ゲームの歴史を語る上で、決して無視できない一つの「伝説」があります。それは輝かしい成功の物語ではなく、むしろ華々しい失敗の記憶。1995年に登場し、その先進性が災いしてか、プレイヤーに強烈な頭痛と後悔の念を残してわずか1年足らずで消えていった任天堂の異端児、『バーチャルボーイ』です。今の若い人は知らないかもしれないですが、色々と消えていった任天堂黒歴史ガジェットの代表作とも言える一品がついに…
その赤と黒の悪夢が、30年という長い時を経て、Nintendo Switchおよび次世代機Switch 2の専用アクセサリーとして蘇るという、にわかには信じがたいニュースが飛び込んできました。
ちなみに、価格は9,980円(税込み)で発売予定日は2026年2月17日となっています。
これは任天堂による大胆な再挑戦なのでしょうか? それとも、ただの奇妙な懐古趣味なのでしょうか? この記事では、この衝撃的な復活劇の全貌と、誰もが最も気になるであろう「あの問題」の行方について、深く、そして少しだけ皮肉を込めて掘り下げていきます。

↓最近はAmazonでもSwitch2転売ヤーが業者のフリをして発売しているというお話も聞くので、購入についてはご注意ください。

そもそも「バーチャルボーイ」とは? – 時代を先取りしすぎた悲劇のハード
若いゲームファンの中には、その名を聞いてもピンとこない方がいるかもしれません。バーチャルボーイとは、1995年に任天堂が世に送り出した、家庭用ゲーム機です。ゴーグル型のディスプレイを覗き込むことで、立体的な3Dグラフィックスを体験できるという、まさに時代を先取りしたコンセプトを持っていました。
しかし、その先進性には大きな代償が伴いました。技術的な制約から、画面は赤と黒のモノクロ表示しかできず、お世辞にも美しいとは言えないものでした。さらに、多くのプレイヤーがプレイ中に激しい目の疲れや頭痛を訴えるという、ゲーム機として致命的な欠点を抱えていたのです。
結果として、全世界でわずか22本のソフトしか発売されず、商業的にも批評的にも大失敗。任天堂の歴史における「触れてはいけない過去」として、ゲームファンの記憶の片隅に追いやられていました。
Switchでバーチャルボーイを遊ぶための「2つの条件」と「2つの選択肢」
そんな伝説のハードが、現代の技術と融合して蘇ります。しかし、あの赤と黒の世界を体験するには、いくつかのステップを踏む必要があります。
遊ぶための2つの必須条件
- Nintendo Switch Online + 追加パックへの加入
バーチャルボーイのゲームは、NINTENDO 64やゲームボーイアドバンスのソフトと同様に、「Nintendo Switch Online + 追加パック」加入者向けのクラシックライブラリで提供されます。まずはこのサービスへの加入が絶対条件です。 - 専用アクセサリーの購入
ソフトがあっても、それを映し出すための専用アクセサリーが必要です。そして、任天堂はこのアクセサリーに2つの選択肢を用意しました。
選べる2つの専用アクセサリー

- プラスチック製レプリカ 9,980円(税込み)
オリジナルのバーチャルボーイを忠実に再現したプラスチック製のゴーグル。当時の雰囲気を完璧に味わいたい、熱心なコレクターや任天堂ファン向けのアイテムです。

- 段ボール製バージョン 2,980円(税込み)
Nintendo Laboを彷彿とさせる、安価な段ボール製の組み立てキット。「怖いもの見たさで少しだけ体験してみたい」というライトなユーザーには、こちらが現実的な選択肢となるでしょう。
つまり、「追加パックに加入」し、さらに「どちらかの専用アクセサリーを購入」することで、ようやくあの伝説の扉を開くことができるのです。

2026年2月、あの伝説のゲームたちが蘇る!
バーチャルボーイのゲームライブラリへの追加は、2026年2月17日より開始される予定です。
全22タイトルの中から、まずは厳選された14タイトルが配信されることが明らかになっています。その中には、『ワリオランド』や『マリオテニス』といった、今なおファンに語り継がれる(ある意味で)名作も含まれています。
【配信予定タイトルの一部】
- ワリオランド
- レッドアラーム
- マリオクラッシュ
- ゴルフ
- テトリス 3D
- バーティカルフォース
- ジャックブラザーズ
- マリオテニス
- テレロボクサー
- ギャラクティックピンボール
今見ると信じられないほど時代遅れに見える赤と黒のグラフィックですが、3D表現を駆使したゲームデザインは、現代のインディーゲームとはまた違った独創性に満ちています。

最大の懸念点 – あの「頭痛」や「目の疲れ」は解決されるのか?
さて、ここが最も重要な問題です。この復活劇において、任天堂は悪名高い「頭痛」や「目の疲れ」の問題にどう対処するのでしょうか?
残念ながら、現時点では任天堂からこの問題に対する具体的な解決策は示されていません。
しかし、いくつかの希望的観測はできます。オリジナルのバーチャルボーイが引き起こした健康問題は、赤色LEDのちらつきや、無理なプレイ姿勢が原因とされています。今回のアクセサリーは、Switch本体の有機ELや液晶ディスプレイを使用する仕組みになるはずです。これにより、オリジナルのディスプレイが抱えていた根本的な問題が解消され、目への負担が軽減される可能性は十分に考えられます。
とはいえ、画面が赤と黒のモノクロであることに変わりはありません。任天堂がどのような工夫を凝らしてくるのか、あるいは「自己責任でお楽しみください」というスタンスを貫くのか、公式からの続報を待つしかありません。

まとめ
30年の時を経て、まさかの復活を遂げるバーチャ-ルボーイ。そのニュースは、往年のファンに驚きと共に一抹の不安を運んできました。
率直に言って、このアクセサリーが万人におすすめできるものになるとは考えにくいでしょう。その価値は、主に歴史的な資料として、あるいは「伝説の失敗作を体験する」という一種のエンターテインメントにあるのかもしれません。
果たして任天堂は、過去の汚名を返上し、この異端のハードに新たな価値を与えることができるのでしょうか。それとも、私たちは再びあの赤と黒の悪夢にうなされることになるのでしょうか。
多くの謎を残したままのこの挑戦的な試み。コレクターはもちろん、あの唯一無二の世界を一度は体験してみたいという怖いもの知らずのゲーマーにとっても、2026年は見逃せない年となりそうです。
