物理キーボード端末は単なるノスタルジーの産物に過ぎない、という冷ややかな視線を本気で覆しにかかった。iPhone向けキーボードケースで存在感を示したClicksが放つ独自Android端末「Communicator」が、12月の出荷を前に異例のスペック引き上げを決断した。
価格を据え置いたままRAMを12GBへ増量し、バッテリーも増強。現代の過酷なマルチタスクを支えるメイン端末へと舵を切った意味は極めて大きい。
ハードウェアの進化で目を引くのは、基本性能の大幅な底上げだ。当初予定の8GBから1.5倍となる12GB RAMへと強化され、アプリの肥大化にも怯まない足回りを手に入れた。バッテリーも4,000mAhから4,350mAhへ増大し、800回以上の充電サイクルを確保する。

ここで注目すべきは、当初掲げていたシリコンカーボン電池の採用を見送り、従来のリチウムイオンへ切り替えた判断だ。テスト段階での故障率の高さを見逃さず、先進性の演出よりも日々の確実な稼働を選んだ。道具としての信頼性を最優先した、極めて現実的で賢明な割り切りと言える。
周辺環境の固め方も用意周到だ。人気ブランドDbrandと手を組んだ専用ケースやガラスフィルムの投入にとどまらず、手厚いアフターサービスまで自前で整えてきた。破損時に49ドルの自己負担で即座に交換機を送り届ける2年間の保護プラン「Clicks Care」は、日々の業務をこの1台に預けるビジネス層への決定打となる。
さらに米英市場向けには、eSIMを活用した自社通信サービス「Clicks Mobile」まで用意し、初期2カ月の無料通信まで付与する。物理nano SIMスロットを残して通信の選択肢を奪わない配慮も行き届いている。
これまで物理キーボード搭載機といえば、過去のBlackBerryの遺産を追うニッチな実験作に終わりがちだった。しかしClicksが狙うのは、ハードの売り切りではなく、通信や保守まで束ねた実用ツールとしての垂直統合だ。10月1日には予約価格499ドルから定価649ドルへの大幅値上げを控える。
このタイミングでの強化発表は、初期サポーターへの誠意であると同時に、迷う層を一気に刈り取る巧みな戦略に他ならない。
ギミック重視の懐古趣味から脱し、現代の過密な情報環境を撃ち抜く実用機へ化けられるか。手堅い実利を選び取ったCommunicatorが12月にユーザーの手に渡る瞬間、物理キーボードの復権をかけた本当の試練が始まる。
Source:Clicks

