iPhoneで撮影したポートレート写真。一見すると美しく背景がボケているようで、よく見ると髪の毛の輪郭や被写体と背景の境界線が不自然に切り取られ、どこか「作り物感」にガッカリした経験はありませんか?
それは、現在のiPhoneがソフトウェアの力、つまりAIによる画像処理で”擬似的”に背景をぼかしているからに他なりません。私たちはいつしか、そのデジタルな魔法に慣れ、同時にその限界にも気づき始めていました。
しかし、その長年の停滞が、ついに破られるかもしれません。2026年の登場が噂される「iPhone 18 Pro」。その心臓部には、かつてライバルであるSamsungがコストと技術の壁に阻まれ断念した「可変絞り」技術が搭載されるというのです。
これは単なるカメラのスペックアップではありません。Appleがソフトウェアによるごまかしから脱却し、カメラ本来の物理的な力で写真を撮るという、”写真”そのものへの原点回帰を宣言する狼煙です。この記事では、なぜAppleが今、この「過去の技術」に挑むのか、そしてそれが私たちの写真体験をどのように根底から変えてしまうのか、その深層に迫ります。

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カメラの「瞳」を手に入れるということ
まず「可変絞り」とは一体何なのでしょうか。難しく考える必要はありません。人間の「瞳」を想像してみてください。私たちは暗い場所では瞳孔を大きく開いてより多くの光を取り込もうとし、逆に眩しい場所では瞳孔を絞って光の量を制限します。カメラにおける「絞り」も全く同じ役割を果たします。
iPhone 14 Pro以降、Proモデルのメインカメラの絞りは「ƒ/1.78」という値で固定されています。これは、カメラの瞳が常に一定の大きさで開きっぱなしになっている状態と同じです。そのため、明るすぎる場所での白飛びや、微妙な光のコントロールを、すべてソフトウェアによる電子的な調整に頼らざるを得ませんでした。
iPhone 18 Proに搭載が噂される可変絞りシステムは、この瞳を物理的に開閉させる機構をカメラに組み込むことを意味します。これにより、レンズが取り込む光の量を機械的に、そして自在にコントロールできるようになるのです。これは、iPhoneカメラ史における革命的な一歩と言えるでしょう。

さようなら「不自然なボケ」。本物の奥行きがもたらす感動
では、可変絞りがもたらす最も大きな変化は何でしょうか。それは、ポートレートモードの概念を覆す、物理的で自然な背景ぼかしの実現です。
一眼レフカメラで撮影された写真がなぜあれほど魅力的かというと、その美しい「ボケ」にあります。絞りを開く(F値を小さくする)ことで、ピントを合わせた被写体だけをシャープに写し、その前後を滑らかにぼかす。この「被写界深度のコントロール」こそが、写真に立体感と奥行きを与える本質なのです。
iPhone 18 Proは、この一眼レフ特有の表現力を、ソフトウェアの助けを借りずに実現できる可能性を秘めています。もう、AIが被写体の輪郭を認識しきれずに起こる、不自然な切り抜きに悩まされることはありません。被写体が背景から自然に浮かび上がる、あの息をのむような美しいボケ味を、誰でも手軽に、そして”本物”として手に入れられる時代が訪れるのです。

Appleの挑戦と、Samsungの「失敗」が教えること
しかし、この技術は決して新しいものではありません。かつてSamsungが2018年のGalaxy S9やS10で同様の試みを行いましたが、結局は後継機で採用を見送っています。その理由は「コストの増加」と「デバイスの厚み」でした。可動する機械部品を極小のカメラモジュールに組み込むことは、技術的にもコスト的にも極めて困難だったのです。
ではなぜ、Appleはライバルが一度は匙を投げた技術に、今になって挑戦するのでしょうか。そこには、成熟しきったスマートフォン市場で、他社との絶対的な差別化を図りたいという強い意志が見え隠れします。近年、Appleは動画性能(シネマティックモードなど)に注力してきましたが、写真の根源的なクオリティにおいては、大きな進化が見られませんでした。
Appleは、サプライヤーであるLGイノテックやフォックスコンらと共に、この技術をiPhoneに収まるほど小型化し、コストを抑えて量産する道筋を見出したのでしょう。
これは、単に他社の後追いをせず、技術が真に成熟し、ユーザー体験を劇的に向上させられると判断した瞬間に、満を持して投入するというAppleらしい戦略の現れです。Samsungの「失敗」は、Appleにとって乗り越えるべき課題を明確にする、最高の教科書だったのかもしれません。

まとめ
iPhone 18 Proに可変絞りが搭載されるという噂は、単なる機能追加のニュースに留まりません。それは、スマートフォン写真の進化の方向性が、AIによるデジタル処理の追求から、カメラ本来の光学性能を高めるという物理的な本質へと回帰することを示す、大きな転換点です。
もちろん、過去の事例が示すように、この挑戦には技術的なハードルやコストというリスクが伴います。しかし、もしAppleがこの難題を克服したならば、私たちが手にするのは、もはや「スマホのカメラ」という枠には収まらない、全く新しい写真撮影体験となるでしょう。
全然関係ないけど、”iPhone18 Camera”で検索すると、集合体恐怖症にはキツイ画像が出てくるから注意やで。

