あの独特なリング型ドライバーから数年、ソニーがまたやってくれた。ネット上を駆け巡った新型「LinkBuds Clip」のリーク画像を見た瞬間、私は思わず愛用のヘッドホンを外して画面を二度見した。
耳の穴を塞がない「オープンイヤー型」というジャンルが市民権を得て久しい。しかし、今回のソニーの回答は、私たちが想像していたものとは少し違っていたようだ。
イヤホンというより、もはや耳の一部。あるいは洗練されたイヤーカフ。そんな言葉が似合う新形状が、1月21日の正式発表を前に、ほぼその姿を現している。
Source:The Walkman Blog
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衝撃のデザインと耳を解放するクリップ型



今回のリークで最も話題を呼んでいるのが、シリコン製のイヤーチップを完全に排除した「クリップ型」への転換だ。ファーウェイのFreeClipやSoundcoreのAeroClipを彷彿とさせる、耳の縁を挟み込むスタイルを採用している。
これまで「LinkBuds」といえば、ドーナツ状の穴が開いた不思議なリング型ドライバーが代名詞だった。しかし、あの形状は耳の形を選ぶという弱点があった。私自身、長時間つけていると少し耳の軟骨が痛むことがあり、結局クローゼットの奥へ……という苦い経験がある。
今回のClip型への移行は、そんな「装着の個人差」という長年の課題に対する、ソニーなりの最終回答なのかもしれない。挟み込む力、いわゆるクランプ力で固定するこの方式なら、どんな耳の形でも安定したリスニング体験が期待できるからだ。
スペックから見えるソニーの執念

単なるデザイン変更で終わらないのが、技術屋としてのソニーの矜持だろう。リークされたスペックリストには、この形状で本当に可能なのかと疑いたくなるような機能が並んでいる。
| 項目 | スペック(リーク情報) |
| 型番 | WF-LC900 |
| デザイン | 耳挟み型(クリップスタイル) |
| 連続再生 | 最大9時間(ケース込みで最大37時間) |
| 音響技術 | DSEE、360 Reality Audio、10バンドEQ |
| 通話性能 | AIノイズキャンセリング、ボイスピックアップ |
| 防滴性能 | IPX4相当 |
| 価格 | 229.99ドル(約3万4千円〜) |
驚くべきは、オープンデザインでありながら「AIノイズキャンセリング」の文字がある点だ。物理的に耳を塞がないため、静寂を作るためのノイズキャンセリングではなく、おそらく自分の声をクリアに届ける、あるいは環境音をスマートに制御する適応型サウンドコントロールに重きを置いているのだろう。
これだけの機能を詰め込みながら、単体で9時間のバッテリー持ちを実現している点は見逃せない。この小型軽量なボディのどこに、それだけのスタミナが隠されているのか。かつてのシステム開発者としての視点で見れば、電力管理の最適化には並々ならぬ執念を感じる。
なぜ今オープン型に230ドルも払うのか

ここで一つ、多くの人が抱くであろう疑問がある。
「ただの耳を塞がないイヤホンに、3万円以上も出す価値があるのか?」
正直に言おう。安さを求めるなら、1万円以下の選択肢はいくらでもある。しかし、ソニーが狙っているのはそこではない。彼らが売ろうとしているのは、音楽を聴く道具ではなく「音がある生活」そのもののインフラなのだ。
マルチポイント接続でPCとスマホをシームレスに行き来し、家事や仕事をしながら、まるで映画のBGMのように音楽が流れる。耳の穴を塞がないから、家族の呼びかけも、宅配便のインターホンも逃さない。
この「Clip」は、一度つけたらお風呂以外は外さない。そんな「身体の一部」としての体験に、私たちは230ドルという対価を支払うことになる。それはもはやガジェットの購入ではなく、生活のアップグレードに近い。
誰もが予測しなかった意外な落とし穴
ただし、個人的に一つだけ不安がある。それは「紛失のリスク」だ。クリップ型は非常に快適だが、あまりにも軽すぎて、外れたことに気づかない可能性がある。なんなら、会社に着いたのに外すの忘れてそのまま仕事を始めたぐらいだ。
リークされた画像を見ると、非常に滑らかな曲線を描いている。マスクの着脱時や、ふとした瞬間にポロッと落ちてしまわないか。これまでのイヤホン以上に、私たちは「自分の耳に何かがついている」という感覚を研ぎ澄まさなければならないかもしれない。
高価なイヤーカフを片方だけ無くした時の絶望感。それを3万円の精密機器で味わうことにならないよう、ソニーにはぜひ強力な「探す」機能の連携を期待したいところだ。

