画面の向こう側に吸い込まれるような感覚を、最後に味わったのはいつだろうか。
新作ゲームのトレイラーを見るたびに、私たちは「もっとこの世界に浸りたい」と願う。
だが、その願いが図らずも「禁じ手」によって叶えられてしまったとしたら。
先日、Redditに投稿された一本の動画が、世界中のゲーマーの心拍数を跳ね上げた。
開発元の想定を無視し、本来あり得ない視点で描き出されたその光景は、あまりにも美しく、そして残酷なほどに恐ろしかったのだ。
FIRST PERSON in ARC Raiders 😮
— ARC Raiders Alerts (@ArcRaiderAlerts) January 10, 2026
A Reddit user managed to force FPP camera using dev console commands. Even without dedicated animations, seeing the world from this perspective looks incredibly immersive. pic.twitter.com/mJB6sHA57I
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Redditを震撼させた一本の動画

事の発端は、Redditのu/Short_Satisfaction_9というユーザーが投稿した3分間のプレイ動画だ。
本来、Embark Studiosが手掛ける「Arc Raiders」は、キャラクターの背中越しに世界を見る三人称視点(TPS)専用の脱出アドベンチャーである。
しかし、このプレイヤーはゲーム内の隠されたコンソールコマンドを駆使し、カメラをキャラクターの瞳の位置へと移動させた。
つまり、公式には存在しない「一人称視点(FPS)」を強制的に作り出したのである。
動画に映し出されていたのは、これまでのArc Raidersとは全く別物の、血の通った「戦場」だった。
視界を覆う巨大な機械の影、土埃にまみれた銃器、そしてすぐ隣で爆発する熱量。
その生々しさに、多くのユーザーが言葉を失った。
一人称視点がもたらした恐怖の正体

動画を視聴した人々が共通して口にしたのは「シュール」で「恐ろしい」という感想だ。
TPSでは「画面内のキャラが襲われている」という客観的な恐怖で済んでいたものが、FPSになった途端、それは「自分が殺される」という生存本能に直結する恐怖へと変貌する。
もちろん、無理やり視点を変えた代償として、腕のグラフィックが消失したり、自分の顔の内側が映り込んだりといった不具合は散見される。
しかし、そんな細かなバグなど気にならないほどの没入感がそこにはあった。
この視点変更によって、ゲームの空気感は劇的に向上した。霧の立ち込める廃墟を探索する緊張感は、FPS化によって何倍にも膨れ上がっている。
これこそが、私たちが心のどこかで求めていた「未知の体験」だったのかもしれない。
メリットとデメリットの冷徹な比較

しかし、この「禁断の視点」は、単なる上位互換ではない。
冷静なプロの視点で見れば、なぜ開発元がTPSにこだわったのか、その理由も透けて見える。
一人称視点での体験を整理すると、以下のようになる。
| 評価項目 | 一人称視点(FPS)の影響 | プレイヤーへの影響 |
| 没入感 | 圧倒的に向上。世界の一部になる感覚。 | 恐怖と興奮が最大化される。 |
| 戦術的視野 | 左右や背後の情報が遮断される。 | 敵に気づくのが遅れ、生存率が下がる。 |
| 動作の安定性 | モデルの突き抜けなど視覚的バグが発生。 | プレイに支障はないが、没入感が削がれる。 |
| 公平性 | 他のTPSプレイヤーに対して圧倒的に不利。 | 競技性の高いゲームでは致命的な弱点。 |
この表を見れば分かる通り、FPS視点は「体験」としては最高だが、「攻略」としては最悪なのだ。
広大なフィールドで周囲を警戒し、物陰から様子を伺うことが重要な脱出ゲームにおいて、視野を自ら狭める行為は自殺志願に等しい。
なぜ開発元Embarkは即座に蓋をしたのか

このニュースを聞いたとき、私は少しだけ胸が躍った。
公式が「いずれ対応するかも」と含みを持たせてくれることを期待したからだ。
しかし、現実は非情だった。
Embark Studiosは、この投稿から間もなくホットフィックスを配信した。
この「抜け穴」を塞ぎ、関連するコンソールコマンドへのアクセスを完全にブロックしたのである。
開発側の対応は、驚くほど早かった。元システム開発者の端くれとして言わせてもらえば、この迅速な対応は「バランス崩壊への恐怖」の裏返しだ。
もしFPS視点を放置すれば、プレイヤーの間で「どちらの視点が有利か」という不毛な議論が始まり、さらには視点を自由に切り替えるチートツールの温床になりかねない。
彼らは、自分たちが作り上げた「TPSとしてのArc Raiders」というブランドを、何よりも守りたかったのだろう。
その徹底した姿勢には、ある種の潔ささえ感じる…

