最近、家電量販店のスマホコーナーに行って、値札を見るたびにため息をついていませんか。
「なんで電話とメールとSNSをするだけの板が、PC並みの値段なんだろう」と。
正直なところ、私もその感覚には同意せざるを得ません。
そんな「ハイエンドスマホ高すぎ疲れ」を感じている私たちに、中国のVivoからとんでもない回答が投げかけられました。それが、今回紹介する「Vivo S50」です。
価格は約6万円台(2,999元〜)。なのに、中身は15万円クラスのフラッグシップ機と殴り合えるスペックを持っている。これ、単なる「安売り」ではありません。マーケティングの視点で見ると、Vivoは明らかに「ブランド料」ではなく「実用性」に全振りすることで、市場の空き地を強引に奪いに来ています。
この記事では、カタログスペックをなぞるだけでは見えてこない「実際に使ったらどう感じるのか」「安さの裏にある妥協点はどこか」という、皆さんが一番気になる不安や疑問に、少しマニアックな視点も交えつつ答えていきます。
Source:Vivo

「安いから画面が暗い」は過去の話。5,000nitの衝撃とは
まず、この機種で最も常識外れなのがディスプレイです。ピーク輝度5,000nit。この数字、ちょっと異常です。現在の一般的なハイエンド機でも2,000〜3,000nit程度。つまり、Vivo S50はその倍近く明るいということになります。
「そんなに明るくてどうするの?」と思うかもしれません。でも、これは「眩しくするため」ではなく、「どんな環境でも変わらない体験」を提供するためのUI/UX設計思想に基づいています。
真夏の直射日光下で地図アプリを開いたとき、自分の顔が反射して画面が見えず、手で日陰を作った経験はありませんか? 5,000nitがあれば、その動作は不要になります。
屋内と同じように、鮮明に画面が見える。これはスペック自慢ではなく、屋外での視認性という根本的な課題解決です。
さらに、4,320HzのPWM調光も見逃せません。夜、ベッドでスマホをいじっていて目が疲れるのは、実は画面が高速で点滅しているからです。この数値が高ければ高いほど、目への負担は減ります。
安価なモデルでここをケチらないのは、Vivoが「健康」をUXの一部と捉えている証拠でしょう。

バッテリー容量6,500mAhなのに薄型?物理法則への挑戦
次に驚くのがバッテリーです。6,500mAhと言えば、一昔前ならレンガのように分厚いタフネススマホの容量でした。しかし、Vivo S50は厚さ7.59mm。iPhone 16シリーズよりも薄いのです。
どうやって詰め込んだのか。技術的な推測になりますが、おそらく最新のシリコンカーボン負極材技術を採用し、エネルギー密度を極限まで高めているのでしょう。
ユーザーとしてのメリットは単純明快です。「モバイルバッテリーを持ち歩く」という呪縛からの解放です。朝家を出て、動画を見て、ゲームをして、夜飲んで帰ってきてもまだ30%残っている。この「安心感」こそが、最大の機能かもしれません。
ただし、注意点が一つ。ワイヤレス充電には非対応です。ここがコストカットのポイントでしょう。「置くだけ充電」に慣れきった生活をしている人にとっては、ケーブルを挿す手間が戻ってくることになります。
ただ、90Wの超急速充電があるので、朝の支度をしている15分で1日分充電できると考えれば、トレードオフとしては悪くありません。

カメラ構成に見る「選択と集中」の巧みさ
「安いスマホはカメラが残念」というのが定説ですが、Vivo S50はその定説を半分肯定し、半分否定しています。
特筆すべきは「ペリスコープ(潜望鏡)型」の望遠レンズを搭載している点です。通常、この価格帯では真っ先に削られるのが望遠レンズで、代わりに無意味な200万画素のマクロレンズなどが埋め合わせに付けられがちです。
しかしVivoは、あえてコストのかかるペリスコープ(3倍光学ズーム相当)を載せてきました。なぜか。それは「ポートレート撮影」のためだと分析できます。遠くの景色を撮るだけでなく、少し離れた位置から人物を撮ることで、歪みのないプロっぽい写真が撮れる。SNS世代が最も求めている機能を理解している構成です。
一方で、超広角カメラについては詳細なスペックが伏せられています。おそらく、ここはコスト削減の対象でしょう。解像度やセンサーサイズは最低限のものかもしれません。
「壮大な風景写真はたまにしか撮らないけれど、料理や友達の写真は綺麗に撮りたい」というユーザーにとっては、非常に理にかなった「割り切り」です。

Snapdragon 8s Gen 3は「型落ち」なのか
プロセッサには「Snapdragon 8s Gen 3」が採用されています。「8 Gen 3」に「s」がついているこのチップ、名前がややこしいですが、簡単に言えば「最高級チップの弟分」です。
ベンチマーク至上主義の人から見れば「最強ではない」となるでしょう。しかし、実利用の観点から言えば、この選択は最適解です。最新の重い3Dゲームも最高設定でなければサクサク動きますし、日常のアプリ操作で引っかかりを感じることはまずありません。なにせ、Antutuベンチマークで150万近くはでているので十分ですよね。
むしろ、最上位チップよりも発熱が抑えられている傾向があり、薄型ボディとの相性は抜群です。車で例えるなら、F1のエンジンではなく、高級スポーツカーのエンジンを積んでいるようなもの。公道を走る(日常使いする)分には、十分すぎるほど速く、かつ扱いやすいのです。

日本での利用に関する「不安」への回答
さて、ここまで読んで「欲しい!」と思った方が直面する最大の壁。それは「日本で使えるのか?」という点です。
現時点では中国国内での発表のみ。グローバル版、ましてや日本版が出るかは未定です。もし輸入して使う場合、技適の問題や、対応周波数帯(バンド)の問題が出てきます。
特にドコモやauのプラチナバンドに対応していない可能性があり、山間部やビル陰で繋がりにくくなるリスクは否定できません。
また、中国版のOS(OriginOS)は非常に高機能ですが、通知が来ない設定がデフォルトになっていたり、日本語化が不完全だったりと、初心者にはハードルが高い「癖」があります。ここは「ガジェット好きの遊び場」と割り切れる人向けと言えるでしょう。

