スマートフォンの進化とは、常に「バランス」が求められるものだ。高性能なCPU、美しいカメラ、大容量バッテリー、そして高速な通信規格。そのすべてを高い次元でまとめ上げたものが「良いスマホ」だ……我々は、いつからそんな“優等生”ばかりを求めるようになってしまったのだろうか。
2025年の今、そんな凝り固まった常識に対し、Realmeが実に痛快な「解答」を叩きつけてきた。「Realme C85 Pro」の公式発表だ。
スペックシートを眺めると、誰もが二度見するはずだ。7,000mAhという超弩級のバッテリー。そして、水深0.5メートルに60日間沈めても耐えるという、もはや常軌を逸したIP69防水性能。
「ついに理想のアウトドアスマホが出た!」と誰もが色めき立つ。しかし、次の瞬間、我々は戸惑うことになる。その心臓部(SoC)は、5Gに非対応の「Qualcomm Snapdragon 685」…え、この時代に!?
この記事は、この一見アンバランスなマシンが、実は現代の多くの人々が求めていた「最適解」の一つではないか、という視点で、その真価を深く掘り下げるものである。
Source:Realme
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異次元の領域へ:「7,000mAh」と「IP69」という絶対的安心感

まず、このスマートフォンの最大の存在意義から触れなければならない。それは「充電」と「水没」という、スマートフォンが抱える二大恐怖からの完全なる解放だ。
1. もはや「モバイルバッテリー内蔵」。7,000mAhの世界
多くのフラッグシップ機が5,000mAhで「バッテリー持ちが良い」と評価される中、C85 Proは軽々と7,000mAhを搭載してきた。これは、一般的な使い方であれば3日間、使い方を工夫すれば4~5日の連続使用すら視野に入る容量だ。
週末のキャンプや旅行で、モバイルバッテリーを持つか持たないか悩む必要がなくなる。充電ケーブルを差し忘れて寝てしまった朝も、絶望せずに済む。この「精神的な余裕」こそが、7,000mAhがもたらす最大の価値だ。 45Wの急速充電に対応している点も、この大容量を運用する上で最低限のラインはクリアしていると言えるだろう。
2. IP69防水は、我々の想像を超えている
そして、IP69。これがまた尋常ではない。 多くの防水スマホが謳う「IP68」が「水深1.5mに30分」程度であるのに対し、Realme C85 Proは公式にこう謳っている。
- 水深6メートルで30分間
- 水深0.5メートルで60日間
- 熱湯にも耐えられる
「60日間」とは何かの間違いではないか?と目を疑うが、これが事実なら、もはや日常生活での水没リスクはゼロに等しい。
お風呂での長時間の動画鑑賞や、ゲリラ豪雨の中での操作はもちろん、海や川でのレジャー、釣り、あるいは水仕事の現場でも、一切の不安なく運用できる。スピーカーに溜まった水を排出する機能まで備えているという徹底っぷりだ。

タフネスだけじゃない。妥協なき「ディスプレイ」品質
これだけのタフネス性能を持つと、他の部分でコストカットされているのではと勘ぐりたくなる。しかし、ディスプレイ性能は驚くほど高い。
6.8インチの大画面にはAMOLED(有機EL)を採用し、リフレッシュレートは120Hzに対応。滑らかな操作感を約束する。
さらに驚くべきは輝度だ。通常輝度が最大800nitと十分明るいことに加え、最大ローカル輝度(ピーク輝度)は4,000nitに達するという。
これは、真夏のビーチや雪山といった、直射日光が最も厳しいアウトドア環境下でも、画面の視認性を確実に確保するという強い意志の表れだ。このディスプレイは、IP69というタフネス性能と完璧に噛み合っている。

なぜ今、「Snapdragon 685」なのか
さて、問題の核心だ。なぜ、これほどのモンスターバッテリーとタフネスボディを与えられたマシンが、5G非対応の「Snapdragon 685」を搭載しているのか。
Snapdragon 685は、決して非力なSoCではない。Web閲覧、SNS、動画視聴といった日常的な操作は快適にこなせる。しかし、最新の重い3Dゲーム(例えば『原神』など)を高画質でプレイするには明らかに力不足だ。
だが、待ってほしい。それは本当に「欠点」だろうか?
ここで私は、Realmeの巧みな戦略を見た気がする。 考えてみてほしい。このスマートフォンを(約250ドルという価格で)手にするユーザー層は、最新ゲームのグラフィック性能を追い求める層だろうか? おそらく違う。
彼らが求めているのは、過剰なパフォーマンスではなく、圧倒的な「バッテリー持続時間」ではないか。
Snapdragon 685は、最新のハイエンドSoCに比べて消費電力が格段に低い。つまり、「超省電力SoC」と「超大容量バッテリー」という、最強の“燃費”コンビを意図的に作り出したのだ。
5G非対応であることも、エリアの狭さや余計なバッテリー消費を考えれば、このコンセプトにおいてはむしろ「合理的」とさえ言える。
このマシンは、「パフォーマンスはそこそこでいい。それより、充電の心配から私を解放してくれ」という、サイレントマジョリティの声に応えた結果なのだ。

7,000mAhを搭載して「205g」という“軽業”
最後に特筆すべきは、そのサイズ感だ。 7,000mAhものバッテリーを積みながら、重量は約205g、厚みは約8.09mmに抑えられている。
これは驚異的なエンジニアリングだ。同容量のバッテリーを積んだタフネススマホが、平気で250gや300gを超えることを考えれば、C85 Proがいかに「常識的な」スマホのフォルムを保っているかがわかる。
Realme C85 Proは、「すべてが平均点以上」を目指す優等生スマートフォンではない。パフォーマンスという一点を潔く切り捨て、そのリソースをすべて「バッテリー」と「タフネス」という二点に全振りした、強烈な個性を持つ「一点突破型」のマシンだ。
5Gは使わない。ゲームもしない。ただ、充電の心配と水没の恐怖だけは、もう二度と味わいたくないという方向けのスマホなのかもしれない…
って、いくら擁護しても、「Snapdragon 685」という懸念だけは払拭できない。何考えてんだRealmeさんよぉぉぉぉ!

