空気から水道水、そして人間の血流や脳にまで入り込んでいるマイクロプラスチック。
代謝障害や炎症への関与が疑われながらも、これまでは高額で痛みを伴う採血でしか体内への蓄積を調べられなかった。
この常識を覆すプロトタイプが登場した。エストニア・タルトゥ大学の研究チームが開発したスマートウォッチ型デバイス「SWAN」。
皮膚越しに光を当て、非侵襲でプラスチック粒子を特定する。しかも、市販の部品を組み合わせ、わずか105ドルで実現したという。
コアとなる技術は分光法。特定の波長の光を肌に照射し、反射光を測定することで、プラスチック固有の光学的パターンを読み解く仕組みだ。
心拍数など既存のヘルスケア機能と干渉せず、塩の結晶ほどの微小な粒子まで検知。さまざまな肌の色調でも安定して動作する。
驚くべきは、そのハードウェア構成。ESP32-WROOM-32EマイコンにAS7265X小型分光計、そして3つのLED。これらすべて市販の安価なパーツで賄われている。
Apple WatchやPixel Watchが血中酸素や心電図など「生体データ」の計測にしのぎを削る中、SWANが提示したのは「外部からの侵入物」を可視化するという全く新しいアプローチ。
医療機器メーカーが数千万円の専用機器で挑む領域に、ウェアラブルのフォームファクターと100ドル強のコストで切り込んだ意義は計り知れない。
現在は実用化への第一歩を踏み出した段階。主任研究者のケビン・ポスト氏によれば、検証には人体ではなく、ゼラチンと豚皮による人工皮膚モデルを使用している。
計測精度を高めるために複数波長の光(低強度の紫外線を含む)を利用するため、人体への過剰曝露を防ぎ、安全性を極めて慎重に評価しているのだ。
もちろん、明日からすぐ店頭に並ぶ性質の製品ではない。高精度化や長期的な安全性の確立など、乗り越えるべきハードルは多い。
だが、この技術の先にある未来は明確。日常的に身につけるスマートリングや時計に、当たり前のようにこの光センサーが組み込まれる日。
歩数や睡眠時間と同じ感覚で、体内のプラスチック曝露量を誰もがモニタリングする。そんなSFのような日常が、現実のロードマップに姿を現した。
とはいえ、体内残留値がわかったところでどうしようも無いですよね…
Source:ACM Digital Library

