拡大が、個人のゲーミング環境を侵食し始めた決定的なシグナルである。(Amazonでは少し価格が下がって、161,288円へと少し落ち着いてます。
今回の価格高騰、主犯は明白だ。24GBのLPDDR5Xメモリと1TBのNVMe SSDという、このマシンの魅力を支える豪華な足回りが、皮肉にもコスト増大の直撃を受けた。1月にASUS台湾から流出した社内メモには、DRAMとNANDフラッシュの逼迫による「戦略的な価格調整」が示唆されていたが、それが最悪の形で表面化した格好だ。
AIサーバーが必要とする膨大なメモリ需要に対し、サプライチェーンは完全にキャパシティオーバーを起こしている。
興味深いのは、この現象が「ROG Xbox Ally X」という特定のモデルで顕在化した点にある。Microsoftとの提携によるこのモデルは、通常のROG Allyシリーズとは異なる流通経路や部品調達契約があるのかもしれないが、ソースによれば通常のROG Ally Xや無印モデルへの波及は「今のところ」見られないという。しかし、これを対岸の火事と笑っていられる状況ではない。

市場を見渡せば、AMD Ryzen Z2 Extremeを搭載したLenovoの「Legion Go 2」も英国でサイレント値上げが行われ、ValveのSteam Deckですら供給網の混乱により一部モデルが販売終了に追い込まれている。高性能なモバイルPCを作るために不可欠な高密度メモリチップは、今やゴールドラッシュのつるはしのようなもの。サーバー市場との奪い合いになれば、コンシューマー向け製品が買い負けるのは自明の理だ。
米国Best Buyでは辛うじて999ドルの価格を維持しているが、日本市場での動きを見る限り、この防波堤が決壊するのも時間の問題だろう。GPUがマイニング需要で枯渇したあの冬の時代を思い出してほしい。欲しい時に買える、適正価格で手に入るという常識は、もはや過去のものとなりつつある。
これからモバイルゲーミングPCへの参入や買い替えを検討しているなら、選択肢は極めてシンプルだ。市場在庫が旧価格で残っているうちに確保するか、さらなる高騰を指をくわえて眺めるか。決断の遅れが致命傷になるフェーズに、我々は既に足を踏み入れている。

