またか…またワイヤレスヘッドホンの新製品ニュースか。どうせ「業界最高クラスのノイズキャンセリング!」とか「AIが音場を最適化!」とか、そういう“全部盛り”のハイエンドモデルの話だろう?
そう思ってニュースを読み始めた私の目に飛び込んできたのは、意外な言葉でした。
「ANC(アクティブノイズキャンセリング)非搭載」
え、2025年にもなって、ANCなし? しかもJBLが?
そして、その直後に続くスペックを見て、違う意味で驚愕…
「最大76時間バッテリー」
「Bluetooth 6.0 / LE Audio対応」
なんだこれは。JBL、本気か、いや正気か?と…
これは、昨今の「全部盛り」競争に疲れたユーザー、そして「本当に必要な機能」だけを追い求める賢明なユーザーに突き刺さる、とんでもない戦略的モデルかもしれません。
JBLジャパンから発表された「Tune 730BT」。
このヘッドホン、ノイキャンはいらない。でも、バッテリー持ちと音質は絶対に妥協したくない。そんな“わがまま”な私(たち)の、最終回答になるかもしれません。
Source:JBL
記事の内容を音声で聞きたい方はこちら↓

とにかく、まずはスペックを見てほしい
百聞は一見に如かず。まずはJBL Tune 730BTがどんなヘッドホンなのか、その仕様を見てみましょう。
| 製品名 | JBL Tune 730BT(チューン730ビーティ) |
| タイプ | ワイヤレスオーバーイヤーヘッドホン |
| カラー | 全3色(ブラック、ホワイト、ブルー) |
| Bluetooth | バージョン 6.0( LE Audio対応) |
| 連続再生時間 | 約76時間 ※急速充電対応(5分の充電で約5時間再生) |
| 対応プロファイル | A2DP V1.4, AVRCP V1.6.3, HFP V1.8 |
| 使用ユニット | 40mm径ダイナミックドライバー |
| 対応コーデック | SBC, AAC, LC3 |
| 周波数特性 | 20Hz – 20kHz (※原文ママ。通常コーデックの記載だが、ここではそのまま) |
| 重量 | 218g(軽量) |
| 発売日 | 2025年11月13日(木) |
| 価格 | オープン価格(JBLオンラインストア販売価格 13,200円 税込) |
注目点①:ANCを捨てて手に入れた「76時間」という異次元

スペック表を見て、誰もが二度見するのが「最大76時間」という再生時間でしょう。
76時間。
これがどれだけ異常な数値か。
例えば、平日に毎日往復2時間通勤・通学で使い、土日に3時間ずつ音楽を聴いたとします。
(2時間 x 5日) + (3時間 x 2日) = 合計 16時間
これでも、1ヶ月(4週間)以上、充電なしで使えてしまう計算です。(16時間 x 4週 = 64時間)
最近のANC搭載モデルは、ノイキャンをONにすると20時間~30時間が相場です。確かに十分な長さですが、「あ、昨日充電し忘れた」という絶望を誰もが一度は経験しているはず。
Tune 730BTは、その「充電の呪縛」から私たちをほぼ完全に解放してくれます。しかも、万が一バッテリーが切れても「5分の充電で5時間再生」という急速充電対応。もう隙がありません。
なぜこれが実現できたのか?
答えは単純。最も電力を消費する機能の一つである「ANCを搭載しなかった」こと。そして、次に解説する「新規格への対応」です。
注目点②:新時代の足音。「Bluetooth 6.0」と「LE Audio (LC3)」

「Bluetooth 6.0」と「LE Audio」。
この言葉を見て「おっ」と思った方は、かなりのガジェット好きですね。
これは、今後のワイヤレスオーディオの常識を塗り替える可能性を秘めた新規格です。
LE Audioとは?
すごく簡単に言えば、「従来のBluetooth(クラシックオーディオ)よりも、少ない電力で、高音質・低遅延を実現できる新しい規格」です。
Tune 730BTは、このLE Audioで使われる新しいコーデック「LC3」に対応しています。
LC3コーデックのメリット:
- 高音質: 従来の標準コーデック「SBC」と比べて、同じデータ量でも格段に音質が良いとされています。
- 低消費電力: これが最大のキモ。SBCやAACより圧倒的に電力効率が良く、長時間のバッテリー駆動に直結します。
つまり、Tune 730BTの「76時間」というスタミナは、ANC非搭載という「引き算」と、LE Audio対応という「足し算」のハイブリッドによって達成された、極めて合理的な結果なのです。
これが13,200円のモデルに搭載されてきたという事実。JBL、本気で普及させる気です。

注目点③:「ANCなし」はデメリットか?
「でも、ノイキャンなしはちょっと…」
そう思う気持ちも分かります。カフェや電車での騒音をカットしてくれるANCは、一度体験すると戻れない魅力があります。
しかし、冷静になって考えてみましょう。
- ANCの圧迫感が苦手な人は意外と多い。
- 外の音を完全に遮断するのが怖い、不便な場面もある(散歩中、家事中など)。
- そもそも、ANCをONにすると音質が微妙に変化する機種もある。
Tune 730BTは、ANCこそありませんが、耳全体を覆う「オーバーイヤー」デザインです。
情報によれば、イヤーパッドも21mm(0.83インチ)と十分な厚みがあり、これによる物理的な遮音性(パッシブノイズキャンセリング)はかなり期待できます。
音楽を流してしまえば、よほどの騒音でない限り、周囲のノイズは気にならなくなるレベルでしょう。
むしろ、ANC機能を搭載しないことでコストを抑え、その分をドライバー(40mm径)やバッテリー、そしてLE Audio対応に全振りした。これは「デメリット」ではなく、JBLの明確な「選択と集中」の結果であり、むしろ英断と呼ぶべきではないでしょうか。
まとめ
ガジェット市場は、常に「全部盛り」のフラッグシップモデルに注目が集まりがちです。しかし、本当に多くの人が求めているのは、そういう「最強」の製品でしょうか?
私がJBL Tune 730BTのニュースリリースを読んで強く感じたのは、「これでいい」ではなく**「これがいい」**という積極的な選択肢としての魅力でした。
「ノイキャンはいらない。室内でガンガン使うから、とにかくバッテリーが持って、軽くて、音もJBLらしい迫力があれば最高」
そんな、市場の“サイレントマジョリティ”の声なき声に、JBLが真正面から応えた製品。それがTune 730BTの本質のように思えます。
しかも、13,200円。
この価格で、JBLのPure Bassサウンドと、76時間の圧倒的自由、そしてLE Audioという未来の規格まで手に入る。ANC搭載機が3万、4万と高騰していく中で、JBLが提示した「1万円台の最適解」。
これは、2025年冬のヘッドホン市場で、とんでもないダークホースになる!?わけありませんよね…ANCありのJBLヘッドホンの方が

