かつてiPhone 12シリーズと共に登場し、そのミニマルなデザインと手軽さで多くのAppleユーザーを魅了した「MagSafeバッテリーパック」。しかし、その歴史は短く、2023年にはひっそりと公式ストアから姿を消してしまいました。多くのユーザーがその別れを惜しんだこのアクセサリーが、まさかの形で復活を遂げるかもしれない、というニュースがガジェット好きの間で大きな話題となっています。

驚くべきことに、その舞台はAppleのライバルであるGoogleの次期フラッグシップスマートフォン「Pixel 10 Pro XL」。販売中止となったはずのApple純正アクセサリーが、なぜ未来のAndroidスマートフォンで利用できる可能性があるのでしょうか？

この記事では、一本のソーシャルメディア投稿から始まったこの興味深い現象を深掘りし、その背景にあるワイヤレス充電の最新規格「Qi2」の存在、そして私たちのガジェットライフが今後どのように変わっていくのかを、分かりやすく解説していきます。

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Pixel 10 Pro XLとApple純正MagSafeバッテリーパック

Pixel 10 Pro XL + Apple MagSafe battery pack is the combination you didn’t know you needed pic.twitter.com/YCRaLuhZw2

— Paul J (@1PaulJ_) August 30, 2025

発端は一本のSNS投稿！Pixel 10 Pro XLがMagSafeに対応？

今回の騒動の発端となったのは、X（旧Twitter）ユーザーPaul J氏による一本の投稿でした。彼は、まだ発表されていないGoogleの次期スマートフォン「Pixel 10 Pro XL」で、なんとApple純正のMagSafeバッテリーパックが動作したと、画像付きで報告したのです。

これは非常に興味深い出来事です。なぜなら、

• MagSafeはApple独自の規格（と思われていた）
• 対象のバッテリーパックはすでに販売中止となっている

という二つの事実があるからです。通常、メーカーの垣根を越えて純正アクセサリーが、しかも旧製品が最新モデルで使えるようになるケースは極めて稀です。この投稿は瞬く間に拡散され、「なぜそんなことが可能なのか？」という技術的な好奇心と共に、多くの憶測を呼びました。

公式には、AppleのMagSafeバッテリーパックがPixel 10シリーズの最新規格である「Qi2.2」をサポートしているわけではありません。しかし、それでも互換性が生まれる背景には、ワイヤレス充電技術の大きな進化が隠されていました。

なぜライバル製品が使える？鍵を握る「Qi2」ワイヤレス充電規格

この「まさかの互換性」の謎を解く鍵、それは「Qi2（チー・ツー）」と呼ばれる最新のワイヤレス充電規格です。

皆さんも「Qi（チー）」という言葉は一度は耳にしたことがあるかもしれません。これまで多くのスマートフォンで採用されてきたワイヤレス充電規格ですが、一つ欠点がありました。それは「充電器の正しい位置に置かないと充電効率が落ちたり、そもそも充電が始まらなかったりする」という位置合わせのシビアさです。

この問題を解決するために登場したのが「Qi2」です。そして、このQi2の根幹技術となっているのが、実はAppleの「MagSafe」なのです。

Appleは、MagSafeで培った「マグネットで最適な位置に固定する」という技術を、ワイヤレスパワーコンソーシアム（WPC）に提供しました。その結果、MagSafeの利便性を誰もが利用できる、オープンな統一規格「Qi2」が誕生したのです。

つまり、こういうことです。

1. AppleがMagSafe技術を開発。
2. Appleがその技術をベースにした新規格「Qi2」の策定に協力。
3. Googleの新しいPixel 10シリーズが、その「Qi2」規格（あるいはさらに新しいQi2.2）を採用。
4. 結果として、Qi2の元祖ともいえるApple純正MagSafeバッテリーパックと互換性が生まれた。

ライバル同士が技術の発展のために協力し、その恩恵を消費者が受けられる。今回の出来事は、まさにその美しい一例と言えるでしょう。Appleが残した「置き土産」が、巡り巡ってPixelユーザーに届いた、と考えると何とも感慨深いものがあります。

手元のMagSafeは本当に使える？知っておくべき注意点

「クローゼットの奥に眠っていたMagSafeバッテリーパックが、次のPixelで使えるかもしれない！」と胸を躍らせている方もいるかもしれません。しかし、一点注意が必要です。

現時点では、これはあくまで非公式な情報であり、GoogleやAppleが公式に互換性を保証しているわけではありません。そのため、もし利用できたとしても、充電速度が本来の性能を発揮できなかったり、特定の条件下では動作が不安定になったりする可能性も否定できません。

とはいえ、Amazonなどで販売されているUgreenの「MagFlow」シリーズのような、最大25Wの高速充電に対応したサードパーティ製のQi2対応充電器と同様に、基本的な充電機能が使える可能性は非常に高いと言えるでしょう。

このニュースの最も重要な点は、「古いガジェットが、規格の進化によって新たな命を吹き込まれる可能性がある」という事実です。

テクノロジーの進化がもたらす「サステナブルな未来」

これまで、新しいスマートフォンが出るたびに、古い充電器やアクセサリーが使えなくなり、引き出しの肥やしになってしまう…という経験をした人は少なくないはずです。これは消費者にとって不便なだけでなく、電子廃棄物という環境問題にも繋がっていました。

しかし、Qi2のような統一規格が普及すれば、メーカーの垣根を越えてアクセサリーを長く使い続けることができます。iPhoneからPixelへ、あるいはその逆の乗り換えをしたとしても、お気に入りのワイヤレス充電器はそのまま継続して利用できるのです。

一つのアクセサリーが、少しでも長く使われることで、埋め立て地に送られる運命を免れることができる。今回のAppleとGoogleの「意図せぬコラボレーション」は、テクノロジーの進化が、私たちの生活を便利にするだけでなく、よりサステナブルな社会の実現にも貢献できることを示唆しています。

まとめ

今回は、Googleの次期スマートフォン「Pixel 10 Pro XL」で、販売中止になったはずのApple純正MagSafeバッテリーパックが動作するという驚きのニュースについて、その背景と意味を解説しました。

この現象の裏には、AppleのMagSafe技術をベースに作られたワイヤレス充電の新規格「Qi2」の存在がありました。かつては独自規格でユーザーを囲い込んできたAppleが、業界全体の発展のために技術を提供した結果、ライバルであるはずのPixelで自社のアクセサリーが使えるようになるという、非常に興味深い未来が訪れようとしています。

もちろん、これはまだ非公式な情報であり、今後の動向を注意深く見守る必要があります。しかし、メーカーの垣根を越えて技術が繋がり、古い製品が新たな価値を持つという流れは、私たちガジェットを愛する者にとって、この上なくワクワクするものです。