PlayStation 5を象徴するイノベーション、それは間違いなく「DualSense(デュアルセンス)」コントローラーがもたらす、あの繊細かつリアルな「ハプティックフィードバック(高度な触覚効果)」でしょう。雨粒が当たる感覚、地面を歩く質感まで伝えるこの技術は、多くのゲーマーを魅了しました。
しかし、PCゲーマーにとって、このDualSenseには長年の「ジレンマ」が存在しました。
USB-Cケーブルで「有線接続」すれば、多くの対応ゲームでこの素晴らしい触覚フィードバックを楽しめます。しかし、ケーブルの煩わしさから解放されようと「Bluetooth(無線)」で接続した途端、あの繊細な振動は失われ、ただの平凡なコントローラーになってしまうのです。
この「快適さ」と「没入感」の二択を迫られてきたPCゲーマーに、今、とんでもない朗報が舞い込みました。サードパーティ製のアプリ「DSX」が、ついにBluetooth経由でこの高度な触覚効果を実現する方法を発見したというのです。
Source:DSX YouTube
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DualSenseのジレンマ:PCゲーマーが抱える「有線」の呪縛
PCでゲームをプレイする際、多くのユーザーは快適なワイヤレス環境を好みます。しかし、DualSenseの真価を味わいたいと思った瞬間、デスクの上にUSBケーブルを引き回さなければなりませんでした。
なぜこんなことが起きるのでしょうか?
PS5本体は、あのリアルな触覚体験を生み出すために、コントローラーに対して「音声データ」をワイヤレスで送信しています。しかし、PCの標準的なBluetooth接続は、その特殊な信号の送受信に対応していません。
結果として、Bluetooth接続時のDualSenseは、PS5で体験できるような繊細な振動とは程遠い、大味なものしか得られませんでした。
この問題に対し、多くのPCゲーマーは「Xboxコントローラー」を選ぶという現実的な解決策採ってきました。XboxコントローラーはPCゲームとの親和性が非常に高く、ワイヤレスであってもすべての機能が問題なくサポートされているからです。

救世主「DSX」とは? Bluetoothで触覚を実現する「驚きの仕組み」
ソニーが公式にWindows用のワイヤレスドライバーをリリースしてくれれば万事解決なのですが、残念ながらその動きは鈍いままです。
そこで立ち上がったのが、Steamで配信中のサードパーティ製アプリ「DSX」の開発チームです。DSXはもともと、DualSenseのLEDライトやアダプティブトリガーをPC上で細かくカスタマイズするためのツールとして人気を博していました。※参照:Steam
彼らが今回発見し、開発を進めている新機能は、まさに「コロンブスの卵」的な回避策です。
開発者が公開した動画で実証されているその仕組みは、以下の通りです。
- 「仮想のDualSense」を作成
DSXアプリが、Windows上で「仮想のオーディオデバイス」として振る舞う、仮想のDualSenseコントローラーを作成します。 - ゲーム側を「誤認」させる
PCゲーム側は、このDSXが作った仮想デバイスを「USB-Cケーブルで有線接続されたPS5コントローラー」として認識します。 - データを解釈して無線送信
ゲームが本来ケーブル経由で送るはずの「オーディオデータ」と「触覚データ」を、DSXアプリがすべて受け取ります。 - Bluetooth経由で触覚を再現
DSXがそのデータをリアルタイムで解釈し、Bluetooth接続されている本物のDualSenseコントローラーに対して、正しい触覚信号として送信します。
これにより、ゲーマーはついに、煩わしいUSB-Cケーブルなしで、PS5で体験するのと同等の「繊細なハプティックフィードバック」をワイヤレスで楽しめるようになるというのです。

ソニーの遅れるPC対応と、サードパーティの情熱
ソニーは近年、「Inzone」ブランドのキーボードやスピーカーなど、デスクトップ(PC)向け製品の拡充を進めています。また、Pulse Eliteといったゲーミングヘッドセット用ドライバーの提供を開始し、PCユーザーがPS5本体なしで設定変更やアップデートを行えるようにするなど、明るい兆しもあります。
しかし、最も人気のあるアクセサリーであるはずのDualSenseコントローラーの、最も重要な機能がワイヤレスでサポートされていない現状は、なんともちぐはぐな印象を受けます。ソニーがマルチプラットフォーム戦略を本気で推進するならば、コンソールとPCの機能的な互換性を高めることが、PlayStationブランドにとって大きなメリットとなるはずです。
2025年末、ケーブルから解放される日を待つ
公式が動かないのであれば、ユーザーコミュニティが動く。今回のDSXのアップデート予告は、まさにそれを体現したものです。
DSXは無料アプリではありませんが、Steamで手頃な価格で販売されています。もし、あのケーブルの呪縛から解放され、PCゲームの没入感をワイヤレスで最大限に高められるのであれば、その価値は十分にあると言えるでしょう。
YouTube動画の開発者コメントによると、この待望の触覚フィードバック機能のアップデートは「2025年末まで」にリリースされる可能性があるとのこと。
ソニーによる公式の対応がなされるのが一番の理想ですが、それまでの間、情熱あるサードパーティ開発者の「神業」に期待し、PCデスクからケーブルが一本消える日を心待ちにしたいと思います。

