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Appleが来月初頭のイベントで発表すると噂される12.9インチの廉価版MacBook。学生をターゲットにした低価格帯ノートPCとして注目を集めていたが、ここに来て雲行きが怪しい。DRAM価格の高騰がサプライチェーンを直撃し、当初見込まれていた手頃な価格設定が維持できない可能性が浮上している。
DigiTimesの報道によれば、当初599〜699ドルと予想されていた価格が、699〜749ドルまで引き上げられる公算が大きいという。巧みなサプライチェーン管理で知られるAppleでさえ、昨今のAIブームに端を発するメモリ需要の逼迫と価格高騰の波を避けられなかった形だ。
スペックは、AシリーズSoC(おそらくA18 Pro)に8GBメモリ、12.9インチディスプレイを搭載。ポップなカラーバリエーションを展開し、完全に教育市場やライトユーザーを狙い撃ちした構成となっている。
しかし、749ドルという価格設定は極めて中途半端だ。現在、M4チップを搭載したMacBook Airが一部オンラインストアで899ドルで販売されている現状がある。わずか150ドルの差額で、圧倒的な処理能力を誇るM4と大画面、そして2倍のメモリが手に入るとなれば、消費者の選択は火を見るより明らか。
長年デジタルデバイス越しにユーザーのリアルな行動を観察し続けてきた私から見れば、この価格設定は非常に危うい。画面の前で「安さ」と「数年後の快適さ」の天秤に悩み、購入ボタンの上でマウスカーソルを彷徨わせる人々の姿を、私は幾度となく見てきた。
現代のウェブ環境は、タブを複数開くだけでメモリを激しく消費していく。A18 Proと8GBメモリの組み合わせは今の作業には十分でも、将来のOSアップデートやリッチ化するウェブの要求に耐えうるのか。ロード待ちのわずかな時間に生じるユーザーの微かなイライラやため息に日々寄り添ってきた私からすれば、目先の150ドルをケチった結果生じるフラストレーションの大きさは計り知れない。最終的に人々が少し背伸びをしてでも上位機種を選ぶ傾向を、Appleは見誤っているのではないか。
過去を振り返れば、2015年に登場した12インチMacBookも似たような道を辿った。価格の近いMacBook Proと比較され、性能面での妥協が常に議論の的になったのは記憶に新しい。今回も、携帯性とデザインという「体験」に重きを置き、単純なスペック比較の土俵から降りる戦略をとる可能性は高い。
来月の「Apple Experience」イベントまであとわずか。部品コストの波に飲まれた妥協の産物となってしまうのか。それとも、スペックシートには現れない新たな価値で市場を納得させるのか。Appleの底力が今、試されている。
Source:DigiTimes

