スマートフォン市場を見渡すと、どこもかしこも黒いガラスの板ばかりだと思いませんか?
「画面が綺麗」
「カメラがすごい」
もちろんそれは素晴らしいことですが、ガジェット好きとしての私の心が、最近どうも乾いていました。そんな退屈な日常に、突然レンガのような衝撃が飛び込んできました。
その名も「Lotus Diplomat」。
Lotus Technologiesが発表したこの端末は、単なるBlackBerryのフォロワーではありません。Snapdragon 8 Eliteに24GBのRAMという、デスクトップPCも顔負けのスペックを5.3インチの筐体に詰め込んだ、まさに「羊の皮を被った狼」ならぬ「ビジネスマンの皮を被ったスーパーコンピューター」です。
今回は、クラウドファンディングでの登場が予告されているこの異端児が、なぜ今の時代に「刺さる」のか、その魅力と狂気(褒め言葉です)について、作家視点で深掘りしていきます。
Source:Lotus Technologies
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Lotus Diplomatの基本スペックと「違和感」の正体
まず、この端末のスペックシートを見たとき、多くの人が二度見するはずです。なぜなら、数字のバランスがおかしいからです。
お気づきでしょうか。5.3インチというコンパクトな画面サイズに対して、Snapdragon 8 Eliteと24GB RAMという組み合わせは、軽自動車にF1のエンジンを積むようなものです。
通常、物理キーボード付きのスマホといえば、スペックは控えめで「メールやチャットができればいい」という省電力重視のものが相場でした。しかしLotus Diplomatは、あえてその常識を無視しています。
これは、「重たい作業も、動画編集も、全部この物理キーボード付きの端末でやってしまえ」という、開発者の強烈なエゴを感じずにはいられません。

タイパ重視の現代に「物理キーボード」が復権する理由
最近、Z世代を中心に「タイパ」という言葉が定着しましたが、実は物理キーボードこそ、究極のタイパツールである可能性があります。
Lotus Diplomatのキーボード配列を見て驚いたのが、物理キーボードの上に配置された「専用の数字キー」です。
従来のBlackBerryや類似の端末では、数字を打つために「Altキー」を押しながら文字キーを押す必要がありました。これが地味にストレスで、入力速度を落とす原因になっていたのです。しかし、この端末はショートカットバーと数字キーが独立しています。
パスワード入力、電話番号、スプレッドシートの数値入力。これらがPCと同じ感覚で打てる。
フリック入力も確かに速いですが、長文メールや報告書を作成する際の「思考の速度」に追いつけるのは、やはり物理キーボードの打鍵感ではないでしょうか。画面上のソフトウェアキーボードが表示されない分、5.3インチの画面をフルに閲覧領域として使えるのも、情報収集の効率を格段に上げます。

キーボードの中に画面?「サブディスプレイ」の謎ギミック
この端末の最もユニークで、かつ賛否が分かれそうなのが「キーボード内に埋め込まれた2つ目のディスプレイ」です。
公式情報によると、ここには常時表示機能(Always On Display)として時刻などが表示され、入力時にはオフになる仕様とのこと。
一見、「そこに画面、要る?」と思ってしまいます。しかし、よく考えてみてください。会議中や映画館など、スマホのメイン画面を点灯させると眩しすぎて迷惑になるシーンがあります。そんな時、手元の小さな画面でさりげなく通知や時間を確認できるとしたら。
これは、スマートウォッチの機能をスマホ本体に取り込んだような感覚に近いのかもしれません。無駄に見えて、実は「スマホ中毒」から少し距離を置くための機能美である可能性すら感じます。

4:3の画面比率と赤外線ブラスターに見る「懐古と先進」の融合
画面のアスペクト比は4:3。今の縦長スマホ(20:9など)に慣れた目には新鮮に映りますが、実はこれ、電子書籍やウェブブラウジング、そして文書作成には最適な比率です。InstagramのストーリーやTikTokを見るには上下に黒帯が出て不向きですが、「仕事をする」「文字を読む」ことに関しては理にかなっています。
さらに驚くべきは「赤外線ブラスター」の搭載です。 かつてのガラケーや初期のスマホには付いていましたが、今や絶滅危惧種。これを搭載することで、テレビやエアコンのリモコンとして使えるようになります。
最先端のSnapdragon 8 Eliteを搭載しながら、やっていることは家のエアコン操作。このギャップこそが、ガジェット好きの心をくすぐる「愛すべき無駄」なのです。

クラウドファンディングという「冒険」への招待状
Lotus Diplomatはクラウドファンディングでの資金調達を予定しています。つまり、まだ市場に出回るかどうかも確定していない、夢の段階にある製品です。
価格も発売日も未定。しかし、公式ウェブサイトでここまで詳細なレンダリングとスペックを公開している点から、メーカーの本気度は伺えます。
OLED(有機EL)とIPS液晶を選べるという選択肢もニッチです。「焼き付きが怖いからIPSがいい」という古参ユーザーの声を拾っているあたり、ターゲット層を完全に理解していると言えるでしょう。
重量は約9.45オンス(約268g)。iPhone 14 Pro Maxよりも重いです。しかし、その重さは「全部入りのロマン」の重さです。ポケットに入れた時のズッシリくる感覚は、所有欲を満たしてくれるはずです。

