「人とは違う、特別な一台が欲しい」
誰もが一度はそう考えたことがあるのではないでしょうか。しかし、市場に溢れるスマートフォンは、スペックや機能での差別化が中心となり、真の意味での「特別感」を見出すのは難しくなっています。
そんな中、サムスンが中国市場限定で投入した一台の折りたたみスマートフォンが、我々に新たな問いを投げかけています。その名も「Samsung W26」。
ベースとなっているのは、世界最高峰の折りたたみスマホ「Galaxy Z Fold7」です。しかし、その価格はZ Fold7を大きく上回ります。基本性能が同じであるにもかかわらず、なぜW26はこれほどまでに高価なのでしょうか?


Samsung W26とは一体何者なのか?
まず結論から言うと、Samsung W26は、サムスンが中国の富裕層やエグゼクティブ層をターゲットに展開する超高級ライン「Wシリーズ」の最新作です。
毎年、その年の最高のGalaxy Z Foldをベースに、より豪華な素材と特別なデザインを施してリリースされるこのシリーズは、単なる通信機器ではなく、持つ人のステータスを象徴する「作品」として位置づけられています。
2024年夏にグローバルで発売された「Galaxy Z Fold7」が最先端技術の結晶であるならば、このW26は、その技術に伝統工芸品のような魂を吹き込んだモデルと言えるでしょう。

W26 vs Z Fold7:似て非なる二つの頂点
では、具体的にW26とZ Fold7は何が違うのでしょうか。まずは、両者の心臓部から見ていきましょう。驚くべきことに、基本的なハードウェアはほぼ同一です。
スペック | Samsung W26 / Galaxy Z Fold7 |
チップセット | Qualcomm Snapdragon 8 Elite for Galaxy |
バッテリー | 4,400mAh (25W充電対応) |
メインカメラ | 200MP |
カバーディスプレイ | 6.5インチ |
メインディスプレイ | 8.0インチ(折りたたみ式) |
厚さ / 重量 | 8.9mm / 215g |
ご覧の通り、プロセッサ、バッテリー、カメラ性能、そしてディスプレイサイズに至るまで、両者に違いは見当たりません。つまり、日常的な操作感や写真のクオリティにおいて、性能差は全くないのです。
この事実こそが、W26の価格に対する疑問をさらに深めます。では、価格差を生み出す決定的な違いはどこにあるのでしょうか。


サムスンがW26に込めた「3つの付加価値」
W26は、中国国内においてGalaxy Z Fold7よりも2,000元〜2,500元(日本円で約42,000円〜52,000円)高く設定されています。この価格差は、以下の3つの要素によってもたらされています。
- 纏うオーラが違う、特別なデザイン
W26の最も大きな特徴は、その外観にあります。Galaxy Z Fold7のフレームが滑らかでミニマルな仕上げであるのに対し、W26は高級時計のベゼルを思わせるリブ仕上げが施されたゴールドフレームを採用。光を受けるたびに繊細な陰影を生み出し、圧倒的な高級感を放ちます。 また、背面パネルには前モデルW25のセラミックからガラスへと変更が加えられ、より現代的で洗練された印象を与えます。これは、単なる「色違い」ではなく、所有者の品格を高めるためのデザイン哲学の違いと言えるでしょう。 - 手にした瞬間から始まる、特別な体験
W26の特別感は、本体だけに留まりません。パッケージを開封するその瞬間から、ユーザーを特別な世界へと誘います。- 専用ケブラー製ケース:軽量でありながら高い強度を誇るケブラー素材で作られた専用ケースが標準で付属します。
- 豪華なパッケージング:一般的なスマートフォンの箱とは一線を画す、精巧で重厚なボックスに収められています。
- 通信割引コード:1,000元(約21,000円)相当の通信割引コードが同梱され、実質的な価値も提供します。 これらは、製品を手に入れるまでの「体験」そのものをデザインするという、超高級ブランドならではのアプローチです。
- 希少性という、見えざる価値
W26は中国市場限定モデルであり、生産数も限られています。誰もが簡単に手に入れられるものではないという希少性が、その価値をさらに高めています。グローバルモデルであるZ Fold7とは対照的に、「選ばれた人だけが手にできる」という特別感が、所有欲を強く刺激するのです。
サムスンの戦略を読み解く
ここで一つ、興味深い点があります。昨年は、Galaxy Z Flipをベースにした「W25 Flip」も存在しましたが、今年はW26のみの発表となり、フリップタイプの後継機は登場しませんでした。
これは、サムスンが「Wシリーズ」のブランド価値を、より大型で高価なFoldタイプに集中させることで、「究極のラグジュアリー」というイメージを先鋭化させる戦略ではないかと推測されます。うーん、国内では発売しないでしょうね。こういうスマホもありまよってお話でした…。
