スマートフォンの世界における永遠のライバル、AppleとSamsung。その最新の戦いのゴングが、Appleの革新的な超薄型モデル「iPhone Air」の登場によって鳴らされました。心臓部には、同社史上最強との呼び声も高い最新チップ「A19 Pro」を搭載。これを迎え撃つは、発売から数ヶ月が経過し、Android陣営の王者として君臨する「Galaxy S25 Edge」。
早速、両者の性能を客観的に測るベンチマークスコアが公開され始めていますが、その結果は「どちらが速いのか?」という私たちの単純な好奇心に、驚くほど複雑な答えを突きつけています。
Source:PhoneArena


Geekbenchスコアが示す、一長一短の性能
まず、両者の純粋な計算能力を示すGeekbenchのスコアを見てみましょう。この数字が、今回の論争の出発点です。
最高スコア | 平均スコア | |
iPhone Air (シングルコア) | 3,736 | 3,642 |
Galaxy S25 Edge (シングルコア) | 3,205 | 2,634 |
iPhone Air (マルチコア) | 9,737 | 9,496 |
Galaxy S25 Edge (マルチコア) | 10,102 | 8,818 |
※平均スコアは2025年9月9日以降のデータを基に算出
この表から、非常に興味深い傾向が浮かび上がってきます。
- シングルコア性能はiPhone Airの圧勝
シングルコア性能は、アプリの起動やウェブサイトの表示といった、日常的な操作の「キビキビ感」に直結します。この点において、iPhone Airに搭載されたA19 Proは、Galaxy S25 Edgeを圧倒しています。これは、Appleが一貫して追求してきた、コア一つあたりのパフォーマンスの高さを改めて証明する結果と言えるでしょう。 - マルチコア性能はGalaxy S25 Edgeが一矢報いる
一方、マルチコア性能は、動画の書き出しや高度な3Dゲームなど、複数のコアを同時にフル活用する重い処理能力を示します。こちらでは、最高スコアに限れば、Galaxy S25 EdgeがiPhone Airを上回る瞬間を記録しています。これは、より多くのコアを搭載することで総合力を高めるという、Androidフラッグシップの戦略が垣間見える結果です。

「平均スコア」で見るAppleの地力と、データが持つ偏り
しかし、最高スコアだけで性能を判断するのは早計です。より注目すべきは「平均スコア」の差です。
平均スコアを見ると、シングルコアはもちろんのこと、マルチコア性能においてもiPhone AirがGalaxy S25 Edgeを上回っています。これは一体何を意味するのでしょうか。
一つの可能性として、データの「偏り」が考えられます。Galaxy S25 Edgeは発売から数ヶ月が経過し、世界中の多種多様なユーザーが、様々な環境下(例えば、バックグラウンドで多くのアプリが動いている状態など)でテストを行っています。その結果、本来の性能を発揮できていない低いスコアも多く含まれ、平均値を押し下げている可能性があります。
対して、発表されたばかりのiPhone Airは、まだレビューアーなど、最適な環境を整えたユーザーによるテスト結果が中心であるため、高いスコアが出やすい状況にあるのかもしれません。とはいえ、この平均スコアの差は、A19 Proチップの安定したパフォーマンスと、iOSの高度な最適化というAppleの揺るぎない地力を示しているとも言えるでしょう。

ベンチマークスコアという「数字の魔力」とその限界
ここで、私たちは最も重要な事実に立ち返る必要があります。それは、ベンチマークスコアは、スマートフォンの総合的な体験を必ずしも反映しないということです。
今回の結果のように、最高スコアだけを切り取れば「Galaxy S25 Edgeがマルチコアで勝利!」と主張できますし、平均スコアを見れば「iPhone Airが完全勝利!」と結論づけることも可能です。このように、数字は切り取り方次第で、いかようにも解釈できてしまう「魔力」を持っています。
しかし、冷静に考えてみれば、これほどのハイスペックな端末同士のスコアの差を、日常使いで体感できる瞬間はほとんどないでしょう。どちらのスマートフォンを選んだとしても、アプリがもたついたり、処理能力に不満を感じたりする場面は、まずあり得ません。
スコアの優劣に一喜一憂するよりも、OSの使い勝手、デザインの好み、カメラ性能、そしてエコシステムといった、数字では測れない部分の方が、日々の満足度を大きく左右するのです。

本当の戦場は「持続性能」 – iPhone Airに残された最後の課題
では、この性能比較に意味はないのでしょうか?いいえ、一つだけ、今後の行方を占う上で非常に重要な論点が残されています。それは「持続性能」です。
ベンチマークテストは、あくまで短時間で測定した「瞬間最大風速」のようなもの。本当に重要なのは、高負荷な状態が続いたときに、そのパフォーマンスをどれだけ維持できるかです。
iPhone Airにとって最大の懸念は、その驚異的な超薄型ボディが、A19 Proという強力なエンジンから発せられる熱を、適切に処理しきれるのかという点にあります。もし排熱がうまくいかなければ、「サーマルスロットリング」という現象が発生し、安全のためにチップの性能が強制的に抑えられてしまいます。
そうなれば、いくらピーク性能が高くても、長時間のゲームプレイや動画編集といった場面では、分厚く冷却機構に余裕のあるGalaxy S25 Edgeに軍配が上がる可能性も十分に考えられます。

数字の向こう側にある「真の価値」を見極める
iPhone AirとGalaxy S25 Edgeのベンチマーク対決は、私たちにスマートフォンの性能を測ることの難しさと面白さを改めて教えてくれました。数字の上では一進一退の攻防が繰り広げられていますが、その差は、私たちの日常体験を大きく変えるものではないでしょう。
真の評価は、iPhone Airがその美しい薄型ボディで、A19 Proのパワーをいかに飼いならし、安定したパフォーマンスを持続させられるかにかかっています。
スペックシートの数字を追いかけるよりも、実際に手に取った時の感動や、毎日使う中での快適さ、そしてあなたがスマートフォンに何を求めるのか。それこそが、あなたにとっての「最高のスマートフォン」を決める唯一の基準のはずです。今後の実機レビューで、その答えが明らかになるのを楽しみに待ちたいと思います。