Nintendo Switch Onlineに、あの伝説の対戦アクションゲームが追加されるかもしれない──。そんな噂が、ゲームファンのコミュニティを熱くさせています。今回、海外で報じられた一つの「リーク情報」をきっかけに、『大乱闘スマッシュブラザーズ』のNINTENDO64版が、Nintendo Switchでプレイできるようになるのではないかという期待が、かつてないほど高まっています。
この記事では、そのリーク情報の核心に迫るとともに、なぜ日本では25年以上前の初代『スマブラ』が今なお特別な存在として語り継がれているのか、その文化的背景と魅力について深く考察していきます。単なる噂話の紹介で終わらない、一歩踏み込んだ分析をお届けします。


『大乱闘スマッシュブラザーズ』のNINTENDO64版復活の噂

Source:@sxips
発端は公式動画?ぼやけた画像が示す「初代スマブラ」の可能性
今回の騒動の発端となったのは、2025年6月5日に海外で公開された、ニンテンドークラシックの機能を紹介する一本のプロモーションビデオでした。問題のシーンは、動画開始から約40秒あたり。任天堂が将来のハード(おそらくSwitch 2)で利用可能になると噂される、ブラウン管テレビの表示を再現する「CRTフィルター」をデモンストレーションしている場面です。
画面の右下に、一瞬だけ映り込む、ぼやけた画像。一見すると、ただの背景にしか見えません。しかし、一部の熱心なファンが、この色の配置や構図に既視感を覚えたのです。
「この赤、黄、緑の配色は、もしかして…」
彼らがたどり着いた答え、それは1999年に発売されたNINTENDO64用ソフト『大乱闘スマッシュブラザーズ』のパッケージアートでした。画像を拡大し、当時のパッケージと並べて比較すると、確かにマリオの帽子の赤、ロゴの黄色、そして背景キャラクターたちの色彩と、ぼやけた画像の色合いに無視できない類似点が見受けられます。
この発見は、瞬く間にRedditやFamiboardsといった海外のゲームフォーラムで拡散され、「任天堂がN64版スマブラの配信を匂わせているのではないか」という憶測を呼びました。Nintendo Switch OnlineのN64タイトルライブラリには、『マリオカート64』や『ゼルダの伝説 時のオカリナ』といった数々の名作が並ぶ中、誰もが待ち望んでいたはずの『スマブラ』だけが、これまで頑なにその姿を見せていませんでした。その最後のピースが、ついに埋まる時が来たのかもしれないのです。
楽観は禁物?過去の「匂わせ」と懐疑的なゲーマーたちの声

もちろん、この情報だけで配信が確定したと考えるのは早計です。懐疑的なゲーマーたちからは、冷静な指摘も相次いでいます。
まず、問題の画像が不鮮明であるため、他のゲームのパッケージアートである可能性も否定できません。具体的には、同じくN64の名作である『バンジョーとカズーイの大冒険』や『Mischief Makers(ミシルシメーカーズ)』のパッケージではないか、という声も上がっています。これらの作品もまた、カラフルなキャラクターが描かれており、ぼかしてしまえば似たような配色に見えなくもありません。
さらに、任天堂は過去にもプロモーションビデオで、後に実現しなかったクラシックタイトルの映像を使用した「前科」があります。ファンサービスの一環なのか、あるいは単なる開発素材の流用なのかは定かではありませんが、こうした「匂わせ」が必ずしも実現に結びつくわけではないことを、我々は経験上知っています。
また、一部では「なぜ今まで初代スマブラを配信しなかったのか」という疑問に対する一つの答えとして、「『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』(スマブラSP)の売上を食ってしまうのを避けるため」という説が根強くありました。しかし、2018年に発売された『スマブラSP』も、発売から7年が経過しようとしています。
eスポーツシーンも成熟し、一つの文化的アイコンとしての地位を確立した今、初代の配信がその売上に大きな影響を与えるとは考えにくくなっています。むしろ、シリーズの原点をプレイする機会を提供することで、改めて『スマブラSP』の進化を体感させ、IP全体の価値向上に繋がるという判断が下されても不思議ではないタイミングと言えるでしょう。
【考察】なぜ日本人は初代『スマブラ』に特別な感情を抱くのか

今回のリーク騒動がこれほどまでに大きな話題となる背景には、特に日本における初代『大乱闘スマッシュブラザーズ』への、ノスタルジーだけでは片付けられない特別な思い入れがあります。なぜ、数々の続編が登場し、システムが洗練された今なお、多くの日本人ゲーマーが「初代」に惹かれるのでしょうか。
1. 「任天堂オールスター」という事件性
1999年当時、マリオが、リンクが、ピカチュウが、同じ舞台で殴り合う──このコンセプトは、まさに「事件」でした。今でこそ当たり前となったクロスオーバー作品ですが、当時はそれぞれの世界観が確立されたキャラクターたちが一堂に会すること自体が衝撃的だったのです。
説明書を読まずとも、誰でも知っているキャラクターを動かせる安心感。そして、そのヒーローたちを自分の手で場外に「ふっとばす」という、少し背徳的な快感。この発明が、日本の子供たちの心を鷲掴みにしました。

2. 「放課後のたまり場」としての文化的役割
初代『スマブラ』は、何よりも「4人対戦」の楽しさを日本の家庭に持ち込みました。学校が終わると誰かの家に集まり、コントローラーを握りしめて日が暮れるまで遊ぶ。そこには、上手い下手は関係なく、アイテムの出現に一喜一憂し、ただひたすらに笑い声が響く空間がありました。
ゲームそのものの面白さはもちろんですが、『スマブラ』は友人関係を深めるためのコミュニケーションツール、いわば「放課後のデジタルな公園」としての役割を担っていたのです。この原体験を持つ世代にとって、初代『スマブラ』は単なるゲームではなく、青春の一ページそのものなのです。
3. シンプルさの中に潜む、唯一無二のゲーム性
後のシリーズと比較すると、初代のシステムは非常にシンプルです。空中回避は一度きり、シールドからの反撃手段も限られ、キャラクター数も12人と多くはありません。しかし、そのシンプルさが、独特のスピード感と爽快感を生み出していました。
特に、攻撃がヒットした際の硬直(ヒットストップ)が短いため、コンボが繋がりやすく、スピーディーな試合展開が楽しめます。この独特の操作感は「初代ならではの味」として、今なお一部のコアなファンによって研究され、愛され続けています。最新作『スマブラSP』が洗練された「完成形」であるならば、初代は荒削りながらも熱狂的なエネルギーを秘めた「原点」なのです。

まとめ
今回発見されたぼやけた画像が、本当にN64版『大乱闘スマッシュブラザーズ』のパッケージアートなのか、現時点では誰にも断言できません。単なるファンの希望的観測に終わる可能性も十分にあります。
しかし、この一件が示したのは、発売から四半世紀が過ぎた今でも、初代『スマブラ』がどれだけ多くのゲーマーの心に深く刻み込まれているかという事実です。もし、このリークが真実であり、Nintendo Switch Onlineで初代『スマブラ』が配信される日が来るとすれば、それは単なるレトロゲームの復刻以上の意味を持ちます。
それは、かつて友達の家でコントローラーを握りしめた「あの頃」の熱狂を追体験する機会であり、今の子供たちにとっては、シンプルだからこそ奥深い対戦ゲームの原点に触れる絶好の機会となるでしょう。
