「薄さは、正義だ」。 つい数ヶ月前まで、スマートフォン業界はそう確信していました。Appleが「iPhone Air」を、サムスンが「Galaxy S25 Edge」を市場に投下し、技術の粋を極めた”極薄戦争”が勃発。私たちは、紙のように薄い未来のデバイスに胸を躍らせたはずです。
しかし、です。 聞こえてきたのは、勝利の凱歌ではありませんでした。両モデルともに「まさかの販売不振」。 あれだけ鳴り物入りで登場した超薄型スマホたちが、今、業界全体を巻き込む巨大な「負の遺産」になろうとしています。Appleとサムスンの誤算は、中国メーカーをパニックに陥れ、市場は一気に冷え込んでいます。
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■ 巨人のつまずき、そして連鎖するパニック
今年のスマートフォン市場の主役は、間違いなく「薄さ」でした。Appleとサムスンという2大巨頭が、ほぼ同時に超薄型モデルをフラッグシップラインに投入したのですから。
しかし、蓋を開けてみれば、iPhone AirもGalaxy S25 Edgeも、消費者の財布の紐を緩めることはできませんでした。なぜか。理由は「薄さ」と引き換えにした「何か」――おそらくはバッテリー持ちや耐久性への潜在的な不安、あるいは高すぎる価格――が、ユーザーの期待値を超えられなかったからでしょう。
この「本家」の失敗は、すぐさま他のメーカーに伝播しました。
リーク情報によれば、Galaxy S25 Edgeの発売直後、「我こそは」と追随した中国メーカーたちが、今、大慌てでプロジェクトを停止しているというのです。例えば、世界最薄を謳った「Tecno Slim」のような製品は、もはや「失敗の象徴」として扱われかねません。
ある中国メーカーは、iPhone Airの惨状を見て、来年発売予定だった薄型モデルの開発を即座に中止したと報じられています。彼らにとって、Appleの失敗は「進むべきではない道」を示す、何より明確な標識となったのです。

■ 「シリコンバッテリー」の夢もAirと共に散るか
一部の中国メーカーは、「シリコンバッテリー」という新技術を切り札に、薄型でありながら長寿命という「矛盾」を解決しようとしていました。これは、超薄型スマホが生き残るための、唯一の希望の光だったかもしれません。
しかし、その希望も、市場のリーダーであるiPhone Airの不振の前では風前の灯火です。いくら技術的に優れていても、市場全体が「薄型=売れない」というムードに包まれてしまえば、その新技術を搭載した製品が世に出る機会すら失われてしまいます。
■ サムスンは「損切り」、Appleは「意地」?
業界の動向に敏感なサムスンは、すでに次世代機「Galaxy S26 Edge」の開発を中止した、というのが業界関係者の間での有力な見方です。第一世代の失敗を受け、早々に「損切り」を決断したのでしょう。賢明な判断とも言えます。
問題は、Appleです。
ご存知の通り、Appleは「iPhone mini」や「iPhone Plus」といった、市場の評価が芳しくなかったモデルでさえ、数年間は販売を続けた”前科”があります。彼らが多大なリソースを注ぎ込んだ「Air」というブランドを、わずか1年で見捨てることは考えにくい。
業界全体が、またしてもAppleの「次の一手」に依存しているのです。
これは「Apple Vision Pro」の時と全く同じ構図です。たとえVision Proが店頭で埃をかぶろうとも、他社はXRヘッドセットの開発を続けなければならないかのように。そして今回も、たとえiPhone Airが売れなくても、Appleが続ける限り、他社も中途半端に薄型モデルを追いかけざるを得ないのかもしれません。

まとめ
「技術の進化=薄さ」という、メーカー側の思い込みと、私たち消費者が本当に求める価値との間に、決定的な「ズレ」が生じていた。今回の「超薄型スマホの乱」は、それを浮き彫りにしました。
私たちは、カミソリのように薄いデバイスではなく、一日中充電を気にせずに使える「安心感」や、万が一落としても割れない「頑丈さ」を、無意識のうちに求めていたのではないでしょうか。
サムスンの撤退と中国メーカーのパニックは、「薄さ」という呪縛から業界が解放される、良い兆候かもしれません。iPhone Airがこのまま「意地」で延命されるのか、それともこの失敗を糧に、Appleが全く新しい「価値」を提示してくるのか。
って、 薄型スマホいいと思うんですけどね…なんでやろ。

