待望の発売から数ヶ月、世界中のゲームファンが熱狂の渦に包まれている「Nintendo Switch 2」。進化したグラフィック、革新的なゲーム体験、そしてどこにでも持ち運べる唯一無二のコンセプトは、多くの人々を魅了し、リビングや子供部屋は再び笑顔で満たされました。まさに、最高のゲーム機。誰もがそう思っていたはずです。
しかし、その輝かしい評価に冷や水を浴びせるかのような、衝撃的なニュースが飛び込んできました。
「Nintendo Switch 2の修理しやすさスコアは、10点満点中わずか3点」
これは、あらゆる電子機器を分解・分析し、修理のしやすさを評価することで知られる専門家集団「iFixit」が下した、極めて厳しい評価です。このニュースを見て、「やっぱりか…」「またドリフト問題に悩まされるのか?」と不安に思った方も少なくないでしょう。
ですが、本当にそうでしょうか?iFixitのレポートを読んで、こう感じた人もいるはずです。「確かに言いたいことはわかる。でも、そんなことはどうでもいいくらい、Switch 2は最高に楽しいんだ!みんな喜んで遊んでいる。それで良いじゃないか…」と。
この記事では、iFixitが指摘するNintendo Switch 2の技術的な”弱点”を専門家の視点で詳しく解説すると同時に、その評価だけでは決して測ることのできない、私たちがSwitch 2に熱狂する”本当の理由”に迫ります。
記事の内容を音声で聞きたい方はこちら↓


Switch 2がiFixitの修理評価で過去最低レベルになった件
衝撃のスコア「3/10点」。iFixitが暴いたSwitch 2の”弱点”とは?
まず、目を背けずに事実を直視しましょう。なぜiFixitは、Nintendo Switch 2にこれほどまでに低い評価を下したのでしょうか。彼らの詳細な分解レポートから見えてきた、主な問題点は以下の通りです。
1. そもそも「開ける」ことすら困難な本体
iFixitのレポートによると、Switch 2の本体は、まるでユーザーによる分解を拒むかのような、非常に複雑な構造になっています。(当たり前やろw
- 隠されたネジ
Joy-Con 2を固定している磁石を取り外すと、その下に合計4本のネジが”頑固なシール”の下に隠されています。これに気づかずに力を加えれば、筐体を破損させる原因になりかねません。 - 複雑な内部構造
本体内部にアクセスできたとしても、そこにはヒートシールドやmicroSD Expressカードリーダーといった部品が、複数のコネクタやネジで複雑に絡み合っています。目的のパーツにたどり着くまでには、専門的な知識と慎重な作業が要求されます。

2. 交換が絶望的な主要パーツ
万が一、故障してしまった場合に最も交換が必要となるであろうパーツが、ユーザー自身の手ではほとんど修理不可能な設計になっていることも、評価を下げる大きな要因となりました。
- はんだ付けされたUSB-Cポート
充電やデータ転送、ドックへの接続など、使用頻度が非常に高いUSB-Cポート。この部分が破損した場合、通常であればパーツ交換で対応したいところですが、Switch 2ではメインの基板に直接はんだ付けされています。これを交換するには、高度なリペア技術が必要です。 - 同じくはんだ付けのゲームスロット
ゲームカードを読み込むスロットも同様に基板にはんだ付けされています。抜き差しの回数が多いこの部分の故障は致命的ですが、エンドユーザーが修理することは事実上不可能です。

3. 悪名高き「Joy-Conドリフト」再発の懸念
そして、多くの初代Switchユーザーを長年苦しめてきた、あの悪夢が再び頭をよぎります。
- 従来型スティックの採用
iFixitが分解したJoy-Con 2には、初代と同様の構造を持つ従来型のアナログスティックが採用されていました。これは、摩耗による誤入力、いわゆる「Joy-Conドリフト」が再発する可能性を依然として内包していることを意味します。 - TMRスティックの見送り
近年、磁気を利用することで物理的な接触をなくし、ドリフト現象を原理的に解決できる「TMRスティック(ホールエフェクトスティック)」という技術が登場しています。任天堂がこれを採用しなかったことに対し、iFixitは「残念だ」と失望感を示しています。 - 困難なバッテリー交換
さらに、Joy-Con 2の小さなバッテリーも強力な接着剤で固定されており、バッテリーが劣化した際の交換作業を困難にしています。
これらの指摘は、技術的な観点から見れば、すべて事実なのでしょう。特に、任天堂が公式に交換用のスペアパーツを供給していない現状を考えると、「ユーザーが自分で修理する権利」という観点からは、極めて厳しい評価も頷けます。
しかし、本当に「悪い製品」なのか?評価を超えたSwitch 2の魅力

