昨日(2025年10月16日)、我々はM5チップというAppleの新たな”怪物”の誕生に熱狂したばかりです。その興奮が冷めやらぬうちに、まるで時を駆け巡るかのように、次世代「M6」を搭載するMacBook Proに関する、あまりにも衝撃的な噂が飛び込んできました。噂は税金のようなもの、とはよく言ったものです。
しかし、今回の噂は「性能がまた上がる」といった生易しいものではありません。長年待ち望まれた「OLEDディスプレイ」の採用。それだけでも大ニュースですが、真の衝撃は別の場所にあります。そう、Appleが長きにわたり頑なに拒否してきた「タッチスクリーン」の搭載です。
かつてスティーブ・ジョブズは「腕が疲れる(ゴリラアーム問題)」として、ノートPCのタッチ操作を明確に否定しました。その哲学は、MacとiPadの境界線を守る最後の砦(とりで)でもありました。その禁断の果実に、Appleはなぜ今、手を伸ばそうとしているのか。これは、単なる機能追加ではなく、Macという製品の”あり方”を根本から変える、歴史的な転換点かもしれません。
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ついに実現へ。OLEDと「ノッチよさらば」がもたらす視覚体験
まず、多くのMacユーザーが長年待ち望んでいた技術から見ていきましょう。それが「OLEDディスプレイ」の採用です。すでにiPhoneやApple Watchではおなじみのこの技術が、ついにMacBook Proにも搭載されるというのです。
OLEDがもたらす恩恵は計り知れません。
- 完全な「黒」の表現: 自発光ピクセルにより、液晶では不可能だった漆黒の闇を表現できます。
- 圧倒的なコントラスト: 映像や写真のリアリティが劇的に向上します。
- 優れた電力効率: 表示内容によっては、バッテリー持続時間の延長にも寄与します。
まさにハイエンドiPhoneに近い視聴体験が、Macの大画面で実現するのです。さらに、今回の噂ではデザインの刷新にも言及されています。より軽量な筐体、薄型のヒンジ、そして何より、あの賛否両論あったノッチ(切り欠き)が廃止され、代わりに目立たない「パンチホールカメラ」が採用されるというのです。
これは、視覚体験を邪魔するものが消え、コンテンツへの没入感が格段に高まることを意味します。ここまでは、誰もが歓迎する「正常進化」と言えるでしょう。

Appleの自己否定か? 「補完的」タッチ操作という新たな挑戦
問題は、ここからです。今回のリーク情報の核心、「タッチスクリーン」の搭載。これは、Macの伝統的な使い方、すなわちキーボードとトラックパッドによる精密な操作という体験を根底から揺るがしかねない、危険な賭けとも言えます。
我々の脳裏には、あの「Touch Bar」の苦い記憶が蘇ります。革新的と謳われながらも、多くのユーザーの支持を得られず、静かに廃止されていったあの機能です。Appleはその失敗から何を学んだのでしょうか。
マーク・ガーマン氏が伝えるところによれば、Appleは今回、非常に慎重なアプローチを取るようです。iPadのようにタッチ操作をメインにするのではなく、あくまで「Macの従来の使い方を崩さない」ことを最優先にすると報じられています。キーボードとトラックパッドが体験の中心であることは変わらず、タッチ操作はそれを「補完する」役割に徹する、と。
例えば、Webページを直感的にスクロールしたり、写真をピンチ操作でズームしたりする、スマートフォンライクな補助的操作です。これは、「生産性と精度のMac」と「直感性と携帯性のiPad」という、Appleが自ら築き上げた製品哲学の境界線を、曖昧にするのではなく、慎重に”再定義”しようとする試みに見えます。

価格上昇という現実。我々はその「価値」を認められるか
この革新的な(あるいは禁断の)進化には、当然ながらコストが伴います。最新のM5チップ搭載機では100ユーロの値下げという嬉しいニュースがありましたが、2026年のM6モデルではそうはいかないようです。
高性能なOLEDパネル、そして新たに搭載されるタッチスクリーン技術。これらの採用は、確実に製造コストを押し上げ、最終的な販売価格に跳ね返ってくるでしょう。私たちは、その価格上昇に見合うだけの「価値」を、Macのタッチ操作に見出せるのでしょうか。
「それならiPad Proでいいじゃないか」という長年の問いに対し、Appleは「Macの生産性を維持したまま、さらに直感的な操作も可能にする」という回答を出そうとしています。その答えに私たちがいくらの値をつけ、そして納得するのか。2026年、Appleのブランド力と革新性が、再び市場で試されることになります。

まとめ
M5チップ搭載の新型MacBook Proが発表された直後だというのに、我々の心はすでに2026年へと飛んでいってしまいました。OLEDディスプレイの搭載とノッチの廃止は、長年のファンにとってまさに悲願達成であり、素直に喜ぶべき進化です。
しかし、「タッチスクリーン」の搭載。こればかりは手放しでは喜べません。それはAppleが守り続けたMacの「哲学」の変更を意味し、一歩間違えればTouch Barの二の舞になりかねないからです。
とはいえ、AppleがiPadとは異なる「補完的」なタッチ操作という、慎重なアプローチを検討している点には注目すべきです。Macの強みである生産性と精度を一切損なうことなく、スマートフォンのような直感的操作の”良いとこ取り”ができるのであれば、それは我々のワークフローを劇的に改善する「神機能」となる可能性も秘めています。
2026年後半から2027年初頭とされるその日まで、我々はこの噂に振り回され続けるのでしょう。
