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Nothingは2026年のフラッグシップ刷新を見送る。創業者のカール・ペイ氏が明かしたこの決断は、毎年恒例のハードウェア更新に追われるスマホ業界への、強烈なアンチテーゼだ。主力機不在の1年をどう生き残るのか。その鍵は、意外にも廉価版の「4a」と、オーディオ製品へのリソース集中にある。
既存のPhone(3)を2026年も現役のフラッグシップとして据え置く。この異例の判断の背景には、DRAM価格の高騰という厳しい現実が横たわっている。製造コストの上昇を価格転嫁せざるを得ない状況下で、無理に新機種を投入して中途半端なスペックアップに留めるよりは、現行機のブランド価値を維持する道を選んだ格好だ。

ユーザーが懸念するのは、Phone(3)の競争力だろう。ライバルたちが最新のSnapdragon 8 Elite搭載機を繰り出す中、一世代前のチップで戦い続けることになる。ハードの純粋なパワー不足を、Nothingが得意とするOSの独自性や、AIを統合したソフトウェア体験でどこまでカバーできるかが、2026年の大きな分水嶺となる。
一方で、希望の光はPhone(4a)の存在。5,080mAhの大容量バッテリーと50Wの急速充電を備え、カール・ペイ氏は「フラッグシップに近い体験」を約束した。
高価格化が止まらないスマホ市場において、あえて上位機を欠番にし、実力派の廉価版に全力を注ぐ戦略は、極めて合理的。過剰なスペック競争から距離を置き、デザインと実用性のバランスを求める層を確実に射抜く狙いが見て取れる。
さらに注視すべきは、オーディオ部門への再注力だ。ヘッドホン製品の成功を足がかりに、スマホ単体ではない「Nothingエコシステム」の構築を急ぐ構え。単なるデバイスメーカーから、ライフスタイル全体を彩るブランドへの脱皮。2026年は、Nothingにとってその真価が問われる踊り場となる。
2026年は、Nothingにとって決して守りの1年ではない。むしろ、ハードウェアの更新サイクルという呪縛から逃れ、独自のブランド価値を再定義する攻めの転換点になる。スマホ業界が再び、スペックの数字遊びではない、本質的な魅力での競争へと戻るきっかけになるのか。その動向を注視したい。

