ようやく、日本のiPhoneユーザーに「自由」が訪れるはずでした。2025年、新しい法律の施行に合わせて、あの「フォートナイト」がiOSに華々しく帰還する。多くのファンがそう信じて疑わなかったシナリオは、今、最悪の形で書き換えられようとしています。
スマートフォン市場におけるアップルの支配力は、もはや単なるブランド力ではなく、インフラとしての「徴税権」に近いものへと変質しています。元営業マンの視点でこの市場競争力を分析すると、アップルが提示した新たな条件は、競合を排除するための「参入障壁」というよりは、もはや「焦土作戦」に近い。自らの利益を1円たりとも渡さないという強固な意志が、日本の法改正という追い風さえも跳ね返そうとしているのです。
なぜティム・スウィーニー氏はこれほどまでに激怒しているのか。そして、私たちのiPhoneでフォートナイトを遊ぶ夢はどうなってしまうのか。その裏側に潜む「見えない壁」の正体を解き明かします。
They're charging a competition-crushing 21% junk fee on third-party in-app payments, and 15% for purchases made on the web (a practice the US District Court already found to be illegal in the contempt of court proceeding that Apple lost and the 9th Circuit Court upheld):… pic.twitter.com/VM1iC8vxPa
— Tim Sweeney (@TimSweeneyEpic) December 18, 2025
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日本政府への侮辱か?Appleが課した「三重の鎖」
事の発端は、日本で成立した「スマートフォンソフトウェア競争促進法(MSCA)」です。これにより、アップルは自社以外のアプリストア(サードパーティ製ストア)を認めざるを得なくなりました。
一見すると、これはユーザーにとっての勝利に見えます。しかし、アップルが対抗措置として打ち出した手数料体系は、想像を絶するものでした。
エピックゲームズのCEO、ティム・スウィーニー氏が「寄生的」と切り捨てたその中身は、驚くべき数字の羅列です。 サードパーティ決済を利用すれば21%、ウェブ経由の購入でも15%。さらに、競合ストアから配信されるアプリの全収益に対して、新たに5%の手数料を上乗せするというのです。
これまで「30%の手数料」が問題視されてきましたが、場所を変えても、形を変えても、結局はアップルの取り分が確保される仕組み。
これは、自由な競争を促そうとする日本政府と、それを待ち望んだ国民に対する、これ以上ないほど露骨な「妨害行為」と言わざるを得ません。


隠された「恐怖の設計思想」
さらに巧妙なのは、技術的な側面からの嫌がらせです。アップルは、ユーザーがサードパーティ製ストアを利用しようとする際、プライバシーや財務上の安全が危険にさらされるかのような「警告画面」を表示する仕組みを導入しました。
プログラマーの視点でこのUI/UXの設計思想を分析すると、これがいかに悪意に満ちたものかが分かります。ソフトウェア設計において、ユーザーの行動を促すための「摩擦(フリクション)」を意図的に最大化させる。
これは本来、ユーザーをミスから守るためのものですが、今回は「アップル以外を選ぶのは危険だ」という心理的障壁を植え付けるために悪用されています。
いわゆる「ダークパターン」に近いこの設計は、ユーザーの利便性を守るためではなく、既存の独占体制を維持するための防衛本能の現れです。マイクロソフトがもし、Windows上の全ソフトに対して「すべての取引を報告せよ」と命じたら、世界中が炎上するでしょう。今、iPhoneで起きているのは、それと同じ規模の異常事態なのです。
結局、フォートナイトは遊べるのか?
ユーザーが最も知りたいのは、「結局、どうすれば遊べるのか?」という点でしょう。
残念ながら、スウィーニー氏は「2025年にフォートナイトが日本のiOSに(公式の形で)戻ることはない」と明言しました。しかし、完全な絶望ではありません。
現在、日本のプレイヤーに残された唯一の道は、Apple App Storeを介さない「AltStore PAL」のような、承認済みのサードパーティマーケットプレイスを利用することです。2020年の追放劇以来、初めてiPhoneにフォートナイトを「合法的に」インストールするルートが開かれました。
ただし、これは公式ストアからアプリを落とすような「当たり前」の体験ではありません。アップルが仕掛けた複雑な手続きと、不安を煽る警告画面を乗り越えた先にしか、バトルバスへの搭乗券は用意されていないのです。

