「Horizon」がMMOになる。しかもモバイルとPCのクロスプラットフォームで、基本プレイ無料で。
ソニーの看板IPであり、そのポストアポカリプス世界観と、巨大な機械獣との激しい戦闘アクションで世界を魅了してきた「Horizon」。その新作が、まさかMMORPG、それもモバイル向けに最適化された形で来るとは、誰が予測できただろうか。
今回発表されたタイトルは『Horizon: Steel Frontiers』。 開発はゲリラゲームズと、あの『リネージュ』シリーズで知られる韓国の超大手スタジオNCSoftのタッグだ。
正直、「モバイルMMO」と聞いた瞬間に「どうせソシャゲ化して、IPが消費されるだけだろ?」という懸念が頭をよぎったヤツもいるはずだ。俺もそうだ。
だが、公開された情報を見ると、その「予測」は良い意味で裏切られそうだ。 この異色のコラボが目指すのは、「いつでもどこでも、巨大な機械を狩るスリル」という、これまでにない体験。果たして『Steel Frontiers』は、俺たちの期待を裏切らず、モバイルゲームの「変化」をもたらすことができるのか?
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事件の舞台裏:ソニーとNCSoft、日韓トップスタジオの異色タッグ
まず、開発体制に注目したい。 ソニー傘下のゲリラゲームズ(「Horizon」の生みの親)と、韓国のNCSoft(MMO開発のトップランナー)のタッグだ。
これは単なるIP貸しではない。お互いの強みを極限まで引き出そうとする、野心的なコラボレーションだ。
ゲリラゲームズは、あの美しいポストアポカリプス世界と、巨大機械獣のデザイン、そして破壊のスリルという「ロマン」を提供する。
対するNCSoftは、何千ものプレイヤーを収容する広大なMMOフィールド、資源をめぐる部族間の紛争、そしてカスタマイズ性の高いキャラクタービルドという、「システム」を提供する。
本作のディレクター、ヤン=バート・ファン・ベーク氏が「モバイル向けに特別に設計された本格的なMMORPG」と強調している通り、これはコンソール版の移植ではない。モバイルというデバイスの特性を活かし、「いつでもどこでも」巨大な機械との協力型ビーストハンティングを楽しめるように設計されている。
発表された舞台は「デスランズ」。アリゾナとニューメキシコにインスパイアされた荒野で、そこでプレイヤーは「機械ハンター」の役割を担い、仲間と同盟を組み、あるいは敵対部族と資源をめぐって衝突する、まさに「突発的な混沌」が生まれる世界だ。

ヒロイン・アーロイを差し置いて、プレイヤーが主役になる「変化」
シリーズのファンにとって、最大のズレは、メインヒロインであるアーロイが主役ではないという点だろう。
『Steel Frontiers』では、プレイヤーは個性豊かな部族の戦士たちを自由にカスタマイズできる。 これはMMORPGとしては当然のシステムだが、「Horizon」というIPの固定概念を打ち破る、明確な「変化の知覚」でもある。
なぜアーロイを排除したのか? それは、MMOというジャンルにおいて、「俺(プレイヤー)」が主役でなければならないからだ。何千ものアーロイがフィールドにいるのは違和感しかない。
プレイヤー自身が「デスランズ」の機械ハンターとなり、巨獣を倒し、その獣が落とした武器を拾い、その機械に乗って次の戦闘に向かうという、より深く、パーソナルな体験を提供しようという意図が見える。
エグゼクティブプロデューサーのソング・リー氏が強調する「巨大な機械を倒すスリル」は、まさに『Horizon』の真髄であり、これをMMOの核に据えたのは賢明だ。

基本無料とNCSoftによる「自己参照性」
さて、俺が一番懸念している点、そして多くのゲーマーが過去の経験から「自己参照」してしまう点についても触れておこう。それは「基本プレイ無料 (F2P)」と「NCSoft」という組み合わせだ。
NCSoftはMMOの雄だが、『リネージュ』などで「Pay to Win(課金が勝利に直結する)」のイメージが強いのも事実だ。 果たして、ソニーの看板IPが、その「課金の魔の手」に屈してしまうのか?
「いつでもどこでもこの世界に飛び込める」という手軽さはモバイルMMOの最大のメリットだ。 しかし、同時に「基本無料」の設計が、ゲームバランスを崩壊させないか? 巨獣を倒す爽快感が、「課金したから倒せた」という虚しさで上書きされないか?
これは、ソニーとゲリラゲームズが、NCSoftのMMO設計ノウハウをどこまで「課金要素ではない、純粋なMMO体験」に昇華できるかにかかっている。
もし、このゲームが「課金要素が控えめで、純粋に狩りと冒険が楽しいMMO」として成功すれば、それはモバイルゲーム市場全体に、コンソールIPのF2Pモデルにおける「変化」をもたらすだろう。

まとめ
ソニーの『Horizon: Steel Frontiers』発表は、今年一番のエキサイティングなニュースの一つだ。
「Horizon」というIPを、ゲーマーの「いつでもどこでも遊びたい」という潜在的な要求に完璧にフィットする形で展開してきた。これは、単なるIPの横展開ではなく*IPの「変化」だ。
俺たちが今、目を離せないのは、発売日と課金モデル、この2点に尽きる。 ソニーとNCSoftは「できるだけ早く」発売すると約束しているが、この規模のMMOがモバイルでスムーズに動くのか、iPhoneの空き容量を確保する準備はできているのか。
そして最も重要なのは、「巨大な機械獣を仲間と倒すスリル」が、基本無料という構造の中で、どこまでピュアな体験として維持されるかだ。

