一日の終わりにスマートフォンのバッテリー残量が10%を切ったとき、私たちはまるで自分の生命線が細くなっていくような、えもいわれぬ不安に襲われます。
モバイルバッテリーを持ち歩くのはもはや現代人の嗜みですが、重いし、かさばるし、正直なところ「スマホ本体だけで数日間持ってくれればいいのに」と、誰もが一度は空想したことがあるはずです。
そんな私たちの「究極のタイパ」を叶えるかもしれない、信じられないニュースが飛び込んできました。サムスンが現在、次世代のGalaxy向けに、これまでの常識を根底から覆す20,000mAhという異次元のバッテリー容量をテストしているというのです。
かつて、予備のバッテリーをポケットに忍ばせ、パカッと裏蓋を開けて交換していたあの頃。私たちは不便さと引き換えに、確かな安心を手に入れていました。しかし、今の時代にサムスンが見せようとしているのは、そんなノスタルジーを置き去りにするほどの圧倒的なパワーでした。
Battery Validation
— Schrödinger (@phonefuturist) December 25, 2025
Samsung SDI dual-cell Si/C battery (20,000mAh).
Cell 1: 12,000mAh @ 6.3mm
Cell 2: 8,000mAh @ 4mm
Results: 27h SOT, ~960 cycles over 1 year.
Post-test: cell swelling detected → longevity failure.
Strong short-term performance. Long stability still unresolved. pic.twitter.com/29Ldb6NJ4x
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10,000mAhですら「通過点」に過ぎない。驚異のデュアルセル構造

最近、中国のHonorが10,000mAhという、モバイルバッテリー並みの容量を積んだゲーミングスマホを発表して話題になりました。これだけでも「スマホの進化もここまできたか」と驚かされましたが、サムスンはそのさらに先、倍の容量を目指しています。
今回リークされた情報によると、サムスンがテストしているのは、シリコンカーボン(Si-C)技術を用いたデュアルセルバッテリー。
メインの12,000mAhと、サブの8,000mAhを組み合わせ、合計20,000mAhという、もはや小型のタブレットを数台分動かせるほどのエネルギーをスマホに詰め込もうとしています。

特筆すべきは、その持続時間です。テストデータによれば、画面を点灯させたままの状態(SOT)で、実に27時間もの連続稼働を実現したとのこと。
これは、朝起きてから次の日の昼過ぎまで、一秒も休まず動画を見続けてもまだ充電が残っている計算になります。「充電器を家に忘れた」という絶望が、この世から消滅する瞬間かもしれません。
ということは、長年待ち望んでいた、Galaxy Z Foldシリーズのバッテリー容量4,400mAhの呪縛から解放されるということですかね!!!

蘇る「あの記憶」。薄さと引き換えに突きつけられた膨張の壁
しかし、この夢のような話には、避けては通れない「影」の部分も存在します。私たちユーザーが最も恐れているのは、バッテリーの安全性です。特にサムスンのファンであれば、数年前の苦い経験を思い出し、少しだけ背筋が凍る思いをするかもしれません。
テストの過程で、ある重大な欠陥が浮き彫りになりました。それは「バッテリーの膨張」です。
本来、8,000mAhを担当するサブセルの厚みは4mmに設計されていました。ところが、長期的な安定性テストを行った結果、このセルが7.2mmまで膨らんでしまったというのです。
4mmから7.2mm。数字で見ればわずか3.2mmの差ですが、スマートフォンの内部というコンマ数ミリを争う密閉空間において、これは致命的な数値です。
もしこれが製品化され、私たちのポケットの中で膨らみ始めたら……。そんな「もしも」の不安を抱えたままでは、どれだけ大容量でも心から歓迎することはできません。
サムスンが現在、再び研究室に籠もり、この物理的な限界と格闘しているのは、何よりもユーザーの信頼を取り戻し、安全を担保するためだと言えるでしょう。
まぁ、中国の電気自動車のバッテリーみたいにならない事を願うばかりです…
私たちが本当に求めているのは「数字」なのか「安心」なのか

ここで少し立ち止まって考えてしまいます。私たちは本当に、スマホに20,000mAhもの容量を求めているのでしょうか。
確かに、充電のストレスから解放されるのは魅力的です。しかし、そのために本体が分厚くなり、重くなり、さらには膨張のリスクを抱えるのだとしたら。それは本末転倒ではないか、という疑問も湧いてきます。
メーカーが提示する「最強のスペック」と、ユーザーが日々の生活で感じる「心地よさ」。今回の20,000mAhという挑戦は、そのズレを埋めるための壮大な実験なのかもしれません。
かつてiPhoneがバッテリーを固定式にしたとき、私たちは「不便だ」と文句を言いながらも、その洗練された薄さを受け入れました。そして今、再び「厚みと重さ」を受け入れる準備が、私たちにあるのでしょうか。


