世界最強のテック企業、Googleに激震が走っています。といっても、新しいAIの不具合でも、検索エンジンのトラブルでもありません。理由はもっと泥臭く、もっと切実な「物理的なモノの欠乏」です。
AI開発に命をかけている巨大企業が、あろうことか「メモリチップ」を確保できず、責任ある幹部を解雇するという異常事態に発展しました。
これまで私たちは、AIの進化を「ソフトウェア」の戦いだと思ってきました。しかし、現実はもっと残酷です。いくら天才的なコードを書いても、それを動かす「ハードウェア」がなければ、それはただの動かないガラクタ。今回は、知られざるチップ争奪戦のリアルな現場と、私たちが直面している「AIの限界」についてお話しします。
Source:@jukan05
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「お金があれば買える」時代の終焉。Google幹部を襲った誤算
今回の騒動の本質は、GoogleがAI専用の高性能メモリ「HBM(高帯域幅メモリ)」の長期契約を逃したことにあります。
今のAIブームは、いわばゴールドラッシュです。金鉱を探し当てる(AIを開発する)ためのシャベル(チップ)を、世界中の企業が奪い合っています。
Googleの調達チームは、サムスンやSKハイニックスといったメーカーに対して、少し動き出しが遅かった。その一瞬の隙に、ライバルたちが在庫をすべて「予約済み」にしてしまったのです。
私たちが普段、ネットでポチれば翌日に届く買い物に慣れているのとは対照的に、最先端チップの世界は「数年先まで予約でいっぱい、一見さんお断り」という超強気な市場です。
どんなに潤沢な資金があっても、現物がない。この「物理的な壁」にぶつかった責任は重く、解雇という厳しい決断に繋がりました。
[Exclusive] Microsoft and Google stationed in Korea pleading for supply… Get fired if you fail to secure Samsung and SK volume
— Jukan (@jukan05) December 25, 2025
Earlier this month, purchasing executives from Microsoft (MS) who visited Korea held long-term agreement (LTA) and price negotiations with SK hynix. At… pic.twitter.com/MD9F2k0l4A
韓国に駐在するエリートたち。もはや「商談」ではなく「外交」
現在、マイクロソフト、メタ、そしてGoogleのチームが、こぞって韓国に拠点を移しているという驚きの事実をご存知でしょうか。
彼らはもはや、カリフォルニアの快適なオフィスでメールを送っているだけではありません。サムスンやSKハイニックスの本社近くに陣取り、文字通り「どうか、チップを売ってください」と直談判を繰り返しています。
報道によれば、マイクロソフトの幹部があまりに厳しい供給条件を突きつけられ、苛立ちのあまり交渉を席を立ったというエピソードまであります。
テックジャイアントのトップエリートたちが、チップ一枚を求めてアジアの地で必死の外交戦を繰り広げている。この光景は、もはやビジネスというより、資源を奪い合う国家間の紛争に近い緊張感があります。

私たちの生活への影響。なぜ「メモリ不足」を気にするべきか
「Googleのメモリが足りなくても、自分のスマホには関係ない」と思うかもしれません。しかし、これは遠い国の話ではないのです。
今後、AI機能が標準搭載されるPCやスマホが増えていきますが、こうした部品不足は製品価格の高騰や、新機能のリリース遅延に直結します。さらに深刻なのは、Googleのようなプラットフォーマーがデータセンターを建てられないことで、私たちが受けるクラウドサービスの進化が止まってしまうリスクです。
企業側は今、採用基準すら変えようとしています。デスクで数字を管理する人ではなく、アジアの製造現場の熱気を感じ、現地の言葉で交渉できる「チップと取引の両方がわかる専門家」が求められているのです。
↓この価格で買えるのも今のうちってことですかね…

