昨日まで見ていたノートパソコンが、今日見たら数万円も値上がりしている。そんな「嘘でしょ?」と言いたくなるような悪夢が、いま現実のものになろうとしています。
修理のしやすさや環境への配慮で、ギーク層から熱狂的な支持を受けるPCメーカー「Framework(フレームワーク)」が放った衝撃の発表。
それは、度重なる値上げへの謝罪と、メーカーとしてはあるまじき「うちからメモリを買わないでほしい」という悲痛な叫びでした。いま、PC業界の裏側で一体何が起きているのでしょうか。
Source:Framework Blog
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わずか2週間で3度の値上げ。ノートPCが「時価」になる異常事態
正直に言いましょう。今のPC市場は、もはや私たちが知っている「家電」の相場ではありません。まるで高級寿司屋の「時価」のような、恐ろしいスピードで価格が変動しています。
Framework社は先日、DDR5メモリの急騰を受け、製品価格の「調整」を発表しました。驚くべきは、その頻度です。わずか2週間のうちに3回。前回の値上げから、たった1週間しか経っていないのです。
同社は「利益を乗せているわけではない。サプライヤーからの仕入れ値が上がった分を、そのまま転嫁せざるを得ない」と説明しています。メーカーがここまで赤裸々に「苦しい台所事情」を明かすのは、極めて異例のこと。
それほどまでに、DDR5メモリの供給網はズタズタになっているのです。
「他所で買ってください」という、メーカーの良心と狂気
今回のニュースで最も「予測を裏切られた」と感じたのは、Framework社が顧客に放ったアドバイスです。
普通、メーカーなら自社の純正オプションを売りたいはず。しかし、彼らはこう言いました。 「うちのサイトでメモリをセットで買うのは高い。Amazonや価格比較サイトで安いメモリを探して、自分で取り付けたほうがいい」
メーカーが自ら「うちのオプションは高いから他所で買え」と勧める。これは商売としては「狂気」に近いものがありますが、同時にユーザーに対する究極の「誠実さ」でもあります。
彼らはオンラインコンフィギュレーターを刷新し、自作PCユーザー御用達の「PCPartPicker」へのリンクを直接貼る計画まで立てています。さらに、相性問題を避けるための「動作確認済みリスト」まで公開。
ここまで徹底してユーザーの財布を守ろうとする姿勢に、私は深い感銘を覚えずにはいられませんでした。
なぜメモリは消えたのか? 2028年まで続く「絶望のシナリオ」
では、なぜこれほどまでにメモリ価格は暴騰しているのでしょうか。その犯人は、私たちが日々恩恵を受けている「AI(人工知能)」です。
SamsungやSK Hynixといった巨大メモリメーカーは、いまや一般向けのDRAMではなく、AIデータセンターで使われる超高収益なメモリの生産に全力を注いでいます。その煽りを受けて、私たちが使うノートPC用のメモリは完全に後回し。
技術コメンテーターのBullsLab Jay氏が共有したSK Hynixの内部資料によれば、この不足状態は「少なくとも2028年まで続く」と予測されています。つまり、来年になれば安くなる、という淡い期待は捨てなければならないかもしれません。
さらに恐ろしいことに、Frameworkは「1月にはさらなる値上げの可能性がある」と警告しています。そして、この魔の手はメモリだけでなく、SSD(ストレージ)にまで及ぼうとしています。

私たちはどうやって「不安」を解消すべきか
「今買わないと、もっと高くなるの?」
「でも、今買うのも損な気がする……」
そんな不安を抱えるあなたへの、ニッチで具体的な答えを提示します。
まず、もしあなたが新しいPCを検討しているなら、「メモリやストレージを後から自分で増設できるモデル」を最優先で選んでください。Frameworkが提案するように、本体だけを最小構成で購入し、メモリはセール時期に別ルートで調達する。これが、2028年まで続く「高騰時代」を生き抜くための唯一の正解です。
また、一部の古い在庫を抱えている小売店や、型落ちのDDR4モデルを狙うのも一つの手です。最新のDDR5にこだわらなければ、まだ「適正価格」で手に入るチャンスは残されています。

