やれやれ、また「ステルス発表」ですか、ソニーさん。今度は“充電ドックが主役”のモニターだそうで。
かつてのState of Playで、我々が新作ゲームの情報に胸を躍らせている裏で、PlayStationブランドのスピーカーを「あっさりと」紛れ込ませた事件を覚えているだろうか。あの時、「ソニーも変わったな…」と感じたものだ。
そして今回。彼らはまた同じ手を使った。 今度の獲物は「PlayStationゲーミングモニター」。
2026年発売、価格未定。米国と日本で先行するらしいが、その発表の仕方は、まるで「本当に気づいた人だけに売りますよ」と言わんばかりの“ステルスリリース”。

さて、この新型モニター、スペックだけ見れば「今どきの優等生」だ。 27インチのIPS液晶、解像度はQHD(2,560 x 1,440)。PCゲーマーにとっては「鉄板」とも言える構成だ。
しかし、PlayStationブランドを冠するからには、我々が知る「INZONE」シリーズ(あれもソニーだが)とは違う「何か」がなければならない。

最大の特徴は「オプション」のドックという“ズレ”
ソニーが(ひっそりと)アピールする、このモニターの最大の特徴。それはなんと、「DualSenseコントローラー用の充電ドックが内蔵されている」ことだという。
……待て。モニターの“最大の特徴”が、充電ドック? しかも、よく読めば「パネルの下に収納可能」で「別途購入する必要があります」とある。
オプションじゃないか。
我々ゲーマーがモニターに求めるのは、応答速度であり、色再現性であり、圧倒的な没入感ではなかったか。それなのに、ソニーが我々に提示したのは「オプションで付けられる、収納式の充電ドック」だった。この“予測とのズレ”に、まずは乾いた笑いが出た。
机の上がスッキリするのは結構だ。しかし、それを“最大の特徴”と謳うセンス。PlayStationブランドとは、そこまで「コントローラー充電」に悩まされていたブランドだっただろうか。

PS5 Proでも「120Hz制限」という“現実”
スペックをもう少し深掘りしよう。 このモニター、リフレッシュレートはPC/Mac接続時、VRR対応で最大240Hzと、かなりのハイスペックだ。
だが、驚くべきは次の一文。 「PlayStation 5とPlayStation 5 Proは120Hzに制限されます」
……Proでも、120Hz?
我々がPS5 Proに期待していたのは、4K/120Hzの安定動作や、さらなる高み(例えば1440p/240Hz対応)ではなかったか。ソニー自らが「PlayStationブランド」で出す最新モニターで、「Proですら120Hzが上限ですよ」と、2026年の未来を突きつけてきたのだ。
これは、Proの性能限界を示唆しているのか、それとも「PS5でゲームするなら1440p/120Hzが現実的な着地点でしょ」という、ソニーからの冷徹な“答え合わせ”なのか。

隠された本命「PlayStation Link」専用ポート
では、このモニターは「充電ドックが付いた中途半端な製品」で終わるのか? いや、I/O(入出力)ポートのリストを見て、私はソニーの「本当の狙い」に気づかされた。
HDMI 2.1 x2、DP 1.4 x1。ここまでは普通だ。 だが、そこには「PlayStation Linkデバイス用のUSB-Cポート」が1つ、鎮座している。
これだ。 Pulse EliteヘッドセットやPulse Exploreイヤホン、そしてあのステルス発表されたスピーカー。これら既存の「PS Link」デバイスと、このモニターが直接、低遅ienで接続できることを意味する。
充電ドックは「客寄せパンダ」に過ぎない。 ソニーがこのモニターで本当にやりたかったのは、「PS Link」ハブとしての役割をモニターに持たせ、映像、音声、そしてコントローラー充電(オプションだが)というPlayStationの“体験”すべてを、この一台で完結させるエコシステムの構築だ。
まとめ
2026年発売予定。価格は未定。
このPlayStationゲーミングモニターは、分かりやすい「高性能」で殴りかかってくる製品ではない。むしろ、非常に“巧妙”に、我々のデスク環境を「PlayStation」で染め上げようとする、戦略的な一手だ。
「DualSenseの充電、面倒でしょ?(オプションだけど)ここに置けるよ」 「Pulseヘッドセット、便利だよね? このモニターならUSBドングル要らずで繋がるよ」
そんな甘い言葉で、我々をソニーの「エコシステム」という名の快適な“沼”に引きずり込もうとしている。
INZONEというブランドがありながら、あえて「PlayStation」の名を冠してきた理由。それは、これが単なる「PC/PS5兼用モニター」ではなく、「PlayStation体験のハブ」となる製品だからに他ならない。
2026年、価格が発表された時、我々はこの「便利さ」という名の“囲い込み”に、いくらの値を付けるのか。ソニーは、我々ゲーマーの「忠誠心」と「ズボラさ」を、同時に試そうとしている。実に、巧妙ではないか。

