Xiaomiのサブブランドとして、ゲーミングスマホ界隈でその名を轟かせてきたBlack Shark。その「黒き鮫」が、今度は手首の上で暴れ回ろうとしています。
「ゲーミングブランドのスマートウォッチなんて、どうせ光るだけでしょ?」
もしそう思っているなら、その予測は良い意味で裏切られることになります。今回発表された「Black Shark GS3 Ultra」は、単なるファンアイテムの枠を超え、GarminやG-SHOCKの領域に片足を踏み入れたような、ガチ仕様のタフネスモデルとして登場しました。
Source:Black Shark

ゲーミングの魂を宿したディスプレイと視認性
まず目に飛び込んでくるのは、1.43インチのAMOLEDディスプレイです。ここで重要なのは「1,000nit」という数字。
直射日光が照りつける真夏の屋外や、光の反射が激しい雪山を想像してみてください。一般的なスマートウォッチでは画面が暗くて手で影を作らなければ見えない場面でも、この輝度なら情報を瞬時に読み取れます。
解像度は466 x 466ピクセル。精細さは昨年のモデルWatch GS3から継承されていますが、この明るさこそが、インドア(ゲーミング)からアウトドアへの完全なシフトチェンジを物語っています。

IP69K認証:常識外れのタフネス性能とは
多くのスマートウォッチがIP68(水没OK)で満足する中、GS3 Ultraは「IP69K」を取得してきました。これは単なる防水ではありません。「高温・高圧のジェット水流」にも耐えられるという、産業用レベルの規格です。
つまり、泥だらけになった後に水道でジャブジャブ洗う程度ではビクともしないということ。この過剰なまでの耐久性は、毎日ガジェットを丁寧に扱うことに疲れた私たちにとって、精神的な解放感を与えてくれます。「壊れない安心感」は、スペック表以上の価値を日常にもたらすはずです。
18日間のバッテリーライフとGPS精度のジレンマ
「毎日充電する」というスマートウォッチ最大のストレスから、私たちはいつ解放されるのでしょうか。Black Sharkはここで「最大18日間」という数字を提示してきました。
これは驚異的なスタミナですが、これにはカラクリがあります。当然ながら、売りの一つである「デュアルバンドGPS」をオンにして、160種類あるスポーツモードをフル活用すれば、この日数は劇的に短くなるでしょう。
しかし、デュアルバンドGPS(L1+L5)に対応している点は見逃せません。ビル街や山間部での位置情報の正確さは、安価なモデルとは一線を画します。週末のランニングや登山でGPSを使い倒し、平日は通知受け取りメインで省電力に使う。そんなハイブリッドな運用が現実的な解となるでしょう。

健康管理機能と惜しい点
皮膚温度、心電図、血圧測定。これらは残念ながら非対応です。しかし、心拍数や血中酸素などの主要なヘルスケア機能は網羅されており、日常的なトラッキングに不足はありません。
ここで感じるのは、Black Sharkの「割り切り」の良さです。医療機器レベルの測定を目指すのではなく、あくまでアクティブなライフスタイルを支えるパートナーとしての立ち位置。Xiaomi Pad 7シリーズなどのタブレット製品との連携も示唆されており、Xiaomi経済圏の中にありながら、独自のポジションを確立しようとする意志を感じます。

カオスな魅力を持つ一台
Black Shark GS3 Ultraは、Xiaomiの技術力を背景にしつつも、あえて「ゲーミング」という出自を「タフネス」へと昇華させたユニークな一台です。
正直なところ、Xiaomi、Poco、Redmi、そしてBlack Sharkと、ブランド間の境界線はカオスな状態にあります。しかし、そのカオスの中からこそ、こうした「ニッチだけど刺さる人には深く刺さる」製品が生まれてくるのです。
価格と発売日はまだ謎に包まれていますが、もし適正な価格で投入されれば、アウトドア派だけでなく、充電の手間を嫌う一般ユーザーにとっても、最適解の一つになり得るポテンシャルを秘めています。

