デスク周りの環境を整えるとき、私たちが一番頭を悩ませるのは「モニター選び」ではないでしょうか。特に、ガッツリとゲームをするわけではないけれど、カクカクした画面で仕事をするのは嫌だ、という層にとって、市場にある選択肢は帯に短し襷に長しでした。
そんな「デスク環境界隈」に、Xiaomiがまたしても面白い選択肢を投げ込んできました。それが先日ひっそりとグローバルサイトに登場した「Xiaomi Monitor A24i 2026」です。
名前に「2026」と冠しているあたり、少し未来を先取りした感がありますが、中身を見てみると「これ、本当にベーシックモデルか?」と疑いたくなるようなスペックアップが施されています。一見するとただのマイナーチェンジに見えるこのモニター、実は私たちの「普通」の基準を大きく書き換えようとしているのかもしれません。
今回は、まだ謎の多いこの新モデルについて、前モデルからの変更点や、あえてこの時期に「1080pモニター」を選ぶメリットについて、深掘りしていきましょう。
Source:小米科技

「ベーシック」の定義が壊れる?144Hz化の意味とは
まず、このニュースを見て私が一番最初に「おや?」と思ったのは、リフレッシュレートの数値です。XiaomiはこのA24iシリーズを「生産性モニター(Productivity Monitor)」、つまり仕事や作業用として位置づけています。
従来、事務作業用のモニターといえばリフレッシュレートは60Hz、良くても75Hzが相場でした。前モデルである2024年版でさえ100Hzに到達しており、それだけでも「ヌルヌル動く」と評判だったのです。しかし、今回の2026年モデルでは、なんと144Hzまで引き上げられました。
| カテゴリ | 仕様 | 補足 |
| 製品モデル | P24FDA-RAGL | |
| 画面サイズ | 23.8インチ | |
| アスペクト比 | 16:9 | 標準的なワイドスクリーン |
| 解像度 | 1920×1080 | フルHD (FHD) |
| リフレッシュレート | 144Hz | 高速な描画性能 |
| 応答時間 | 6ミリ秒 | Gray-to-Gray (GtG) |
| 静的コントラスト比 | 1500:1 | 前モデルより向上 |
| 輝度 | 300ニット | |
| 色の正確さ | ∆E<1 | 非常に高い色再現性 |
| 色深度/色数 | 8ビット(6ビット+FRC)/16.7M | |
| ディスプレイ視野角 | 178°(水平)/178°(垂直) | 広い視野角 |
| 傾き調整 | 前方5°/後方15° | チルト調整のみ |
| 壁掛け寸法 | 75×75mm | VESA規格対応 |
| 製品寸法(ベースを含む) | 539.2 x 170.0 x 433.7mm | |
| 製品正味重量(ベースを含む) | 3kg | 軽量 |
| 定格出力 | 24W | 消費電力 |
ここで「エクセルやワードをするのに144Hzもいらないでしょ」と思った方、実はそうとも言い切れないのです。
最近のトレンドとして、スマホの画面が120Hz駆動になり、私たちの目は知らぬ間に「滑らかな動き」に慣れきってしまいました。その目線で60HzのPCモニターに戻ると、マウスカーソルの残像やスクロールの引っかかりが、無意識のストレス(脳の処理落ちと言ってもいいかもしれません)になっていることがあります。
仕事の「タイパ(タイムパフォーマンス)」を上げるためには、PCの処理速度だけでなく、それを映し出すモニターの応答速度も重要です。ゲーミングモニターという看板を掲げずに、しれっとゲーミング級の滑らかさを標準装備にしてきた点に、Xiaomiの「これからのスタンダードはこっちだ」という静かなる主張を感じます。

色の正確さがプロ級へ
リフレッシュレート以上に、地味ながら強烈な進化を遂げているのが「画質」の部分です。
今回のA24i 2026では、コントラスト比が従来の1,000:1から1,500:1へと向上しています。IPSパネルでこの数値はかなり優秀で、黒色がより引き締まって見えることを意味します。夜間に映画を見たり、暗めのテーマでコーディングをしたりする際、画面全体が白っぽく浮くあの現象が軽減されるはずです。
さらに驚くべきは色精度です。専門的な話になりますが、色のズレを示す「Delta E」という数値が、前モデルの「2未満」から、今回は「1未満」に改善されました。
Delta Eが2未満であれば、人間の目ではほぼ色の違いが判別できないレベルと言われていますが、それをさらに下回る「1未満」というのは、本来であればデザイナーや写真家が使うようなプロフェッショナル向けモニターの領域です。
たかが事務用モニターにここまでの精度が必要なのか?という疑問は当然あります。しかし、ネットショッピングで服の色を確認したり、スマホで撮った写真を整理したりといった日常使いにおいて、「画面で見た色と実物が違う」というストレスがほぼゼロになるメリットは計り知れません。

変わらない部分と、あえて残された「1080p」の是非
一方で、スペックが変わっていない部分も存在します。解像度はフルHD(1920×1080)のまま、ピーク輝度は300nits、HDRには非対応です。接続端子もDisplayPort 1.4とHDMI 2.0という構成で、USB-Cによる給電機能などは見当たりません。
ここが、このモニターの評価が分かれるポイントでしょう。「2026年モデルなら4Kとは言わないまでも、WQHDくらいにはしてほしかった」という声が聞こえてきそうです。
しかし、24.1インチというサイズ感を冷静に考えてみてください。このサイズで4K解像度にしても、文字が小さすぎて結局スケーリング(拡大表示)することになります。PCへの負荷やコスト、そして視認性のバランスを考えると、24インチにおけるフルHDは、実は今でも「最適解」の一つなのです。
無理に高解像度化して価格が跳ね上がるよりも、解像度は据え置きで、画質の「質(コントラストや色精度)」と「速度」を極限まで高める。Xiaomiのこの判断は、スペック競争に疲れたユーザーの実用性を第一に考えた、非常にクレバーな選択だと私は感じました。

2024年モデルと2026年モデル、どちらを選ぶべきか?
現時点で発売日や価格は未定ですが、もしあなたが今、新しいモニターの購入を検討しているなら、どう判断すべきでしょうか。
もし、現在Amazonなどで安売りされている2024年モデル(100Hz版)が底値になっているなら、それを買うのは決して悪い選択ではありません。100Hzでも事務作業には十分すぎるほど快適だからです。
しかし、もしあなたが「少しでも長く使えるものが欲しい」「たまにFPSなどのゲームも遊びたい」と考えているなら、2026年モデルの登場を待つ価値は大いにあります。100Hzと144Hzの違いは、ゲームにおいては勝敗を分ける要素になり得ますし、コントラスト比の向上は動画視聴の体験をワンランク引き上げてくれるからです。

