「Wi-Fiルーターをどこに置くか」という悩みは、現代のインテリアにおける最大のバグかもしれません。
電波を良くするためには部屋の中心や目立つ場所に置きたいけれど、あの無骨な箱と突き出たアンテナはどうしても部屋の雰囲気を壊してしまいます。棚の裏に隠しては電波が悪くなり、また引っ張り出してはため息をつく。そんな「ルーター隠し」のイタチごっこに、ついに終止符が打たれるかもしれません。
最近、テック界隈だけでなくインテリア好きの間でも話題になっているのが、ファーウェイから発表された新型ルーター「Huawei X3 Pro」です。
「これ本当にルーター?」と二度見してしまうようなその姿は、まさにアート作品。今回は、この衝撃的なデバイスが私たちの生活空間と通信環境をどう変えてくれるのか、Wi-Fi 7のスペックと合わせて深掘りしていきます。
Source:ファーウェイ
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アンテナはどこへ消えた?「山」を飾るという新発想
まず目に入るのは、その異質なデザインです。これまでの高性能ルーターといえば、まるで宇宙船か要塞のようにアンテナが四方八方に突き出ているのが常識でした。強そうな見た目が、通信速度の速さを象徴していた時代があったのです。
しかし、Huawei X3 Proは違います。半透明の円錐形ガラスの中に、なんと「山頂の模型」が埋め込まれているのです。
一見すると美術館のミュージアムショップに置いてあるオブジェのようですが、実はこの美しい山型のデザインの中に、無骨なアンテナが巧みに隠されています。機能美という言葉がありますが、これは機能を完全にデザインの中に溶け込ませるという、ある種のマジックに近いアプローチです。
さらにニクイのが照明機能です。内蔵ライトによって寒色系から暖色系へと光の色を調整でき、部屋のムードに合わせて「山」の表情を変えることができます。競合機種であるNetgearのOrbi 770(約10万円超えの高級機)も光りますが、あちらは接続状況を知らせるインジケーターとしての役割が主です。
対してX3 Proは、純粋に空間を演出するための光。この割り切りこそが、家電をインテリアへと昇華させる鍵なのかもしれません。

Wi-Fi 7の実力と「壁」を超える技術
見た目だけで終わらないのが、このルーターの面白いところです。中身は最新規格の「Wi-Fi 7」に対応しており、スペックもガチ勢仕様です。
- 爆速の通信速度
6GHz帯で理論値最大3570Mbpsを叩き出します。4K動画のストリーミングも、重たいゲームのダウンロードも、ストレスフリーでこなせるレベルです。 - 有線接続も抜かりなし
3つのギガビットイーサネットポートのうち、2つは2.5Gbpsに対応。PCやNASを有線で繋ぎたい派の需要もしっかりカバーしています。
そして個人的に「おっ」と思ったのが、メッシュネットワークの拡張方法です。通常、Wi-Fiのエリアを広げるサテライト(中継機)は無線で親機と繋がりますが、X3 Proは「PowerLAN」をサポートしています。
PowerLANとは、家庭内の電気配線(コンセント)を使って通信信号を送る技術です。これの何が凄いかと言うと、Wi-Fiの電波が届きにくい鉄筋コンクリートのマンションや、部屋が離れている広い家でも、コンセントさえあれば安定したネットワークが構築できる点です。
「無線がダメなら電線を使えばいいじゃない」という、一周回ってアナログな解決策を最新機種に組み込んでくるあたりに、通信インフラを知り尽くしたメーカーのしたたかさを感じます。

価格設定と日本での展開は?
気になるお値段ですが、中国での販売価格は本体が1,299元(約184ドル)、サテライトとのセットで1,999元(約282ドル)と発表されています。
正直、このデザインとスペックでこの価格は「バグってる」と言いたくなるほどの高コスパです。前述したNetgearのOrbi 770がAmazonで699ドル(約10万円以上)することを考えると、Huawei X3 Proの価格設定は破壊的と言えます。
ただ、現時点ではグローバル展開、特に日本での発売については明言されていません。もし日本で発売されれば、「ルーターを隠すためにカゴを買う」という無駄な出費と労力から、多くの人が解放されることになるでしょう。

