ゲーミングPCが欲しいけれど、組み立てるのは面倒くさい。でも家庭用ゲーム機(コンソール)だと遊べるゲームが限られる。そんなワガママな私たちの救世主として期待されていたValveの新型「Steam Machine」ですが、ここに来て少し雲行きが怪しくなってきました。
「Steam Deckがあんなにコスパ良かったんだから、据え置き機も安いはず」
そう信じて疑わなかった私たちに、冷や水を浴びせるようなニュースが飛び込んできたのです。なんと、Valveは今回のハードウェアで「赤字覚悟の安売り」をするつもりは一切ないとのこと。
これは単なる値上げの話ではありません。ソニーやマイクロソフトとは根本的に違う、Valveなりの「仁義」であり、同時に私たちゲーマーへの挑戦状でもあります。
2026年の発売に向けて、なぜ価格が高騰するのか、そしてそれでも「買い」と言えるコンソール並みのメリットとは何なのか。Skill Upによる最新インタビューを基に、PCゲーマー視点でその真意を読み解いていきます。
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期待を裏切る?Steam Machineの価格設定の真実
まず、単刀直入に言いましょう。新型Steam Machineは、かつてのPS4やSwitchのような「お買い得な家電」の価格帯では登場しません。
インタビューに応じたValveのデザイナー、ローレンス・ヤン氏とピエール=ルー・グリファイ氏の発言は非常にクリアでした。彼らは「コンソールの価格(赤字販売)には合わせない」と明言しています。つまり、このハードウェアの価格は、同等の性能を持つゲーミングPCを自作するのとほぼ同じ金額になるということです。
多くのゲーマーが期待していた400ドルから500ドルという価格帯は、残念ながら幻想に終わる可能性が高そうです。
現在の市場予測では、700ドルから900ドル(日本円で現在のレートだと10万円〜14万円超え)という、PS5 ProやXbox Series Xの上位モデルと同等、あるいはそれ以上の価格帯が現実味を帯びています。
なぜソニーにはできて、Valveにはできないのか
ここで疑問が生じます。「PS5はあんなに高性能なのに、なぜもっと安く売れたのか?」
答えはシンプルで、ビジネスモデルの違いです。ソニーやマイクロソフトは、ハードウェアを売るたびに赤字を出してでも普及させ、その後のソフト売上やサブスクリプション(PS PlusやGame Pass)で回収する「損して得取れ」戦略を取っています。
一方、Valveはこの戦略を取りません。彼らはハードウェア単体で健全な利益、あるいは少なくともトントンになる価格設定を維持しようとしています。これは「Steam」というプラットフォームがすでにPC上に確立されており、ハードウェアで無理に囲い込む必要がないからこその余裕とも言えますし、健全なPC市場価格へのリスペクトとも受け取れます。

自作PCと何が違う?Steam Machineを選ぶメリット
「PCと同じ値段なら、自分で組んだ方が良くない?」
自作PC経験者なら当然そう思うでしょう。しかし、Valveが提供しようとしているのは、単なるパーツの集合体ではありません。彼らが目指しているのは、「PCの自由度」と「コンソールの快適さ」のいいとこ取りです。
インタビューで強調されたのは、以下のコンソール並みの機能です。
コントローラーでの電源操作: ソファに座ったまま、コントローラーのボタン一つでスリープ解除。 HDMI-CEC対応: テレビの電源と連動する、まさに家電のような挙動。 静音性と小型化: これが最大のポイントです。
正直なところ、高性能なゲーミングPCを「静か」かつ「超小型」に組むのは、熟練の自作ユーザーでも至難の業です。エアフローの計算、パーツの選定、配線の苦労。それらを全てValveのエンジニアが解決し、最適化された状態で提供してくれる。その「技術料」が含まれていると考えれば、PCパーツの合計金額と同等という価格は、実はかなりリーズナブルと言えるかもしれません。

2026年に向けた懸念材料はRAM不足という時限爆弾
しかし、楽観視ばかりもしていられません。記事でも触れられている通り、現在進行形で発生している「歴史的なRAM不足」が、2026年の発売価格に暗い影を落としています。
AIブームによるデータセンター需要の爆発で、メモリ価格が高騰しています。これはPCゲーマーにとって、グラボ高騰に続く悪夢です。Valveも「外的要因」としてこの問題に言及しており、正式な価格発表を急いでいないのは、この市況を見極めたいという意図があるのでしょう。
今回の情報は、私たちが抱いていた「Steam Machine = 格安PC」という予測を大きく裏切るものでした…残念。

