iPhoneでの動画編集、もっと手軽に、でも妥協はしたくない――。そんなクリエイターたちの長年の願いに応えるかのように、衝撃的なニュースが舞い込んできました。あのプロ向け動画編集ソフトの代名詞、Adobe Premiereが、なんとiPhoneアプリとして、しかも基本無料で2025年9月30日にリリースされるというのです。
これは、単なる「Premiere Rushの後継アプリ」という言葉だけでは片付けられない、大きな変革の始まりを告げています。なぜなら、この新しいアプリは「Premiere Proと同様の機能」を目指して設計されているからです。
これまで「スマホアプリだから」と諦めていた高度な編集は、本当に可能になるのか?長年Premiere Rushを愛用してきたユーザーは、今すぐ乗り換えを検討すべきなのか?そして、Final Cut ProやDaVinci Resolveといったライバルがひしめく動画編集アプリ市場に、どのような衝撃を与えるのか?
本記事では、この「iPhone版Adobe Premiere」が一体どんな可能性を秘めているのか、その核心に迫ります。単なる機能紹介に終わらない、あなたの動画制作の未来を変えるかもしれない情報を、余すことなくお届けします。
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iPhone版のAdobe Premiereがフルスペックで帰って来る

さよならPremiere Rush、こんにちは「本物のPremiere」
今回の発表でまず注目すべきは、このアプリが「Premiere Rush」の後継であると明言されている点です。Rushは、手軽さを武器に多くのユーザーを獲得しましたが、一方で「もっと細かい調整がしたい」「デスクトップ版との機能差が大きい」といった声も少なくありませんでした。
Adobeは、その声を真正面から受け止めたのでしょう。新しいiPhone版Premiereは、Rushの手軽さを継承しつつも、その中身は全くの別物。プロの現場で絶大な信頼を得るPremiere Proの遺伝子を色濃く受け継いでいるのです。
その証拠に、以下のような機能が惜しげもなく搭載されています。
- 直感的なマルチトラックタイムライン
スマホアプリとは思えないほど精密な編集を可能にします。映像、テロップ、BGM、効果音といった複数の要素を、指先一つで自由に重ね合わせ、タイミングを完璧にコントロールできます。もう「この辺でいいか」という妥協は必要ありません。 - 無制限のトラック数
あなたの創造力に限界はありません。複雑なプロジェクトでも、トラック数の制限を気にすることなく、アイデアを無限に広げられます。 - 高度な編集コントロール
クリップの反転やフリーズフレーム、オーディオのリンク解除といった、これまでPCでしかできなかったような専門的な操作が、iPhone上で完結します。
これは、もはや「簡易版」ではありません。ポケットの中に「編集スタジオ」を持ち運ぶ時代の到来と言えるでしょう。

AIが創造性を加速させる。Adobe Fireflyとの融合
新しいPremiereが単なる高機能アプリに留まらない最大の理由、それはAdobeの誇る生成AI**「Adobe Firefly」**との深い統合です。
動画編集において、素材探しや単純作業に多くの時間が費やされることは珍しくありません。しかし、iPhone版Premiereは、AIの力でその常識を覆します。
- コンテンツ生成
「動画のアクセントに、ユニークなステッカーが欲しい」「このシーンに合う効果音が見つからない」そんな時も、Fireflyにイメージを伝えるだけで、オリジナルのアセットを瞬時に生成できます。 - 背景拡張
撮影した動画の画角が少し足りない…そんな時もAIが背景を自然に拡張し、理想の構図を生み出します。 - インスタント背景除去
グリーンバックがなくても、人物やオブジェクトを瞬時に切り抜き、キーイングやスタイリッシュなタイトルエフェクトを簡単に追加できます。 - AI最適化オーディオ
iPhoneのマイクで録音したナレーションも、まるでスタジオで収録したかのようなクリアな音質にAIが自動で補正。声から効果音を生成するといった、遊び心あふれる機能も搭載されています。
これらのAI機能は、あなたの創造性を刺激し、編集作業を劇的に効率化してくれるはずです。そして特筆すべきは、Adobeが「ユーザーの作品を同意なしにAIのトレーニングに使用しない」と明言していること。クリエイターの権利を尊重するその姿勢は、私たちが安心して創作活動に打ち込める大きな安心材料となります。

「無料」のからくりは?気になる料金体系とライバルとの関係
「これだけの機能が本当に無料で使えるの?」と疑問に思う方も多いでしょう。答えは「YES」です。
iPhone版Premiereは、アプリのダウンロードも基本機能の使用も無料。さらに、多くの無料アプリにありがちな広告表示や、書き出し時の透かし(ウォーターマーク)も一切ありません。
では、Adobeはどこで収益を上げるのでしょうか。その答えは、オプションの課金体系にあります。
- Fireflyの生成AIクレジット: AI機能を多用する場合に、必要に応じてクレジットを購入する形式です。
- 追加ストレージ: クラウドストレージを追加したい場合に課金が発生します。
つまり、「基本的な編集はすべて無料で行え、より高度なAI機能や大容量ストレージが必要な人だけが支払う」という、非常にユーザーフレンドリーなモデルなのです。これは、月額課金が主流の多くのアプリとは一線を画すものであり、初心者からプロまで、誰もが気軽に最高峰の編集環境を試せることを意味します。
この戦略は、明らかにFinal Cut ProやDaVinci Resolveといったプロ向けソフトのモバイル版を意識したものでしょう。無料でプロ級の入り口を提供し、シームレスなデスクトップ版(Premiere Pro)との連携を武器に、Adobeのエコシステムへとユーザーを導く。まさに王者の風格漂う、巧みな一手と言えます。

【まとめ】
今回発表されたiPhone版Adobe Premiereは、単なるひとつの新しいアプリの登場というニュースに留まりません。これは、いつでも、どこでも、誰もがプロフェッショナルな動画を創造できる時代の本格的な幕開けを告げる「事件」と言っても過言ではないでしょう。
Premiere Rushのサポート終了に一抹の寂しさを覚えていたユーザーにとっては、それを補って余りあるほどの希望の光です。そして、これから動画編集を始めようと考えている初心者にとっては、これ以上ない最高のスタート地点が用意されたことになります。
AIとの融合によって編集作業の概念そのものを変え、「無料」という常識破りのモデルでクリエイターの裾野を広げ、そしてデスクトップ版との連携でプロの期待にも応える。この全方位的なアプローチは、モバイル動画編集の世界に新たな標準を打ち立てるに違いありません。
Premiere Rush同様にiPadでも使えるのであれば、かなり熱い展開になりそうですが、とりあずiPhone版となっているので、そこら辺はどうなるんでしょうね。
もちろん、Android版のリリースが後になる点など、まだ見えない部分もあります。しかし、現時点で明かされている情報だけでも、その期待感は最高潮に達します。