さて、ここからが本題です。iFixitのレポートを読んで、あなたは「こんな欠陥品、買うべきではなかった」と思いましたか?おそらく、多くの人は「NO」と答えるでしょう。なぜなら、私たちは「修理のしやすさ」を買ったのではなく、「最高のゲーム体験」を買ったからです。
そもそも「自分で修理する」は多数派か?
冷静に考えてみましょう。あなたの周りで、ゲーム機が壊れた時に自分で分解して修理する人がどれだけいるでしょうか?ほとんどの人は、メーカーの公式サポートに修理を依頼するはずです。
iFixitの評価は、あくまで「自分で修理する場合の難易度」を示す指標です。それは製品の一側面ではありますが、製品の価値全体を決めるものではありません。むしろ、複雑で高密度な内部構造は、あのコンパクトなボディに最高のパフォーマンスを詰め込むための、任天堂の技術者たちの努力の結晶と見ることもできるのではないでしょうか。
「修理しやすさ」より優先されたもの
おそらく任天堂は、設計段階で「修理のしやすさ」を犠牲にしてでも、優先すべきことがあると考えたのでしょう。それは、「小型化」「堅牢性」「コスト」、そして何よりも「ユーザーを没入させるゲーム体験」だったのではないでしょうか。
はんだ付けされたパーツは、衝撃による接触不良を防ぎ、製品全体の耐久性を高める狙いがあるのかもしれません。ぎっしりと詰め込まれた内部は、携帯性を損なうことなく最大限のパフォーマンスを発揮するためのトレードオフの結果なのです。
私たちユーザーができる「ドリフト問題」へのささやかな対策

とはいえ、Joy-Conのドリフト問題は、多くのユーザーにとって現実的なリスクです。完全に防ぐことは難しいかもしれませんが、少しでも長く快適に遊ぶために、私たちにできることもあります。
- プロコントローラーの活用: 家でじっくり遊ぶ際は、操作性も耐久性も高いプロコントローラーをメインに使う。
- こまめな清掃: スティックの根本にホコリが溜まらないよう、定期的にエアダスターなどで清掃する。
- 公式サポートへの期待: 初代Switchでは、後にJoy-Conの無償修理プログラムが提供されました。Switch 2でも同様のサポートが提供される可能性に期待し、公式情報を常にチェックしておくことが大切です。
【まとめ】
iFixitが突きつけた「修理スコア3点」という厳しい現実は、Nintendo Switch 2が抱える技術的な課題を浮き彫りにしました。特に、主要パーツの交換が困難である点や、Joy-Conドリフト再発の懸念は、製品が抱えるリスクとして、私たちユーザーも知っておくべき重要な情報です。
しかし、製品の価値は、決して一つの指標だけで決まるものではありません。
工具を片手に電子基板と向き合う時間は、私たちの人生において、ほんの一瞬かもしれません。それよりも、私たちがNintendo Switch 2と過ごす時間の大半は、画面の向こうに広がる世界に胸を躍らせ、手強いボスに仲間と挑み、新たな発見に心をときめかせる、かけがえのない体験に満ちています。
iFixitの評価は、いわば「車のエンジンルームの整備性」を論じているようなものです。それも確かに重要なことですが、多くのドライバーは、それ以上に「運転する楽しさ」や「デザインの美しさ」「乗り心地の良さ」に価値を見出します。
Nintendo Switch 2も同じです。確かに、いつか調子が悪くなる日が来るかもしれません。その時、修理は少し大変かもしれません。でも、それまでの間にこの一台がもたらしてくれるであろう、数えきれないほどの笑顔と興奮に満ちた最高のゲーム体験は、そんなリスクを補って余りある、何物にも代えがたい”宝物”ではないでしょうか。
だからこそ、私たちは胸を張って言えるのです。 「修理が難しくたって構わない。Nintendo Switch 2は、やっぱり最高なんだ」と。
