京都新聞の朝刊に掲載された古川社長のインタビュー。その文字を追う私の指は、かすかに震えていた。 次世代機の足音が聞こえるなか、誰もが一番聞きたかった、そして一番聞きたくなかった「あの質問」がついに投げかけられたからだ。
「メモリ価格の高騰は、新型機の価格に影響するのか?」
期待と不安が入り混じるなかで語られたその回答は、私たちユーザーにとって、決して他人事ではない重みを持っていた。 かつてシステム開発の現場で、部品一つひとつの調達に頭を抱えていた私から見ても、今回の状況は異常だと言わざるを得ない。
Source:Nintendo Patents Watch Bluesky account
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AIブームの裏で進む深刻な部品争奪戦

現在、メモリ市場は空前の高騰を見せている。 その元凶は、世界中を席巻しているAIデータセンターの需要だ。 高性能なサーバーがメモリを吸い込み続け、ゲーミングPCの価格を押し上げている。
この波は、当然ながらゲーム機の製造コストにも直撃している。 任天堂が採用すると目されているLPDDR5Xなどのメモリは、もはや贅沢品になりつつあるのだ。
古川社長は、中長期的な計画に基づき部品の備蓄を進めていると説明した。 短期的な収益への影響はないと強調しつつも、AIデータセンターの動向を注視するという言葉からは、現場の張り詰めた緊張感が伝わってくる。
部品価格がハードウェアに与える影響
| 項目 | 現状の影響 | ユーザーへのリスク |
| メモリ(RAM) | AI需要により価格高騰が継続 | 本体価格の押し上げ要因 |
| 物流・輸送コスト | エネルギー価格に連動 | 発売後の実売価格への転嫁 |
| 為替・関税 | 各国の政策により変動 | 地域ごとの価格差の拡大 |
元開発者の視点で言えば、任天堂のような巨大メーカーが「備蓄」という言葉をあえて使うときは、相当な危機感を持っている証拠だ。
彼らは数百万台、数千万台という単位で製造を行う。 わずか数ドルの部品値上がりが、数百億円の損失に直結する世界なのだ。
任天堂が守ろうとしている「1ドル」の攻防

インタビューの中で最も注目すべきは、社長が値上げの可能性を否定しなかった点にある。
「仮定の話にはコメントできない」という定型句の裏に、私は拭いきれない不安を感じてしまった。
実は、任天堂はすでに「関税」という目に見えない壁にもぶつかっている。 初代Switchやその周辺機器において、追加関税が同社の財務見通しに影響を与えたことを認めているのだ。
彼らは慈善事業ではなく、営利企業である。 一方で、古川社長は「できるだけ多くの人に手に取ってほしい」という願いも口にしている。 この「利益」と「普及」の板挟みこそが、今まさに京都の司令塔で繰り広げられている苦悩の正体なのだ。
なぜ在庫があっても不安は消えないのか

多くのゲーマーは、任天堂が部品を確保しているという言葉に安堵している。 しかし、私はあえてここで少し意地悪な見方を提示したい。
このメモリ危機は2028年まで続く可能性があると言われている。 仮に発売時の価格を抑えられたとしても、発売から2年後、3年後に「サイレント値上げ」や「コストダウン版への移行」が起こるリスクはゼロではない。
- 長期契約による価格固定の限界
- リージョンフリー機による逆輸入問題
- 年末商戦における販売実績の鈍化
今の私たちは、かつてないほど「世界経済の波」に晒されながらゲームをしている。 以前なら、ゲーム機の価格は数年も経てば下がるのが当たり前だった。 しかし、2026年の今、その常識は完全に崩れ去ったと考えたほうがいいだろう。




