記事の内容を音声で聞きたい方はこちら↓
シングルボードコンピュータの代名詞「Raspberry Pi」が、またしても厳しい決断を下した。
対象となるのはRaspberry Pi 4および5の2GBモデル。それぞれ即日で12.50ドル引き上げられ、Pi 4の2GB版は67.50ドル、Pi 5は77.50ドルという新価格が適用される。
このニュースが単なる価格転嫁にとどまらない最大の理由は、先日明らかになったばかりの「最新ハードウェアでのRAM増設ブロック仕様」と、最悪のタイミングで重なっている点にある。
同社は今年4月にも4GB以上のモデルを対象に価格改定を実施済み。その要因として、基板に搭載されるLPDDR4 DRAMの価格がわずか1年で約7倍に跳ね上がった異常事態を挙げていた。これまで普及帯である低価格モデルの維持に努めてきたが、ついにコスト吸収の限界を迎えた格好だ。
幸いにも1GBモデルや、Compute Module 4/5の2GB版は現行価格を維持する。

ここで見逃せないのが、自作界隈に突きつけられた過酷なハードル。
少し前まで、腕に覚えのあるユーザーは小容量モデルを購入し、後から大容量のメモリモジュールへと物理的に換装する力技のアップグレードを楽しんでいた。しかし、Compute Module 5での換装失敗報告を皮切りに、同社のエンジニアが「デバイスは出荷時のRAM容量に固定される」仕様を公式に認めたばかり。
つまり、安く買って後で強化する抜け道は完全に塞がれた。
この仕様変更と値上げのコンボは、ユーザーの購買行動を根本から変える。予算を削ってメモリ不足に泣くリスクを受け入れるか、あるいは「使わないかもしれないメモリ容量」に高いコストを支払って先行投資するか。購入時の構成選びが、かつてなくシビアな死活問題となっている。
Raspberry Pi側もこの痛みを理解しており、スペックを持て余す用途に対しては、Pi 3Bや3A+といった旧型ボードの活用をわざわざ提案している。最新モデル至上主義からの脱却を促す、ある意味で異例のアナウンスと言えるだろう。
同社はメモリ市況が落ち着けば価格を元に戻す意向を示しているが、昨今のAIブームに伴う半導体需要を鑑みると、早期の値下げは到底期待できない。
安価で自由なハックの土壌を提供してきたRaspberry Piだが、これからは用途に応じた綿密なサイジングが求められるシビアなデバイスへと変貌しつつある。この隙を突いて他社製の安価な互換ボードがシェアを奪うのか、シングルボードコンピュータ市場は今、大きな転換点を迎えている。
Source:Raspberry Pi


