Appleの新製品発表前、私たちファンの心を躍らせるのは、インターネット上に飛び交う様々な「リーク情報」です。それはいつしか、発表会本番を盛り上げる一種の風物詩のようになっていました。しかし、その牧歌的な雰囲気は、今回の「iOS 26」を巡る一件で完全に終わりを告げたのかもしれません。
Appleが、これまで数々のリーク情報を発信してきた著名リーカー、ジョン・プロッサー氏を相手取り、訴訟を起こしたのです。WWDCでの発表前にiOS 26の斬新なデザイン「Liquid Glass」を正確にプレビューした代償は、あまりにも大きいものとなりそうです。
この記事では、単なるリークの域を遥かに超え、法廷闘争にまで発展したこの事件の全貌に迫ります。Appleの逆鱗に触れたのは何だったのか。
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iOS 26のリークをしたジョン・プロッサーをAppleが提訴

発端はWWDCを揺るがした「Liquid Glass」リーク動画
事件の発端は、2025年4月にジョン・プロッサー氏が公開した一本の動画でした。彼はその中で、次期OSである「iOS 26」のデザインを暴露。完全な一致ではなかったものの、その動画は後に発表されたAppleの新しいデザイン言語「Liquid Glass」の雰囲気を驚くほど正確に捉えていました。
これまでも彼のリークは賛否両論ありましたが、今回の的中率は多くの人々を驚かせ、Appleにとっては看過できないレベルに達していたのです。そして発表後、Appleはプロッサー氏と、彼の共犯者とされるマイケル・ラマチョッティ氏を相手取り、ついに訴訟という最終手段に打って出ました。
Appleの逆鱗に触れた「情報の入手方法」

今回の訴訟でAppleが問題視しているのは、情報が漏洩したという「事実」そのものよりも、情報が「どのようにして入手されたか」という、その悪質な手口です。
訴状には、以下の2つの重大な違反が挙げられています。
- 企業秘密の不正流用
- コンピュータ不正使用防止法違反
Appleは、今回のリークが単なる内部告発や偶然の産物ではなく、明確な悪意を持って、違法な手段で機密情報が盗み出されたものだと主張しています。この強い姿勢からは、自社の知的財産とブランドイメージを守るためには一切の妥協を許さないという、Appleの断固たる決意がうかがえます。
まるでスパイ映画…暴かれた情報窃盗の驚くべき手口

そして訴状によって、多くの人が想像するリークのイメージを覆す、衝撃的な手口が白日の下に晒されました。
Appleの主張によると、事件の構図はこうです。
まず、プロッサー氏の共犯者とされるラマチョッティ氏が、自身の友人であり、当時Appleの従業員だったイーサン・リップニック氏の所有する開発者用のiPhoneに目をつけます。
驚くべきことに、ラマチョッティ氏はGPS追跡機能を使い、リップニック氏がプロッサー氏の自宅近くから離れる瞬間を待ち構えていたとされています。そして、友人がいなくなった隙を狙い、事前に入手していたパスワードを使って開発者用iPhoneのロックを解除。その中には、iOS 26の初期バージョンがインストールされていました。
その後、ラマチョッティ氏はビデオ通話でプロッサー氏にそのiPhoneの画面を見せ、新しいUIデザインや複数の新機能、アプリのデモンストレーションを行ったとされています。
この一連の流れは、単なる情報漏洩という言葉では片付けられない、計画的かつ悪質な情報窃盗そのものです。
リークの代償は解雇、そして天文学的な損害賠償請求

この計画に利用された形のApple従業員、イーサン・リップニック氏は、会社のガイドラインに違反し、機密情報を適切に管理しなかったとして、既に解雇されています。彼のキャリアにとって、取り返しのつかない代償となってしまいました。
そして、首謀者とされるジョン・プロッサー氏とラマチョッティ氏が直面する現実はさらに厳しいものです。Appleは、具体的な金額こそ明示していないものの、以下の支払いを求めています。
- 損害賠償および懲罰的損害賠償
- 利息、弁護士費用、訴訟費用
さらにAppleが恐れているのは、そのiPhoneに含まれていたという、まだ公開されていないさらなる機密情報の存在です。これをプロッサー氏が公開することを防ぐため、Appleは裁判所に対し、これ以上の情報公開を禁じる「仮差し止め命令」を求める構えです。
これに対し、プロッサー氏は自身のSNSで「情報がどのように入手されたのかは不明である」という短い声明を発表し、直接的な関与を否定していますが、法廷でその主張がどこまで通用するかは極めて不透明です。

【まとめ】
今回のAppleによるジョン・プロッサー氏への訴訟は、私たちテックファンがこれまである種のエンターテインメントとして消費してきた「リーク文化」に、冷や水を浴びせる重大な事件です。
GPSによる追跡、パスワードの不正利用、そして計画的な情報窃盗。明らかになった手口は、もはや「リーク」という言葉の範疇を大きく逸脱した、明確な犯罪行為の疑惑です。これまでグレーゾーンとされてきた行為に対し、Appleが「法」という最も厳しい鉄槌を下したことで、業界の潮目は大きく変わる可能性があります。
企業の知的財産を守るための徹底した情報管理と、情報を扱う個人の倫理観。その両方が、これまで以上に厳しく問われる時代が来たことを、この事件は物語っています。訴訟の行方がどうなるにせよ、一人のリーカーの行いが、今後のテック業界とメディア、そして私たちファンのリーク情報との向き合い方を、永久に変えてしまうのかもしれません。
