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ウェアラブルデバイスから「充電」という概念が消える日が、現実味を帯びてきた。 ソウル大学の研究チームが発表した、体温のみで駆動する完全にフラットな熱電発電機。 これまでの「厚くて硬い」という熱電素子の弱点を、熱の進む方向を「横」に変える逆転の発想で解決した。
従来の熱電発電は、皮膚の熱と外気の温度差を利用する仕組みだ。 ところが、デバイスをフィルムのように薄くすると、熱が垂直に突き抜けて逃げてしまう。 温度差が消え、発電効率が極端に落ちるこの現象は、科学者たちを長年悩ませてきた。 エンジニアたちは素材を折り畳んだり、三次元の柱を立てたりして厚みを持たせてきたが、それでは装着感や柔軟性が損なわれる。

今回公開された「擬似横方向熱電発電機」の凄みは、その構造にある。 伸縮性のあるシリコンベースに、熱を伝えやすい銅ナノ粒子を特定のパターンで埋め込んだ。 熱をあえて横方向に誘導することで、平らなシートの中に「温かい場所」と「冷たい場所」を人工的に創出。 複雑な構造設計に頼らず、物理現象を制御するだけで実用的なエネルギーを取り出すことに成功した。
製造にインクベースの印刷プロセスを採用した点も、商用化を強く意識している。 高い柔軟性と拡張性を備え、積み木のようにモジュールを組み合わせることで、あらゆる形状に対応できる。 スマートウォッチのバンドや、肌に直接貼るヘルスケアパッチへの応用は容易だ。
Apple Watchやスマートリングが普及した今、最大のボトルネックは依然としてバッテリー寿命にある。 この技術が実用化されれば、心拍数や血糖値を24時間監視するモニターを、文字通り「永久に」動かし続けることも夢ではない。
課題は、極寒の環境や激しい運動時など、急激な温度変化への適応力だろう。 だが、私たちの生活から「充電器を探す」ストレスが消える未来への、確実な一歩だ。
Source:Science Advances

