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密閉型ヘッドホンの宿命とも言える音の「こもり」や閉塞感。これを技術と素材の力でねじ伏せる意欲作が登場した。finalが発表した「DX4000 CL」は、密閉型の遮音性を維持しつつ、開放型のような広大な音場再現に挑んだハイエンドモデルだ。
単なる新製品発表という枠を超え、オーディオファンの長年の悩みに対する一つの回答となり得る存在感を放っている。
最大の特徴は、伝統と先端技術を融合させた「和紙複合振動板」の採用だ。スピーカーの世界では古くから紙(パルプ)が理想的な振動板素材として知られているが、今回は和紙にカーボンを配合することで強度を確保。さらにエッジ部分に溝を設けない「フリーエッジ構造」を取り入れ、極めて歪みの少ないクリアな発音を追求している。

しかし、素材だけでは「開放感」は作れない。finalが今回打った手は、物理的な空間設計への徹底的なアプローチだ。
まず目を引くのが厚さ30mmという極厚の低反発イヤーパッド。ドライバーと耳との距離を物理的に広げることで、音場形成に必要な空間を確保している。
さらにハウジング内部には「リアディフューザー・アレイ構造」を搭載。内部に平行面を作らず、リブ(拡散板)で音を散らすことで、密閉型特有の不要な共振を殺す。つまり、音響工学的な工夫で「壁の存在」を消そうとしているわけだ。
製品の寿命に対する思想も、昨今の「使い捨て」になりがちなガジェットとは一線を画す。接着剤の使用を極限まで減らし、Oリングと精密ネジによる組み立て構造を採用。修理やメンテナンスを容易にすることで、長期間の使用を前提とした設計になっている。

ヘッドバンド部の超々ジュラルミンや、標準で付属する4.4mmバランス接続対応のシルバーコートケーブルも、目の肥えたユーザーを納得させるスペックだ。
市場を見渡せば、高性能なノイズキャンセリングヘッドホンが全盛だが、DX4000 CLはあえて「ピュアオーディオとしての密閉型」の極北を目指している。家族がいるリビングや静寂を求められる環境でも、開放型のような抜けの良いサウンドを楽しみたい。そんなわがままな需要に対し、デジタル処理ではなくアナログな音響設計で応えた点に、finalというブランドの矜持が見える。
同社が積み上げてきた技術の結晶ともいえる本作。実際の聴感でどこまで「壁」を感じさせない仕上がりになっているか、発売後の評価が非常に楽しみな一台だ。
Source:Final

