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AppleのAI戦略が、大きな曲がり角を迎えた。
独自開発に固執してきたこれまでの姿勢を翻し、GoogleのGeminiモデルを深く取り入れる方向へと舵を切った。2026年に予定されていた主要なAIプロジェクトは次々と保留され、主力ブラウザであるSafariの全面改修も事実上のストップ。この決断は、AI戦線におけるAppleの苦戦を雄弁に物語っている。
期待されていたSafariの刷新は、人工知能時代にふさわしい「情報の審判者」となるはずだった。ネット上の文書が信頼に足るかをAIが自動評価し、複数のソースから情報を裏付ける。Perplexityなどの対話型検索に対抗する、Appleらしい解決策だ。だが、このプロジェクトは今、冷たい沈黙を保っている。2月末のiOS 26.4でGeminiを搭載した新型Siriがデビューする一方で、Safariの革新は棚上げされた形だ。
内部に目を向ければ、さらに深刻な「退却」が見て取れる。ChatGPTと直接競合することを目指した「World Knowledge Answers」は大幅に縮小。かつて鳴り物入りで迎えられたジョン・ジャナンドレア氏のチームが磨き上げた技術も、今後のSiriアップデートではGeminiに席を譲る。自前の技術で世界の知識を統括するという野望は、ひとまず幕を閉じた。
ミュージックやヘルスケアへのチャットボット統合も、具体的な計画は霧散しつつある。リソースを特定の注力分野へ集約させるという名目だが、それは裏を返せば、全方位でAIを戦わせるだけの余力が現在のAppleにはないことの証左だろう。
パートナーシップという名の「依存」が、iPhoneの体験をどこまで変えるのか。Appleが再び主導権を握る日は来るのか。6月のWWDCで再開の兆しが見られなければ、その未来は想像以上に厳しいものになる。

