「どうせ、また一発屋で終わるのだろう」。
そう思っていたのは、私だけではないはずです。かつて『Mi 11 Ultra』で世界を驚かせながらも、たった一代でその姿を消した背面ディスプレイ。
その記憶が新しいだけに、Xiaomi 17 Proシリーズが再び同じ機構を搭載して登場した時、多くのスマートフォン愛好家は、期待と同時に冷ややかな視線を送っていました。
しかし、現実は我々の憶測を鮮やかに裏切ります。Xiaomi 17 ProとPro Maxは、その斬新な背面スクリーンが大きな要因となり、中国市場で記録的な大ヒットを飛ばしたのです。
そして今、Xiaomiの社長、陸衛兵氏自らの口から、衝撃的な宣言が飛び出しました。「来年のXiaomi 18シリーズでも、背面スクリーンは継続し、さらに進化させる」。これは単なる機能の継続を伝えるニュースではありません。Xiaomiが「ギミック」という汚名を返上し、背面スクリーンを未来のスマートフォンの”標準機能”へと昇華させようとする、壮大な野望の現れです。


Mi 11 Ultraの悪夢は繰り返さない。Xiaomi 17が証明した「実用性」
Xiaomiの背面スクリーン戦略を語る上で、Mi 11 Ultraの存在は無視できません。あまりにも巨大なカメラスペースに申し訳程度に埋め込まれた小さなスクリーンは、通知の確認やセルフィーのファインダーとして機能したものの、多くのユーザーにとっては「面白いけれど、必須ではない」という評価に留まりました。
結果、後継機ではあっさりと廃止され、「Xiaomiの迷走」とまで言われました。

しかし、Xiaomi 17 Proシリーズは違いました。ディスプレイサイズを大型化し、視認性を向上させただけでなく、より多くの情報を表示できるようにUIを洗練させました。これにより、単なる通知表示装置から脱却し、メインスクリーンを開かずともスケジュールや天候、音楽の操作などが完結する「第2の顔」としての地位を確立したのです。
特に、圧倒的な画質を誇るメインカメラで、完璧な画角を確認しながらセルフィーが撮れるという体験は、多くのユーザーの心を掴みました。
これは、小さなインカメラで撮影するしかなかった従来の自撮りの常識を覆すものであり、背面スクリーンが持つ明確な「実用性」を市場に証明した瞬間でした。中国での大ヒットは、この体験価値が本物であったことの何よりの証左です。
約束された進化の道。Xiaomi 18が目指す「未来のインターフェース」
Xiaomiの野心は、Xiaomi 17の成功に満足することなく、さらにその先を見据えています。陸衛兵氏が明言した「機能の改良」と「アプリサポートの強化」。この言葉は、Xiaomi 18の背面スクリーンが、我々の想像をさらに超えてくることを示唆しています。
「アプリサポートの強化」が意味するのは、単に表示できるアプリが増えるということだけではありません。例えば、地図アプリと連携し、スマートフォンを裏返したままナビゲーションを確認できたり、メッセージアプリの簡易返信が背面スクリーンだけで完結したりする未来が考えられます。
あるいは、QRコード決済時に、相手にコードを提示しながら自分のメインスクリーンでは別の操作を続ける、といった使い方も可能になるかもしれません。
これは、背面スクリーンが単なる「表示領域」から、限定的ながらも操作が可能な「第2のインターフェース」へと進化する可能性を意味します。Xiaomiは、我々がスマートフォンをどのように手に持ち、どう操作するのか、その行動様式そのものを、この小さな画面から変えようとしているのです。

最大の壁、そして我々のジレンマ。「グローバル版」はなぜ遠いのか
しかし、この素晴らしい未来の話を聞けば聞くほど、我々日本の、そして中国以外の国のファンの心には、一つの大きなため息が生まれます。「その革新的なスマホ、いつになったら我々も買えるんだ?」と。
Xiaomi 17のProモデルがそうであったように、Xiaomi 18の背面スクリーン搭載モデルもまた、中国国内限定となる可能性は依然として高いままです。その背景には、単なる販売戦略以上の、深く複雑な「壁」が存在します。
その壁とは、「アプリとサービスのエコシステム」の違いです。中国国内では、WeChatやAlipayといった数種類のスーパーアプリが生活の隅々まで浸透しており、Xiaomiはそれらのアプリと緊密に連携することで、背面スクリーンの利便性を最大限に高めることができます。
一方で、グローバル市場ではどうでしょうか。Googleの各種サービス(Gmail, Googleマップ, Google Pay…)、Metaのサービス(WhatsApp, Instagram…)、その他各国のローカルな人気アプリ。
これらの無数に存在するアプリやサービス一つひとつと連携し、背面スクリーンでの最適な表示や操作を担保するには、膨大な開発コストと時間、そして各企業との交渉が必要になります。
このローカライズの壁こそが、XiaomiがProモデルのグローバル展開に慎重にならざるを得ない最大の理由なのです。技術的には可能でも、ビジネスとして、そしてユーザー体験として成立させるには、まだ時間がかかる。そのもどかしい現実が、我々の前に横たわっています。
