「安定」は、時に「退屈」の裏返しでもあります。しかし、ここ十数年のAppleは、ティム・クックCEOという「偉大なる安定」のもと、驚異的な成長を遂げてきました。
その「日常」が、ついに終わりを告げるかもしれません。
新たな報道が、世界中のApple信者と投資家を震撼させています。早ければ来年、2026年にも、Appleは新しいCEOを迎える準備を進めているというのです。
14年間。あのスティーブ・ジョブズの在任記録(5,090日)をも抜き去り、Appleを世界初の時価総額4兆ドル企業へと導いたティム・クック。彼の退任は、単なるトップの交代劇に留まらない、巨大な「変化の波」を意味しています。
一体、水面下で何が起こっているのでしょうか? そして、私たちの手の中にあるiPhoneやMacの未来は、どう変わっていくのでしょうか。
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「ジョブズ超え」のレガシーと、突然の交代劇の「なぜ?」
ティム・クックがCEOに就任した時、多くの人が「Appleは終わった」と囁きました。カリスマを失った船が、どこへ向かうのかと。
しかし、彼は「オペレーションの天才」として、スティーブ・ジョブズが描いた設計図を、現実世界で最も効率よく、最も巨大なスケールで実現し続けました。結果はご存知の通り。時価総額4兆ドルという、もはや天文学的な数字が彼の功績を物語っています。
今回の報道で興味深いのは、このCEO交代が「現在の業績とは関係がない」とされている点です。業績が絶好調であるにも関わらず、なぜ今、トップ交代を急ぐのか。
そこには、クック氏本人の意向なのか、あるいはAppleという企業が持つ「常に未来を見据える」という強烈なDNAが関係しているのか。
報道によれば、Appleは来年1月下旬の決算発表「前」に新CEOを発表し、スムーズな移行を図りたい考えのようです。この用意周到さこそ、クック体制のAppleそのものと言えるかもしれません。

最有力候補「ジョン・ターナス」とは何者か?
では、その「ポスト・クック」は一体誰なのか。
スポットライトが当たっているのは、ジョン・ターナス氏。現在、ハードウェアエンジニアリング担当上級副社長を務める人物です。
「え、誰?」と思った方も多いかもしれません。しかし、彼は決してポッと出の人物ではありません。
- 2001年にApple入社(製品設計チーム)
- 2021年にハードウェアエンジニアリング担当SVPに就任
- 近年はApple Watchのハードウェアや、WWDC(世界開発者会議)でのMac・iPadのプレゼンテーションも担当
そう、彼はAppleの「製品」そのものに、最も深く関わってきたエンジニアであり、近年は徐々に表舞台にも立ってきた人物なのです。
これまで、次期CEO候補としては最高執行責任者(COO)のジェフ・ウィリアムズ氏や、ソフトウェア責任者のクレイグ・フェデリギ氏の名前が挙がるのが常でした。しかし、ブルームバーグのマーク・ガーマン氏の昨年の報道でも「ターナス氏は幹部らに好かれている」とされ、他の重鎮たちの可能性は低いと報じられていました。
もしターナス氏がCEOになれば、それは何を意味するのか。
「オペレーション」のクックから、「ハードウェア・エンジニアリング」のターナスへ。これは、Appleが再び「製品(モノ)づくり」の原点に立ち返ろうとしているサインなのかもしれない。

