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メモリ価格が再び、制御不能な領域へ突入しようとしている。サムスン電子の労働組合が予告した、5月21日から18日間に及ぶ大規模なストライキ。これは一企業の労使紛争の枠を超え、ようやく安定の兆しを見せていたPCパーツ市場やデータセンター投資を直撃する、最大級の供給リスクと言わざるを得ない。
事態は深刻だ。先月23日に行われたわずか1日の抗議活動だけで、同社のファウンドリ生産量は推定58%、メモリ生産も18%減少した。今回の予告期間は、その比ではない。18日間も工場が止まれば、DRAMやNANDのグローバル供給網に致命的な穴が開く。AIブームで潤う半導体メーカーの裏側では、その果実をめぐる熾烈な争いが激化しているのだ。
組合側が突きつけているのは、営業利益の15%という極めて高い分配要求だ。背景には、巨額のボーナスを支給するライバル、SKハイニックスへの対抗心が見え隠れする。対する経営側は、AI需要の永続性を疑問視し、10%程度の分配案に留めたい考え。両者の溝は、想像以上に深い。
特に懸念されるのが、AIサーバー向けのHBMだけでなく、一般消費者が手にするDDR5メモリへの波及だ。世界にモジュールを供給しているメーカーは限られており、サムスンの穴を他社が埋める余力など、今の市場にはどこにも残っていない。マイクロンもSKハイニックスも、すでに生産枠は限界に達している。
5月11日から再開される政府仲裁の行方が、今年のIT製品価格を左右する。117億ドルとも試算される巨額の損失を回避できるか。それとも、メモリ価格の暴騰という形で、我々消費者がそのツケを払わされることになるのか。サムスンの決断一つに、世界のガジェット市場が固唾を飲んでいる。
Source:Tom’s Hardware

