ワイヤレスヘッドホンが当たり前になった今、誰もが一度は感じたことがあるであろう、あの小さな絶望。「さあ、音楽の世界に浸ろう」と思った瞬間に響く、無慈悲なバッテリー切れの警告音…。
ケーブルの呪縛から解放されたはずが、今度は充電という新たな束縛に悩まされている。そんな現代人のジレンマに、一つの答えを提示するかもしれない注目すべき製品が登場します。
その名は「CMF Headphone Pro」。
デザインコンシャスなガジェットで世界を席巻する「Nothing」のサブブランドとして知られるCMFが、満を持して送り出す初のフルサイズヘッドホンです。そして、その最大の武器は「100時間」という驚異的なバッテリー寿命。これは、親ブランドであるNothingのヘッドホンさえも上回るスペックです。
この記事では、9月29日の正式発表を目前に控えた「CMF Headphone Pro」の魅力に迫ります。特に、最大のライバルとなるであろう「Nothing Headphone (1)」と徹底比較。バッテリー性能の真実から、期待される価格、そして隠された機能まで、あなたが新しいヘッドホンを選ぶための「新しい基準」を、どこよりも分かりやすく解説していきましょう。
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CMF Headphone Proの1回の充電で最大100時間ってどういうこと?
まず、結論からお伝えしましょう。CMFが公式に発表した「Headphone Pro」のバッテリー駆動時間は、1回の充電で最大100時間です。
100時間。この数字がどれほど規格外か、ピンとこない方もいるかもしれません。仮に毎日3時間音楽を聴いたとしても、実に1ヶ月以上も充電なしで使い続けられる計算になります。週に1度の充電さえ面倒に感じる私たちにとって、これはまさに革命的な数値と言えるでしょう。
もちろん、ワイヤレスヘッドホン市場に100時間再生を謳う製品が全くないわけではありません。しかし、CMF Headphone Proが注目される理由は、その血統にあります。
Listen on with 100 hours of playback.
— CMF by Nothing (@cmfbynothing) September 26, 2025
Headphone Pro. 29 September. pic.twitter.com/aLKSnlKEYx
親ブランドであるNothingが数ヶ月前に発売した「Nothing Headphone (1)」は、そのスタイリッシュなデザインと音質で高い評価を得ましたが、バッテリー駆動時間は最大80時間(ANCオフ/AACコーデック時)でした。
つまりCMFは、サブブランドという立場でありながら、親ブランドのフラッグシップ機をバッテリー性能で明確に上回ってきたのです。これは単なる新製品の登場ではなく、市場の勢力図を塗り替えかねない「下剋上」の始まりなのかもしれません。
しかし、ここで一つ冷静になる必要があります。「最大100時間」という言葉には、必ず「特定の条件下で」という注釈が隠れているものです。CMFはまだ詳細な条件を明らかにしていませんが、ライバル製品のスペックから、その実態を推測することができます。
おそらく、この100時間という数値は、
- ANC(アクティブノイズキャンセリング)をオフ
- Bluetoothコーデックは標準的な「AAC」を使用
という、最もバッテリー消費が少ない条件で測定されたものである可能性が極めて高いです。
参考として、ライバルである「Nothing Headphone (1)」のバッテリー駆動時間を見てみましょう。
- ANCオフ / AACコーデック:最大80時間
- ANCオン / AACコーデック:35時間
- ANCオフ / 高音質LDACコーデック:54時間
- ANCオン / 高音質LDACコーデック:30時間
ご覧の通り、周囲の騒音を消してくれる便利なANC機能をオンにしたり、より高音質なコーデックに切り替えたりすると、バッテリーの消費は激しくなります。これはCMF Headphone Proでも同様でしょう。
とはいえ、ベースとなる数値が100時間もあるのですから、たとえANCをオンにしたとしても、Nothing Headphone (1)の35時間を大きく上回る駆動時間を実現してくることは間違いありません。日常的な利用シーンにおいて、充電の頻度が劇的に減るというメリットは揺るがないでしょう。

価格が最終兵器に?コスパで市場を破壊する可能性
CMF Headphone Proの魅力は、バッテリーだけではありません。最大の注目ポイントは、その「価格」にあります。
CMFは、Nothingの革新的なテクノロジーやデザイン哲学を受け継ぎつつ、より多くの人が手に取りやすい価格帯で製品を提供することをコンセプトとしたブランドです。現在、ライバルのNothing Headphone (1)はAmazonで299ドル(約4万円台後半)で販売されています。
もし、CMF Headphone Proが「Nothing Headphone (1)よりもバッテリーが長持ちするのに、価格はそれよりも安い」という状況を実現すれば、市場に与えるインパクトは計り知れません。ユーザーは、これまで「デザイン」「音質」「バッテリー」「価格」といった要素を天秤にかけ、何かを妥協して製品を選んできました。
しかしCMF Headphone Proは、その全ての要素で高いレベルを維持しつつ、圧倒的なコストパフォーマンスで「これ一択」という状況を生み出すポテンシャルを秘めているのです。

ユーザー心理を突いた、細やかだが重要な機能
最新のティーザー動画からは、CMFが単なるスペック競争だけでなく、ユーザーの使い勝手を深く理解していることも伺えます。
判明しているのは、3.5mmオーディオジャックの搭載です。これにより、万が一長旅の途中でバッテリーが切れてしまっても、有線ヘッドホンとして使い続けることができます。飛行機内のエンターテイメントシステムに接続する際にも重宝する、実に気の利いた仕様です。
また、充電ポートにはUSB-Cが採用されています。これが単なる充電用なのか、それともUSB-C経由でのオーディオ出力にも対応するのかは、9月29日の正式発表を待つ必要がありますが、現代のガジェットとして標準的なインターフェースを備えている点は安心材料と言えるでしょう。
