ゲームの新作を心待ちにし、発売日にショップへ駆け込む。丁寧にパッケージの封を切り、真新しいディスクをトレイに乗せる時の、あの静かな興奮。ゲームをクリアした後、友人に貸したり、中古ショップに売って次のソフトの足しにしたり…。こうした一連の体験が「当たり前」だった時代は、もうすぐ終わりを告げるのかもしれません。
信頼性の高いリーク情報で知られる『Insider Gaming』が投じた一石が、今、ゲーム業界に大きな波紋を広げています。次世代機「PlayStation 6(PS6)」は、ソニー史上初めて、発売当初からディスクドライブを搭載しない「100%デジタルコンソール」になるというのです。
これは単なるハードウェアの設計変更ではありません。私たちが長年親しんできた「ゲームを所有する」という概念そのものを揺るがし、ゲームの未来を大きく左右する、まさに歴史的な転換点です。
記事の内容を音声で聞きたい方はこちら↓


PlayStation 6は100%デジタルコンソールになる

PS6は「生まれながらのデジタル機」
今回の核心は、PS6が「最初から」ディスクドライブを内蔵しない設計になる、という点にあります。これまでのPlayStationの歴史を振り返ってみましょう。
PlayStation 5では、ディスクドライブを備えた「通常版」と、ドライブを持たない「デジタル・エディション」の2種類が発売されました。これは、ユーザーに選択肢を与える形でした。
また、近々登場が噂されるPS5 Proでは、後から着脱可能なディスクドライブが導入されると言われています。しかしこれらは、あくまでディスク版が存在する世界でのバリエーションに過ぎませんでした。
しかし、PS6は違います。Insider Gamingによれば、標準モデルが完全にデジタル専用機となり、物理的なディスクを読み込む機能が本体から完全に切り離されるのです。これは、ソニーが「ゲームはデジタルダウンロードで購入するものが標準である」と公式に宣言するに等しい、非常に大きな決断と言えるでしょう。
なぜソニーはディスクを捨てるのか?抗えない時代の波
ソニーがこれほど大きな舵を切る背景には、無視できない市場の変化が存在します。もはや議論の余地なく、ビデオゲーム市場の主流は物理メディアからデジタルダウンロードへと移行しました。
- 利便性の勝利
発売日の深夜0時からすぐにダウンロードして遊べる手軽さ。複数のゲームをディスクを入れ替えることなく瞬時に切り替えられる快適さ。こうしたデジタルならではの利便性は、一度体験すると元に戻れないほどの魅力を持っています。 - セールやプロモーションの魅力
PlayStation Storeでは頻繁に大規模なセールが開催され、新作・旧作問わず多くのタイトルが驚くほどの価格で提供されます。物理的な在庫を抱える必要がないため、メーカー側も柔軟な価格設定が可能になり、ユーザーはその恩恵を直接受けることができます。 - 収益構造の変化
PlayStation、Xbox、Nintendo Switch、そしてPCゲームプラットフォームのSteam。今やどのプラットフォームにおいても、デジタル販売が収益の大部分を占めるようになっています。メーカーやプラットフォームホルダーにとって、製造コスト、輸送コスト、そして小売店のマージンが発生しないデジタル販売は、利益率が非常に高いビジネスモデルなのです。
こうした状況を鑑みれば、ソニーがPS6で完全デジタル化へと踏み出すのは、ビジネスとして極めて合理的かつ、時代の必然と言えるのかもしれません。

物理メディア派への救済措置?別売りドライブという「選択肢」
では、パッケージ版のコレクションに喜びを感じるユーザーや、PS4/PS5のディスク資産を次世代機でも活用したいと考えているプレイヤーは切り捨てられてしまうのでしょうか?
幸いなことに、ソニーはその点にも配慮を見せています。PS6では、PS5 Proで導入されると噂の「着脱可能な外付けディスクドライブ」が、本体と同時に(ただし別売りで)発売されるとのことです。
このアプローチには、ソニー側にもユーザー側にもメリットがあります。
- ソニー側のメリット
- 本体の製造コストを削減し、より戦略的な価格設定が可能になる。
- パッケージを簡素化でき、輸送コストや在庫管理コストを圧縮できる。
- コアなファン層の需要にも応えつつ、市場の大多数を占めるデジタルユーザーに最適化できる。
- ユーザー側のメリット
- ディスクドライブが不要なユーザーは、その分安価に本体を手に入れられる可能性がある。
- コレクターや物理メディアを愛するユーザーは、追加投資で従来通りのゲーム体験を継続できる。
しかし、ここには一抹の不安も残ります。それは「供給問題」です。PS5発売当初の品薄騒動は記憶に新しいですが、PS5 Pro向けの着脱式ドライブも、十分な数が市場に行き渡るかは未知数です。もしPS6用の外付けドライブが「欲しい人に行き渡らない」状況になれば、この救済措置は絵に描いた餅となり、事実上のデジタル強制と変わらなくなってしまうでしょう。

PS7でゲームディスクは完全消滅?忍び寄る「所有」の終わり
PS6におけるこの「本体デジタル化+外付けドライブ」という戦略は、さらにその先の未来を暗示しているのかもしれません。これは、物理メディアという文化を、一世代かけて緩やかに終焉へと導くための布石ではないでしょうか。
もしPS6の世代で、ゲーマーの大多数が外付けドライブを購入せず、デジタル購入に完全に移行したとすれば、その次の世代、つまりPlayStation 7では、もはや外付けドライブのオプションすら提供されない可能性が濃厚になります。
そうなれば、ゲームディスクという物理的な媒体は、一部のニッチなコレクターズアイテムを除き、完全に市場から姿を消すことになります。それは、ゲームを「所有」するのではなく、プラットフォームから「利用権(ライセンス)」を購入する時代への完全移行を意味します。
中古市場の消滅、サービスの終了と共に購入したゲームがプレイできなくなるリスクなど、私たちが向き合わなければならない課題は少なくありません。利便性と引き換えに、私たちは大切な何かを失うことになるのかもしれないのです。
まとめ
PlayStation 6が100%デジタルコンソールになるというニュースは、時代の流れを象徴する出来事であり、ある意味で受け入れざるを得ない未来なのだと感じます。私自身、最近は手軽さからダウンロード版を選ぶことが増え、物理メディアから少しずつ距離ができていたことを認めざるを得ません。
しかし、ゲームショップの棚を眺めながら次に遊ぶ一本をじっくり選ぶ楽しみ、友人とゲームディスクを貸し借りして感想を語り合った思い出、そして手元に「モノ」としてコレクションが並んでいく満足感。これらが失われる可能性を考えると、やはり一抹の寂しさを禁じ得ません。
ソニーが提示する「外付けドライブ」という選択肢は、過渡期における現実的な落としどころなのでしょう。しかし、それはあくまで延命措置であり、物理メディアという文化が、夕暮れの光の中にいることを示唆しています。
