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Googleがまた一つ、無料ユーザーに対する包囲網を狭め始めた。
YouTube Musicにおいて、楽曲の歌詞表示機能が有料プラン「Premium」限定へと移行しつつある。これまで広告さえ我慢すれば享受できていた「音楽を聴きながら歌詞を追う」という当たり前の体験が、今後は課金なしには成立しなくなる可能性が高い。これは単なる機能テストの枠を超え、ストリーミングサービス全体が「フリーミアムの縮小」へ舵を切った決定的な瞬間だ。
事の発端は、複数の海外ユーザーからの報告だ。無料版アプリで楽曲を再生中、歌詞タブを開くと「Premiumで歌詞をアンロック」という冷徹なメッセージが表示される事例が相次いでいる。
具体的には、歌詞の一部だけが表示され、残りはぼかし処理で隠される。あるいは、歌詞の閲覧回数に制限が設けられ、例えば「残り5回」といったカウントダウンが表示されるという。上限に達すれば、それ以降は有料会員にならない限り、歌詞は一切確認できなくなる仕様だ。これが月ごとのリセットなのか、あるいはアカウントごとの恒久的な制限なのか、現時点ではGoogleからの公式なアナウンスはなく、詳細は不透明なままである。
だが、この変更が持つ意味は重い。

これまで音楽サブスクにおける無料プランの差別化といえば、広告の挿入やオフライン再生の不可、あるいは高音質設定のロックといった「付加価値の制限」が主だった。しかし、歌詞表示は音楽体験における基礎的な機能に近い。Spotifyも以前、同様の歌詞ロック機能をテストし、ユーザーからの猛反発を受けて撤回に近い修正を余儀なくされた経緯がある。
Googleがあえてこの「禁じ手」に手を伸ばした背景には、収益構造の限界が見え隠れする。歌詞データはMusixmatchやLyricFindといったプロバイダーからライセンス供与を受けており、表示するだけでコストが発生する。膨大な無料ユーザーが垂れ流す歌詞表示コストを、もはや広告収入だけではカバーしきれない、あるいはカバーする気がないという経営判断だろう。
さらに言えば、これは強力なアップセル(上位プランへの誘導)施策だ。特にZ世代を中心とした若年層にとって、歌詞は単なるテキストではなく、SNSでの共有や自己表現の一部であり、コンテンツ体験の核心だ。そこを人質に取ることで、Premiumへの移行を半ば強制的に促す狙いがあるのは明白だ。
今回の措置が一部のテストで終わるのか、全ユーザーへ順次適用されるのかは予断を許さない。しかし、YouTube全体の戦略を見れば、4K画質の制限テストや広告ブロッカーの排除など、無料ユーザーへの風当たりは強まる一方だ。
「タダより高いものはない」という言葉があるが、YouTube Musicにおいては「タダで楽しめる範囲」が急速に狭まりつつある。歌詞という基本的なメタデータさえも切り売りされる時代において、我々はサブスクリプションの価値を改めてシビアに見極める必要がある。

