なぜMacBook ProにFace IDは搭載されないのか? Appleの本音と「数年先」とされる技術的な壁を考察

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iPhoneではすっかりお馴染みとなり、iPad Proでも採用されている顔認証システム「Face ID」。その利便性を知る者として、誰もが一度は「なぜ、これがMacに搭載されないんだ?」と疑問に思ったことがあるはずです。

しかし、Apple製品の動向に詳しいブルームバーグのマーク・ガーマン氏によれば、私たちが待ち望むその未来は、残念ながら「すぐには実現しない」ようです。一体、Appleの戦略の裏には何があるのでしょうか。

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「便利」だからTouch ID? Appleが語る「表向きの理由」

Mac、特にMacBookシリーズにおける生体認証は、現在「Touch ID」が主流です。キーボードに一体化したセンサーに指を置くだけで、スリープ解除からパスワード入力、Apple Payの決済まで瞬時に完了します。

この現状について、Appleのマーケティング担当副社長であるトム・ボガー氏は2021年に興味深いコメントを残しています。それは、「Macではユーザーの手がすでにキーボード上にあるため、Touch IDの利便性が高い」というものです。

確かに、MacBookを開いて作業を始めようとする際、指が自然にキーボードやトラックパッド周辺にあるのは事実です。その流れでTouch IDに触れるのは、iPhoneのロックを解除するために画面を覗き込む動作とは異なります。

この「流れを止めない利便性」こそが、AppleがTouch IDをMacに最適と判断している理由だ、と彼らは説明します。実際、現在のTouch IDは非常に高速かつ正確であり、機能として不満を感じるシーンは稀でしょう。

繰り返される「搭載予測」と、最新の「数年先」という現実

しかし、私たちは「Face IDのほうがもっと便利になるはずだ」という期待を捨てきれません。そして、その期待を煽るかのように、アナリストたちによる「MacへのFace ID搭載」予測は、この5年間、繰り返し報じられてきました。

マーク・ガーマン氏自身もその一人です。2021年には「数年以内」に登場すると予測し、当時のM1 iMac向けに計画されているとまで示唆しました。しかし、結果としてiMacに搭載されたのはTouch ID付きのMagic Keyboardでした。2022年にも彼は「AppleがMacのFace IDに確実に取り組んでいる」と報じましたが、具体的な発売時期については言及を避けました。

そして今回、2026年発売予定とされるOLED(有機EL)ディスプレイ搭載のMacBook Proに関する最新の観測でも、Face IDに関する新たな情報は提供されませんでした。

これにより、この機能の実現は2028年、あるいは2030年といった、さらに遠い未来になる可能性すら示唆されています。我々が期待する「顔パス」でのMac体験は、「何年も先」の夢物語なのでしょうか。

AppleがFace ID搭載をためらう「本当の理由」とは

Appleが公式に語る「Touch IDの利便性」は、もちろん一理あります。しかし、それだけが理由で、これほどまでに搭載が遅れているとは考えにくいものです。

想像される最大の障壁は、技術的、そしてコスト的な問題です。iPhoneやiPad ProのFace IDを実現している「TrueDepthカメラシステム」は、ドットプロジェクタや赤外線カメラなど、複数の精密部品で構成される複雑なモジュールです。

これを、MacBookの極めて薄いディスプレイ上部(ベゼル)に、現在のWebカメラと同等のスペースで内蔵するのは、技術的に相当な困難が伴うと予想されます。仮に実現できたとしても、そのコストは製品価格に直接跳ね返るでしょう。Appleが、そのコスト増に見合うだけの「革命的な体験」を現状のMacで提供できると判断していない可能性は十分にあります。

転換点は「タッチスクリーンMac」の登場か

では、永遠にMacでFace IDは使えないのでしょうか? 希望の光は、まったく別の角度から差し込むかもしれません。それが、2026年後半から2027年にかけて登場が噂されている「タッチスクリーン搭載Mac」です。

もしMacがiPhoneやiPadのように直接画面に触れて操作できるようになれば、ユーザーの使い方は根本から変わります。キーボードから手を離し、画面に集中する時間が増えるでしょう。そうなれば、「手はキーボードの上にあるからTouch IDが便利」というAppleの論理は、その前提から崩れます。

むしろ、画面に触れている状態からシームレスに認証を解除できるFace IDこそが、最も合理的な選択肢となります。この「タッチスクリーンMac」の登場こそが、Appleが重い腰を上げ、高コストと技術的課題を乗り越えてでもFace IDを搭載する「大義名分」となるのではないでしょうか。

まとめ

結局のところ、MacへのFace ID搭載問題は、単なる「認証機能の追加」ではなく、Appleが描く「Macの未来の姿」と密接にリンクしているように思えます。

現状のクラムシェル型ノートブックとして「完成」されているMacBookにおいては、Touch IDが最適解であるというAppleの判断は、コスト面も含めれば合理的です。しかし、もしMacがタッチ操作を取り入れ、よりタブレット的な使い方へと進化していくのであれば、Face IDの搭載は必然となります。

「Face IDがまだ来ない」という事実は、裏を返せば「AppleはまだMacの根本的な操作体験を変える準備ができていない」というサインなのかもしれません。

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