つい先日、サムスンの「Unpacked」イベントで発表されたGalaxy Z Fold 7やZ Flip 7の登場に、世界中のガジェットファンが胸を躍らせました。スマートフォンの進化の最前線を見せつけられ、その興奮も冷めやらぬ中――実はその熱狂の裏で、さらに衝撃的な未来が、ごく一部の関係者にだけ静かに語られていたことをご存知でしょうか。
それは、スマートフォンの歴史のページを、文字通りもう一枚めくる存在、「三つ折りスマートフォン」の登場です。サムスンの最高責任者自らがその存在を公式に認めたのです。
しかし、その革新的な未来は、残念ながらすぐには私たちの手には届かないかもしれません。この記事では、Unpackedでは語られなかった”もう一つの未来”の正体と、なぜ私たちがその登場を、指をくわえて待つしかないのか、その理由に迫ります。


サムスン初の三つ折りスマホの噂まとめ

image:AndroidHeadlines
Unpackedの熱狂の裏で、トップが漏らした「極秘計画」
今回の衝撃的なニュースは、サムスン電子のモバイル事業を率いるTM・ロ氏本人の口から明かされました。Unpackedイベントの会場で、彼は一部のジャーナリストに対し、年末までに同社初の三つ折りスマートフォンを発売するべく、開発が最終段階にあることを認めたのです。
「今年末の発売を目指し、三つ折りスマートフォンの開発に注力しています」 「現在、製品とその使いやすさの完成に注力していますが、名称はまだ決まっていません」
彼のこの言葉は、これまで噂の域を出なかった三つ折りデバイスが、紛れもない現実であることを証明しました。ではなぜ、これほど革新的な製品が、華やかなUnpackedの舞台で発表されなかったのでしょうか。
それは、サムスンの慎重な戦略の表れでしょう。Galaxy Z Fold 7やFlip 7という、すでに成熟し、販売の主軸となる製品群に注目を集中させたかったという意図。そして、まだ名前も決まっていないほど開発の最終調整が進められている三つ折りデバイスは、主役として登場するには時期尚早だったのかもしれません。しかし、水面下で着実に進んでいたこの計画が公になった今、私たちの期待は否応なく高まります。
これが「三つ折り」のスペックだ!タブレットをポケットに入れる未来

一体、三つ折りスマートフォンとはどのようなデバイスなのでしょうか。現在予測されているスペックは、まさに「未来」そのものです。
まず、最大の特徴は10インチの折りたたみ式OLEDディスプレイ。これはもはやスマートフォンの画面サイズではありません。AppleのiPad(無印)に匹敵する、正真正銘のタブレットサイズです。それがZ状、あるいはG状に折りたたまれ、ポケットに収まるサイズになる。これまでの二つ折りが「本」を開く体験だとしたら、三つ折りは「巻物」や「屏風」を広げるような、全く新しい体験をもたらすでしょう。
その巨大なディスプレイと複雑な機構を動かす心臓部には、最新鋭の「Snapdragon 8 Elite」チップが搭載されると見られています。これにより、10インチの大画面を活かした高度なマルチタスクや、PCライクな作業もスムーズにこなせる、まさに「ポケットに入るPC」が実現する可能性があります。
最大の障壁は「価格」と「発売国」という二つの壁

しかし、この夢のようなデバイスを手に入れるには、二つの非常に高い壁を乗り越えなければなりません。
第一の壁は、価格です。予測される価格は、2,900ドルから3,000ドル。現在の為替レートで単純計算すると、実に45万円から48万円という、驚異的な価格帯になります。これはもはや、ハイエンドPCや中古の軽自動車が買えてしまうほどの金額。まさに、技術の粋を集めたフラッグシップの中のフラッグシップと言えるでしょう。たっっっっっっっか!!
そして、多くの日本のユーザーにとって、それ以上に高く、そして分厚い壁となるのが、第二の壁、**「発売国」**です。複数の報道によると、この記念すべき第一世代の三つ折りスマートフォンが発売されるのは、韓国と中国の二つの市場のみになる可能性が極めて高い、とされています。
そう、残念ながら、日本での正規発売は、現時点では絶望的なのです。このお値段では、増税に苦しむ貧困な日本では売れないでしょうね…さすがに。
なぜ日本は除外されるのか?サムスンの慎重すぎる戦略

「なぜ、世界で3番目のスマートフォン市場である日本が外されるのか?」 そう憤慨する方もいるかもしれません。この背景には、サムスンの慎重な市場戦略があります。
- 超初期ロットのテストマーケティング
三つ折りという全く新しいフォームファクターが、市場にどう受け入れられるのか。まずは自国である韓国と、世界最大かつ最も新しいものへの感度が高い中国市場で反応を見たい、というのが本音でしょう。 - 生産能力の限界
複雑なヒンジ(蝶番)と巨大なフレキシブルディスプレイを持つ三つ折りデバイスは、その製造難易度が極めて高く、初期に大量生産することは困難です。供給できる台数が限られている以上、まずは市場を絞らざるを得ないのです。 - リスクの管理
45万円を超える超高額商品が、果たしてどれだけ売れるのか。万が一、商業的に成功しなかった場合でも、影響を最小限に抑えるために、まずは限定的な市場でソフトローンチ(試験的な発売)を行う。これは企業として当然のリスク管理と言えます。
これらの理由から、初代モデルは一部のアーリーアダプターや熱狂的なファンに向けた、実験的な製品という位置づけになる可能性が高いのです。

【まとめ】
サムスンが公式に認めた「三つ折りスマートフォン」。それは、私たちが長年親しんできた「スマートフォンの形」という概念そのものを、根底から覆す可能性を秘めた、まさに革命的なデバイスです。10インチのディスプレイがポケットに収まる未来を想像するだけで、ワクワクが止まりません。
しかし、その輝かしい未来は、少なくとも今年の時点では、私たち日本のユーザーにとっては「ショーウィンドウの向こう側」の憧れの存在となりそうです。高すぎる価格、そして何より、日本での発売が見送られるという厳しい現実。それは、新しいテクノロジーを愛する者にとって、少しほろ苦いニュースと言えるでしょう。
だが、希望を捨てるのはまだ早い。この初代モデルの挑戦と、韓国・中国市場からのフィードバックが、必ずや第2世代、第3世代の製品を、より洗練され、より手に入れやすいものへと進化させてくれるはずです。
我々が日本の正規店で、当たり前のように三つ折りスマートフォンを手に取れる日。それはおそらく2026年以降になるでしょう。今はただ、遠い国で始まるスマートフォンの新たな歴史の第一章に思いを馳せながら、その進化の果実が我々の手に届く日を、心待ちにすることにしましょう。
