ちなみに私のブラウザは今、カオスです。「後で読む」と思って開いたタブが数十個、何がどこにあるのか分からない状態で放置されています。皆さんも似たような経験、ありますよね?
そんな「タブの墓場」を抱える私たちに、Googleが少し変わった提案を投げかけてきました。それが実験的AIブラウザ「Disco」です。単に検索するだけじゃない、開いているタブそのものを「自分専用のアプリ」に変えてしまうという、ちょっと想像の斜め上を行くコンセプト。
Source:Google Keyboard Blog
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すでにPerplexityやArcといった競合がひしめくAIブラウザ戦争に、Googleが満を持して投入したこの実験作。果たしてこれは私たちのネット生活を救う革命児なのか、それとも単なる技術の遊び場なのか。Gemini 3を搭載したその実力と、裏に見え隠れするGoogleの狙いを、少し斜めのアングルから紐解いてみます。
Google Discoの最大の特徴、それは「GenTabs」と呼ばれる機能です。これ、何がすごいかというと、私たちが開いているタブの情報をAIが読み取って、その場で必要なツールを自動生成してくれるんです。
例えば、複数のレストランのレビューページを開いているとします。普通ならタブを行ったり来たりして比較しますよね。でもDiscoなら、「この店たちの比較表を作って」と頼むだけで、Gemini 3が瞬時に比較アプリのような画面を構築してくれる。コードなんて1行も書かなくていい。ただ「こういうのが欲しい」とつぶやくだけ。

これまでのブラウザが「情報の閲覧場所」だったとしたら、Discoは「情報の加工工場」になろうとしているわけです。
ただ、ここで少し冷静になって考えてみてください。Googleが提示しているデモ映像、また「日本旅行の計画」や「食事の準備」なんですよね。この2年くらい、どのAI発表会でも判で押したように同じ例ばかり見せられて、正直「またか」とお腹いっぱいになっている人も多いはず。私もその一人です。技術は凄まじいのに、使い方の提案がまだ追いついていない、そんな「予測とのズレ」を感じずにはいられません。
現状、このDiscoは「Google Labs」という実験枠での提供です。つまり、これがそのまま正式なChromeになるわけではありません。あくまで「ウェブの未来」を探るためのテストベッド。現在は米国限定のウェイティングリスト制で、しかもMacユーザー優先という狭き門。
しかし、CometやPerplexity、OpenAIのAtlasといったライバルたちが「検索の次」を模索する中で、Googleが出した答えが「検索結果をアプリ化する」だったのは興味深い変化です。私たちはもう、静的なウェブページを見るだけでは満足できなくなっているのかもしれません。

個人的には、Discoという独立したブラウザが覇権を取るとは思えません。むしろ、ここで実験された「GenTabs」のような機能が、しれっと将来のChromeに実装される未来が見えます。そうなった時こそ、私たちの「タブ地獄」が本当に解消される瞬間なのかもしれません。
Google Discoは、今のところ「未来の予告編」です。
Gemini 3という最新鋭の頭脳を使いながら、やっていることは地味なタブ整理の進化版かもしれません。でも、その地味さの中にこそ、インターネットの使い方が根本から変わる予兆を感じます。
「検索して終わり」ではなく「検索してからが始まり」。ブラウザがただの閲覧ソフトから、自分専用の秘書ツールへと変貌しようとしている。その変化の最前列に立ち会っている感覚は、やはりワクワクするものがあります。

